サブスクリプションとは?意味やメリット、欠かせない評価指標を解説
- サブスクリプションとは「定期購読」や「予約購読」という意味を表し、その代表格である SaaS 企業の市場規模は日本では2026年には1兆6,681億円まで増加するなど注目を集めている。
- サブスクリプションビジネスには、「正確な収益の予測」「顧客獲得コストの減少」「利益率の向上」といったメリットがある。
- 成功には、サブスクリプションならでは指標を理解し、データドリブンな意思決定が求められる
- 「エンゲージメント型組織への変革」「データガバナンス」「プライシング」「顧客起点の営業プロセスの構築」がサブスクリプションビジネスの成功の鍵となる。
サブスクリプションとは、英語で「subscription」と表され、「定期購読」や「予約購読」という意味を表し、近年多くの注目を集めています。例えば、Netflix や Youtube Premium など皆さまの身の回りにも多くのサブスクリプションサービスが存在しています。
目次
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サブスクリプションとは
サブスクリプションとは、英語で「subscription」と表され、「定期購読」や「予約購読」という意味であり、利用料金を支払うことで、一定期間の利用が可能なサービスなどを指しています。近年、日本でも大きな注目を集めており、日本では「サブスク」と略されることが多いです。
例えば、Netflix や Youtube Premium といった動画配信サービス、 KINTO や HONDA マンスリーオーナーといった自動車のサブスクリプションサービスや Microsoft の Office365、Cybouz の Kinton といった IT サービスなど幅広く展開されています。
実際に、サブスクリプションモデルの代表格である SaaS 企業の市場規模は年々増加しており、「富士キメラ総研」によると日本では2021年時点で9,269億円であったところ、2026年には1兆6,681億円、約1.8倍に、国内の年平均成長率(CAGR)は12.5%と見積もられています。
また、Business Research Company などの調査によると、世界では、2026年に3,744億8,000万米ドルへと拡大することが予測されています。
このようにサブスクリプションビジネスに取り組む企業が増加しているとともに、その注目度の高まりを伺うことができます。
様々なサブスクリプションビジネスモデル
近年注目を集めるサブスクリプションですが、一言でサブスクリプションといってもいくつかのビジネスモデルに分類することができます。
定額制/月額制のサブスクリプションビジネス
まず、定額制のサブスクリプションビジネスが挙げられます。定額制のサブスクリプションビジネスでは、決まった期間に料金を支払うことで顧客はサービスを利用することができ、私たちの身の回りの生活にも多くのサービスが溢れています。
定額制のサブスクリプションサービスとしては、Netflix や Youtube Premium といった動画配信サービス、Spotify や Apple Music といった音楽配信サービス、また、Cybouz の Kinton や freee といったIT サービスなどが挙げられます。
例えば、Netflix は、月額790円、1,490円、1,980円の3つの料金体系のうち1つから支払うことで、映画やテレビ番組、アニメなどの作品を好きなだけ見ることができるサービスを提供しています。
リカーリング(従量制)のサブスクリプションビジネスモデル
リカーリングとは「繰り返される」「循環する」といった意味を表し、「定額制」「従量課金制」双方の意味を含むこともありますが、一般的には「従量課金制」と言われます。
顧客がまずハードを購入したうえで、付随する従量制のサービスを追加購入する形やサービスを利用した分だけ料金が加算される形を取ります。
リカーリングの例としては、プリンターのインクジェットやスマートフォンと通信のセットのサービス、電気光熱費などが挙げられます。まず、プリンターやスマートフォンといったハードを購入したうえで、付随する従量制のサービスを利用した分だけ課金します。
例えば、セイコーエプソンの販売子会社、エプソン販売のプリンタ課金サービス「エプソンのスマートチャージ」は、従量課金型のサービスモデルです。基本的なサービスを定額費用で提供しつつ、超過分を従量課金制で請求する仕組みを採用しています。
サブスクリプションのメリット
収益の予測を立てやすい
サブスクリプションモデルは、比較的企業の収益を正確に予測することが可能です。
従来の顧客獲得型の組織では、企業の収益が新規顧客獲得数に影響を受けるため、企業の収益の正確な予測を行うことが困難でした。
一方で、サブスクリプションビジネスでは、一度獲得した顧客は繰り返し支払いを行うため、いつ支払いを行うか、またその金額をあらかじめ把握することができます。そのため、企業は自社がどれくらいの収益を得ることができるのかを正確に予測することが可能となります。
また、こうした正確な収益の予測により、企業のリソースを正確に把握することが可能となるため、企業は適切なリソースの投入をすることができます。
サブスクリプションビジネスでは、収益をその時の売上のみではなく、その顧客が自社の顧客である期間に渡っての収益(LTV)で表します。サブスクリプションビジネスでは独自のKPI を把握しておくことが大切です。
顧客獲得コストを減少させることができる
サブスクリプションビジネスモデルは、顧客の継続利用がより重要となるため、自社のことを知らない新規の顧客に対してだけではなく、既に取引を行っている既存顧客を中心に商談を行います。
実際に、コストに関する一般的な指標として、1:5の法則があります。1:5の法則とは、新規のお客様を獲得するには、既存のお客様の5倍のコストがかかるという法則のことです。つまり、既存顧客との取引が中心となるサブスクリプションビジネスでは、顧客獲得コストを抑えることができるのです。
また、既存顧客は、一度商品を購入しているため、少ない獲得コストで再度商品を購入する可能性の高い存在です。そのため、既存顧客は中長期的に商品を購入し続ける生涯顧客となる可能性が高く、企業に対してのロイヤルティが高い顧客ほど、時間の経過とともに大きな利益をもたらす可能性が高いと考えられます。
さらに、こうした自社に対するロイヤルティが高い顧客の紹介によって、新規顧客の獲得を期待することができます。 このような口コミによるマーケティングは、一般的な宣伝広告よりも効果があり、企業のマーケティングコストも抑えることができると考えられるでしょう。
サブスクリプションビジネスでのマーケティングの戦略や実践ポイントを以下の記事で紹介しています。
あわせて読みたい:【戦略×実践】SaaS 企業のマーケティング戦略は?意識すべき法則とは
利益を向上させることができる
サブスクリプションビジネスにおけるもう 1 つの利点は、継続的な利益を生み出すことができる点です。
サブスクリプションビジネスでは、長期にわたって顧客との関係性を構築することができるため、継続的な利益を獲得することが期待できます。
顧客と長期の関係性を構築するためには、カスタマーサクセスチームによる顧客への継続的なサポートが欠かせません。
カスタマーサクセスチームが常に優れたサポートを提供することで、顧客の企業に対するロイヤルティを高めることができます。 こうした企業と顧客の間で強固な関係性を構築することは、顧客が自社のサブスクリプションを継続的に利用することに繋がります。
サブスクリプションの注意点・課題
これまで述べたようにサブスクリプションビジネスでは、多くのメリットが存在します。
しかし、サブスクリプションビジネスに取り組むものの失敗に終わってしまうケースも少なくありません。そこで、サブスクリプションビジネスに取り組むにあたっての注意点を解説します。
投資判断が困難である
サブスクリプションビジネスは従来のビジネスモデルとは、利益発生ポイントや収入要素、支出要素などあらゆる指標が異なります。そのため、従来の評価指標で事業の成否を測ることはできません。
例えば、従来の事業では、売上高や営業利益、経常利益、ROE などが主な評価指標として利用されていましたが、サブスクリプションビジネスでは、ARR(年間定期収益)や LTV(顧客生涯価値)、NRR(売上継続率)、CAC(顧客獲得コスト)、Churn Rate(解約率)などが主な評価指標として用いられます。
つまり、サブスクリプションビジネスでは、その時期のみを捉えるキャッシュフローだけでは事業の健全性は判断できず、従来のような PLベースでは、適切な投資判断をすることはできません。
収益性の測り方が従来と異なるため、事業としていち早い収益化ができないと判断され、適切なマーケティング・営業コストを使うことができなくなるケースが多くあります。
そこで、長期的な売上や利益を確保する上では、ユニットエコノミクスやチャーンレートなどの顧客価値を測る指標やマーケ/営業の効率性を測る指標が事業投資を判断する上で必要となります。
このように、サブスクリプションビジネスでは従来の指標とは大きく異なるため、従来のビジネスモデルのままの評価指標を用いてしまうと、会社の状態や従業員を適切に評価することができない問題や事業の健全性を適切に評価できず、正しい投資判断ができない問題が発生してしまいます。
サブスクリプションの導入を検討する際には、自社の評価指標が適切かを考慮するようにしましょう。
無料ダウンロード:サブスクリプションビジネス経営者が見るべきKPI10選
顧客の増加が赤字になるケースがある
サブスクリプションビジネスは、商品・サービスの販売時に利益が発生する顧客獲得型営業とは異なり、既存顧客の製品の継続利用やアップセル・クロスセルのタイミングで利益が発生します。
そのため、下記の図のようにかけたコスト(投資)の回収が長期的になり、また、従来のビジネスモデルと比較して赤字になる可能性も高いと言われています。
それはなぜかというと、CAC(顧客獲得コスト)が LTV(顧客生涯価値)よりも大きくなってしまうからです。つまり、単純に初期または維持を合わせたコストが収益を上回るため、新規顧客を獲得するほどに、赤字が拡大していくことになるからです。
特に、サブスクリプションビジネスにおけるアーリーステージや新規ローンチの段階では、市場のシェア獲得に向けて CAC が高くなる傾向にあります。
サブスクリプションビジネスの健全性を測るユニットエコノミクスについては、3以上がベンチマークと言われています。
ユニットエコノミクスの詳細や上げ方は以下の記事で詳しく説明しておりますので、ご確認ください。
あわせて読みたい:LTV/CAC比 ユニットエコノミクスとは?LTV 向上の戦略を解説
サブスクリプションで成功するためには?
それでは、サブスクリプションビジネスにおいて成功するためにはどのようにしたらよいのでしょうか?
ここではサブスクリプションビジネスで成功するためのポイントを解説します。
エンゲージメント型組織へのシフト
まず、従来の獲得型営業組織からエンゲージメント型営業組織へと変革することが必要です。
前述したように、サブスクリプションビジネスでは、商品・サービスの販売時に利益が発生する顧客獲得型営業とは異なり、既存顧客の製品の継続利用やアップセル・クロスセルのタイミングで利益が発生します。
新規顧客獲得時に収益が確定しないビジネスモデルとなるため、重視するべき評価指標が異なります。そのため、従来のような獲得型営業組織のままでは、営業担当者を適切に評価することができません。
そこで重要なのが「エンゲージメント型営業組織への移行」です。
例えば、A さんと B さんという単価20万円の SaaS商材を販売する2人の営業パーソンがいたとします。
- A さんは、新規獲得 3件 金額60万円
- B さんは、新規獲得 5件 金額100万円
どちらの営業パーソンのほうが評価されるでしょうか?
従来の顧客獲得型営業の場合、LTV の観点では A さんの方が良い結果を残しているにも関わらず、新規獲得件数が多い B さんが評価されるでしょう。
それは商材単価が同列である以上、獲得時点においては40万円多く新規獲得をした Bさんが定量的にも評価されますし、定性的に見ても Bさんが評価される傾向にあります。
しかし、@@B さんが獲得した案件は解約率が高く、半年後にはすべての案件が解約されてしまった一方で、Aさんが獲得した案件は、解約率3%(平均継続期間33ヶ月)でした。
この場合、B さんと比較して、A さんがトータルで顧客から得ることができた生涯収益(LTV)は高くなります。
しかし、旧来の組織では B さんが評価されてしまう傾向にあります。
結果、このような組織の元では、A さんはとにかく獲得しようとしてしまい、「短期的な自社の目標値に目がいき、売った後すぐに解約になる。」「新規契約が重視されるあまり、値引きなど不利な条件での販売となってしまう」「正しい評価ができず、真に活躍する営業マンのモチベーションが下がる」といった問題が生じてしまいます。
そのため、サブスクリプションビジネスに適したエンゲージメント型の組織にシフトすることが重要となります。
ビジネスのゴールや営業姿勢、トップセールスの定義などを変化させることで、従業員と会社の状態を正しく評価することができる体制を構築することができます。
データドリブンの意思決定
サブスクリプションビジネスにおいて成功するためには、自社に蓄積されたデータを可視化及び活用することが必要不可欠です。
前述したように、サブスクリプションビジネスでは、かけたコスト(投資)の回収が長期的になるため、その時期のみを捉えるキャッシュフローだけでは事業の健全性は判断できません。
そのため、正確なデータを活用した収益予測や意思決定が成功の鍵となります。
例えば、下の図のように自社の現在のリード数や商談数から、目標とする事業規模とのギャップを把握したり、解約率をもとに将来の売上累計を予測することができます。
こうしたデータの活用により、企業は適切な投資判断や現状と目標値を埋めるための戦略を実行することが可能となり、サブスクリプションビジネスの成功に繋がります。
適切な価格戦略を実行する
サブスクリプションビジネスにおいて、効率的に収益を上げるためには、コストの削減よりも適切な価格戦略を実行することが重要です。
もちろん不要になっているコストを削減することも重要ではありますが、コストの削減には限界があります。顧客満足度を低下させてしまい、結果として収益が落ちる懸念もあります。一方で、LTV を向上させることができれば、さらなる成長に向けた施策に資金を投資することが可能になります。
特に LTV は、顧客単価(ARPU)を向上させることが事業の成長のキードライバーとなります。
実際に、Profitwell の調査によると、価格が1%最適化されると、平均で11.1%の利益増につながるというデータが示されており、新規顧客の獲得と比べて価格の最適化は顧客単価の効果とより強い相関を示していることがわかります。
特にサブスクリプションでも主要となるソフトウェア業界において、価格戦略が収益に与える影響が圧倒的に大きいことが判明しています。
具体的には、価格設定は新規顧客獲得と比較して 4 倍、既存顧客の維持と比較して 2 倍ほど効率的に売上を向上させることができるのです。
価格戦略のなかでも、商材の価値に対して顧客が支払う意志のある最大限の金額を提示する Value Based Pricing と呼ばれる顧客の価値ベースでの価格戦略を採用することで、利益の最大化が実現可能になります。
必然的に顧客のデータベース分析を伴うので、より顧客の意見を反映した製品開発にもつながります。
顧客起点の営業プロセスを構築することで顧客のLTVを向上する
サブスクリプションビジネスは、顧客の継続的なサービスの利用を前提とするため顧客のLTV を向上させることが重要になります。
そのために重要となるのが「顧客起点の営業プロセスの構築」です。顧客起点で自社のマーケティングからカスタマーサクセスまでのフローを一貫させることで、顧客が得られる体験(Csutomer Experience)を向上していきます。
例えば、顧客の自社に対する温度感やニーズに合わせたメールマガジン・コンテンツの配信や商談における顧客も気づいていないインサイトの提供を行うことで、顧客体験を向上させることが重要です。
ただ、顧客ライフサイクルに合わせて、データドリブンにシームレスな顧客体験を提供することが重要である点に留意しましょう。
下の図のように、自社ブランドへの興味・関心や愛着を引き起こし、長くお付き合いを続けるためには、顧客体験を棄損しない営業プロセスが必要不可欠です。
こうしたデータドリブンな施策の展開のためには、データガバナンスが重要です。
データガバナンスを利用することで、顧客それぞれにパーソナライズ化されたインサイトを提供することができるため、シームレスな顧客体験を提供するためには必要不可欠です。
リッチモンド大学のカスタマーエクスペリエンス諮問委員会のメンバーで、ポッドキャスト「The Agile World with Greg Kihlström 」にて情報発信をする起業家でありベストセラー作家でもある Greg Kihlstorm氏は、社説「How Data Governance Improves Customer Experience: 3 Examples」にて、データガバナンスとカスタマーエクスペリエンスとの相関に言及し、相互作用が企業の戦略的成長や持続可能性、及び最適化にとって重要であると話しており、顧客体験の向上のためにはデータガバナンスが必要不可欠であることがわかります。
蓄積された顧客データからのインサイトの提供や先回りしたアプローチによる能動的なカスタマーサクセスを可能にすることで、LTV を向上させることがサブスクリプションビジネスにおいて必要不可欠です。
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