SaaSに欠かせないカスタマーサクセスの役割とは?
- カスタマーサクセスの使命は、真に顧客の成果創出に貢献することである。
- SaaS 業界では、収益構造の特殊性と顧客行動の変化から、カスタマーサクセスの注目度が高まっている。
- カスタマーサクセスの目的は、既存顧客の継続率をあげ、リファラルやバイラル、アップセル、クロスセルにつなげることである。
- カスタマーサクセスを成功させるためには営業プロセスの見直しや改善のための指標とデータの明確化が必要である。
近年、インターネットや SNS の普及により顧客行動と既存の営業のあり方が大きく変革しています。とくに SaaS 業界において、「カスタマーサクセス」を重視する考えが、米国を中心に広く普及してきています。
『カスタマーサクセス白書2021』によると、経営層の66.6%が年間支出のうち約10~20%をカスタマーサクセス活動へ投資していると回答しました。実際に、カスタマーサクセスへ投資するSaaS 提供企業は年々増加しています。1)
この記事では、「なぜ SaaS ビジネスにカスタマーサクセスが必要なのか」、「カスタマーサクセスが担う役割は何であるのか」を詳しく解説します。
目次
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カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスは、「顧客の目標達成=自社の利益」という視点から、企業が顧客の成功のための協力を積極的に行うことをいいます。
ポイントは顧客体験を改善していくことであり、いわゆる自社へのロイヤルティを高めていくことです。顧客体験を改善することは、リファラル・バイラル・アップセル・クロスセルの喚起につながるため、自社の成功も同時に達成することが可能です。双方の利益が、互いの相乗効果によって生み出されるという考え方は、サブスクリプションビジネス企業の一つの理想の形ということもできるでしょう。
カスタマーサクセスについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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なぜ、SaaSでカスタマーサクセスが重要なのか
SaaS 業界におけるカスタマーサクセスの注目度が高まっている要因は、以下2点の背景が挙げられます。
サブスクリプション需要の高まり
一番の要因は、SaaS ビジネスが旧来の売り切り型の営業と異なり、顧客との関係継続を根底においた収益拡大を目指さなければならない点です。
SaaS サービスは、顧客の継続利用が前提となっていることから、収益/コストの回収期間が売り切り型のビジネスモデルとは異なり長期化します。つまり、新規の顧客開拓よりも、既存の顧客の継続利用に社内リソースを割くことが経済合理性に適っています。
しかし、この実行と推進には大きな課題を抱えている企業が多い状況です。
株式会社クニエの調査によると、サブスク事業経験者828名のうち91%のサブスク事業が最重要 KPI* の達成率が100%未満と回答しました。通常の新規事業( KPI 達成率100%未満率79%)と比較し、サブスク事業が失敗する比率の高さをうかがうことができます。
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SaaS ビジネスで失敗しないためには、サブスクのビジネスモデルを十分に理解し、顧客獲得型の営業から顧客エンゲージメント型の営業へシフトする必要があるのです。
顧客の満足度を維持させるためには、認知の獲得からカスタマーサクセスまで顧客ごとにシームレスな顧客体験を実現させることが重要になります。
例えば、リード創出やリードナーチャリングでは、顧客の興味・関心に沿ったコンテンツの提供がキーポイントになります。また、カスタマーサクセスでは営業から顧客の具体的なニーズやその変化をトラックし、顧客へ能動的にアフターサポートを行ったりすることが効果的です。
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顧客の購買行動の変化
カスタマーサクセスの重要性が増している2つ目の要因は、顧客行動の変化が影響しています。
現在、顧客のほとんどは、商材に関する情報収集や比較検討をデジタル(インターネットや SNS など)で済ませています。
マッキンゼーアンドカンパニーの調査によると、2019年から2020年にかけて顧客の調査・評価ステージにおける販売担当者とのデジタル接触がおよそ2割から5割へと増加していることがわかります。 2)
サブスクリプション型のビジネスにはより、デジタル上の顧客の行動データとインサイトから顧客との適切なコミュニケーションを実現することが求められます。
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カスタマーサクセスの役割
カスタマーサクセスにおいて重要な考え方は、「自社が顧客とともに成長していく」ことです。顧客が自社のツールやサービスを通じて成果を出すことを目指し、「顧客の事業目標に自社のサービスを通して貢献する」姿勢が必要です。
カスタマーサクセスの役割
カスタマーサクセスの大きな役割は、顧客のサクセス(成功体験の創り上げる)に責任を負うことです。SaaS などのサブスクリプションビジネスでは、これが自社の成功にも寄与します。
この顧客体験の向上には以下の取り組みが要求されます
- 前提として、顧客の成功とは何か、成功と呼べる条件は何かを把握していること
- サービスの利活用がスムーズにする導入/オンボーディング/活用支援
- 顧客サービスのスコアリングや進捗の把握
これらの取り組みによって、顧客の成功に自社サービスが必要不可欠な環境をつくることで、解約率の低下や追加購入、上位プランへの変更を実現します。
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SaaSのカスタマーサクセスと営業の違い
大きな違いは、能動的なサポートであるのか、受動的なサポートであるのかです。
従来の営業は、利益の大部分は最初の購買地点で発生するため新規の顧客獲得を重視する傾向にあります。その結果、顧客獲得以降は顧客との接点が途絶え、顧客の要望や問い合わせに対する対応を受動的に行っていました。
しかし、サブスクリプション形式の商材は、利益とCAC(獲得コスト)の回収は顧客との長期的な関係維持が前提となります。つまり、自社の売上げが顧客の満足度維持の先にあることをふまえ、顧客に対して主体的に接点を作ることが大切になります。
カスタマーサクセスは強みになる
カスタマーサクセスを実現するためには、プロダクトの利用時間や利用率、さらには顧客満足度を数値化する NPS 可視化ためのデータが必要になるなど運用面のノウハウや課題は大きくなりがちです。
しかし、カスタマーサクセスには大きなメリットが2つあります。
1つ目は、売上が安定化し、長期的な売上の見通し、投資判断の確度が上がることです。解約率を低水準でコントロールすることで、四半期ごとの売上の見通しや新規獲得にかけられるコストを把握できるようになります。
2つ目は、解約率の低い、自社にとってベストな顧客層が明らかになり、営業の確度が向上することです。獲得した案件の性質ごとに解約率や顧客単価を分析していくことで、ターゲットの再編も容易になります。
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カスタマーサクセスを成功させるためには
カスタマーサクセスを成功させるためには、顧客体験を向上するためのシームレスな営業プロセスや顧客満足度を測っていくための指標とそのデータを集計できる基盤が必要になります。
顧客体験を棄損しない横断的な営業体制の構築
顧客満足度の向上は、カスタマーサクセスのみに留まる役割ではありません。認知の獲得からクロージングまでのプロセスにおいても、その役割を担える一貫した体制を築きましょう。
例えば、マーケティングからインサイドセールスへの情報引き継ぎや引き継ぐ条件を整えるといったことも大切です。データを部門ごとに閉じてしまうのではなく、アクセシビリティを担保する必要があります。
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顧客ロイヤルティを可視化/改善する指標を明らかにする
どんな状態であれば、顧客ロイヤルティを最大化できていると言えるのか?を正しく知ることは PDCA を回す上でも不可欠です。
例えば、解約率やアップセル・クロスセルもその1つと言えます。期間ごとの数値の変化となぜその変化が起きたのかをトラックできるようにしておきましょう。
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改善のためのデータ基盤と運用ルールの構築
指標が明らかでもそれを正確かつリアルタイムに取得できるデータ基盤がなければ絵に描いた餅と言えます。しっかりとしてデータがあることで、解約率の改善やプロダクトへのフィードバックが可能となります。
ただ、とにかくデータを集めれば良いというものでもありません。可視化したい指標からどんなデータが必要になるのかを定義しておきましょう。
また、可視化するだけでは改善はできません。可視化は改善の行動へ転換するための示唆を出すことが目的であると心がけましょう。
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あわせて読みたい:営業の価値を最大化するPlaybook入門ガイド
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まとめ
以上、SaaS に欠かせないカスタマーサクセスの重要性と役割ついてご説明しました。
販売は1回限りのやり取りではなく、顧客との長い関係性の始まりです。そこからの繋がりをどう生かしていけるかによって、その後の収益を左右します。日本企業は古くから、「買い手よし、売り手よし、世間よし」の三方よしの精神を大事にしてきました。しかし、実際に真の顧客との関係性を事業運営で叶えている企業はそう多くありません。
弊社では、「顧客エンゲージメント」の概念が、将来の営業のあり方を考える鍵になるのではないかと考えています。
皆様の自社に適した変革実現に、今後とも弊社をご活用いただけますと幸いです。
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《引用文献》
1) HiCustomerが「カスタマーサクセス白書2021」を公開。SaaS企業の多くがカスタマーサクセス活動に年間支出の11-20%を投資していることが明らかに. PR TIIMES, 2021-08-02, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000039915.html?_fsi=VfZS3zJY , 株式会社HiCustomer (参照 2022-11-25)
2) These eight charts show how COVID-19 has changed B2B sales forever. Mckinsey&Company,2020-10, https://www.mckinsey.com/capabilities/growth-marketing-and-sales/our-insights/these-eight-charts-show-how-covid-19-has-changed-b2b-sales-forever (参照 2022-11-25)
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