CRM 分析とは?分析手法とそのポイントを解説
- CRM 分析は一般的な新商品・サービスの展開に伴うマーケットのニーズや競合の調査ではなく、あくまで自社の顧客を対象にしたもの
- CRM での分析にはいくつか手法があり「RFM 分析」「CPM 分析」「デシル分析」など様々な分析方法が挙げられる
- 効果的に CRM 分析を行うには「課題と目的を明確にする」「データを活用可能な状態にしておく」ことが必要である
- どれくらいの期間でどの程度の進捗を目標とするのか、そのために必要なチャネルとそのチャネルごとにどれほどのリソースがかかるのかを念頭に入れておく必要がある
皆さまは CRM ツールと呼ばれる顧客関係管理のためのツールを導入していますか?いま、多くの企業で CRM ツールの導入・活用が進んでいます。
CRM ツールは顧客情報を収集・分析・施策へと転換することでそれぞれの顧客の満足度を高め、LTV(顧客生涯価値)を最大化するためのものです。しかし、実際にCRM を使って売上などの成果を上げるためには、そのツール内のデータを分析し、効果的な戦略・アプローチの手法を実践しなければなりません。
今回は CRM を有効に活用するための CRM 分析の手法やそのポイントをご紹介します。
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目次
CRM分析とは?
そもそも CRM 分析は一般的な新商品・サービスの展開に伴うマーケットのニーズや競合の調査ではなく、あくまで自社の顧客を対象にしたものです。
購買している顧客の属性を分析し、自社のターゲット層と照らし合わせることで、これまでマーケティングやセールスで実行した顧客へのアプローチの是非を検討・改善点を抽出したり、今後ターゲットにすべき層の仮説立て、戦略の立案に活かすことも可能です。
このように、既存顧客の属性や購買行動を分析することで売上拡大への糸口は広がります。既存顧客からのアップセル・クロスセルの増加、新たにターゲットを設定することで、新規顧客の獲得につながる可能性もあります。
なぜ CRM 分析が必要なのか
現在は、テクノロジーの発達により次から次へと新商品・サービスが登場し、顧客の選択肢は多様化しました。加えて、インターネットが顧客の購買プロセスを複雑化しているため、ますます顧客のニーズ・行動に沿ったサービスの提供が求められています。
だからこそ、安定した売上基盤を作るためにも、顧客と長期の関係を築き、利益を得る LTV を上げることが大切になり、そのためには CRM 分析が欠かせなくなっているという構造があります。
ここで、少し CRM の現実を見てみましょう。
上の図の通り、CRM を導入している企業の多くでは実際には新規顧客の獲得や既存顧客からの売上拡大といった成果につながっていないという現実があります。CRM は顧客との関係を築き、LTV を高めるためのツールであるにも関わらずです。
この調査は CRM で顧客の情報・行動データを収集することはできたものの、それらのデータを分析し、顧客獲得のための戦略や施策にまでは落とし込めていないことを示唆しています。
では、CRM 分析にはどのような手法があるのでしょうか。1つずつ見ていきましょう。
CRM 分析で使われる手法6選
CRM 分析の手法は様々なものがあり、それぞれ切り口が異なります。まず、分析を始める前に分析によってどんな目的を達成したいのか、そのためにどんなデータを分析するべきなのかを検討したうえで、実際に分析することをオススメします。
1. RFM 分析
RFM 分析を実施することで、客観的に自社にとっての優良な顧客を明らかにすることができます。優良顧客を特定することができれば、その顧客層に優先してアプ
ローチをすることができるようになるのです。また、優良顧客の属性と自社サービスを照らし合わせることで、新規顧客開拓の指針にすることも可能になるでしょう。
RMF 分析は、Recency(顧客の最終購入日)、Frequency(商品の累計購入回数)、Monetary(商品の累計購入金額)の頭文字を取ったもので、これら3つの指標を組み合わせることで、自社の顧客をランク付けします。3つの指標を組み合わせることで、優良顧客のみならず、休眠顧客や離反顧客を特定することが可能であり、それぞれの層へアプローチを最適化することができます。
例えば、Recency(最終購入日)が直近であるのか、または期間が空いているのかによって顧客の自社への興味度合いは変わってきますし、必然的に最終購入日が直近の顧客の反応は良い傾向があります。
2. CPM 分析
CPM(Customer Portfolio Management) 分析は、RMF 分析で用いた3つの指標に加えて、「在籍期間」を加えた4つの指標で優良顧客を育成するための手法です。主に、マーケティングの領域、特に EC サイトで頻繁に活用されています。
この分析手法では、4つの指標をもとに顧客を10個のセグメントに分けます。分析のやり方として、まずは顧客を現在も購入している「現役顧客」と、現在は購入していない「離脱顧客」の2つに分けます。その後、顧客の在籍期間の時間軸をベースに購入頻度や購入金額の2つの指標を組み合わせて10個のセグメントを作るのです。
RMF 分析と似ている CPM 分析ですが、この2つは目的が異なります。在籍期間でフィルタリングしない RMF 分析は、直近の確度の高い優良顧客にアプローチする手法です。一方、CPM 分析は、在籍期間でセグメント化することで、短期的な優良顧客だけではなく、より長い期間での現役顧客を可視化します。よって、顧客の育成(ナーチャリング)を主目的にしています。
3. デシル分析
デシル分析は自社にとって優良な顧客グループを把握することを目的としています。デシルとは「10分の1」という意味があり、このデシル分析の手順は明確です。
1. 顧客を購入金額の多い順から並べる
2. 並んだ顧客を上位から10%ずつグループ分けし、10のグループを作る
3. 各グループの合計購入金額を算出し、それぞれを全体の購入金額で割り、各グループの構成比を算出する
4. セグメンテーション分析
セグメンテーション分析では、toC であれば性別や年齢、toB であれば企業規模や業界・役職といった顧客の属性や購入頻度や金額などのデータをもとに顧客を分類します。そして、顧客のニーズと自社サービスの立ち位置をもとに顧客のニーズを把握し、アプローチすべき顧客セグメントを見定めます。
さきほどの RFM 分析やデシル分析と組み合わせることで、優良顧客の行動パターンやプレファレンスを見える化することでき、既存製品・サービスのターゲット精度の向上、または新製品・サービスの開発に役立てることもできるでしょう。
このセグメンテーション分析で重要なのは、「いかに少ないリソースで最大の成果を得られるか」という視点を持って、多角的に顧客情報を分析することです。そのためには、以下の点に留意しましょう。
1. CRM 内の顧客データを正確かつリアルタイムな状態で保持する
2. どんな属性・行動パターンが顧客ニーズと密接なのかを把握する
3. セグメントを増やすのではなく、どこを捨てて、どこに注力するのかの選択と集中を行う
セグメンテーション分析は多角的かつ複合的な分析になります。ただ、切り分けたセグメントにならないためにも、情報源となるデータの信憑性・ニーズとの因果関係・どこに特化すべきなのかを意識して取り組みましょう。
5. CTB 分析
CTB 分析では、Category(商品・サービスの分類)、Taste(デザインやサイズ)、Brand(ブランドやキャラクター)の3つの頭文字を取ったもので、この3つの指標から顧客ごとにどんな商品・サービスの売上が上がりやすいのかを分析する手法です。この分析によって、相対的に自社製品・サービスが刺さりやすい顧客の特徴を把握できるため、プロモーションや営業活動にも活かすことができます。
また、RMF 分析やデシル分析といった自社の優良顧客を明らかにする手法と組み合わせることで、自社の優良顧客がどんな商品・サービスを好むのかが明らかになります。
6.LTV 分析
CRM がLTV(顧客生涯価値)の向上を目指すツールである以上、LTV の視点は欠かせません。そもそも LTV とは「Life Time Value」の略であり、顧客が生涯において自社にもたらす金額を指します。LTV の要素としては、購買期間・購買頻度・購買単価があります。
当然、より長い期間、頻繁に大きな金額で購入を続けてくれれば LTV の総額は伸びます。
LTV の計算方法は数多く存在しますが、シンプルな見方をすると、上記の表の方法で測ることができます。ARPU はある一定期間内で1人の顧客が生み出す総額を表していて、Revenue or Customer Churn は顧客もしくは金額ベースでの解約率を表しています。
つまり、CRM のデータを用いて ARPU が高く、解約率の低い顧客属性を分析することで、それぞれの特徴を洗い出すことが大切です。RMF 分析といった顧客分析で明らかになる優良顧客は ARPU が高くなる条件と同義であるため、その優良顧客をもとに解約率の低い属性を分析することも有効な手立てになるかと思います。
合わせて読みたい:LTV (Life Time Value)とは?算出方法や改善方法まで徹底解説
効果的に CRM 分析を行うポイント
これらの CRM 分析手法を効果的に行うにはどんなことに気を付けるべきでしょうか。そのポイントをお伝えします。
課題と目的を明確にする
CRM 分析はあくまで手法であり、その効果・目的も様々です。「新規顧客を開拓したい」、「サービスの改善につなげたい」、「既存顧客からの売上を上げたい」などと目的も課題も企業によってさまざまです。
だからこそ、自社の目的と現状の課題に沿った CRM 分析手法やどんな組み合わせで分析するのかを事前に考えておく必要があります。
データを活用可能な状態にしておく
セグメンテーション分析でも少し触れましたが、分析をするためデータはリアルタイムかつ正確性を担保している必要があります。もともとのデータがデタラメでは有効な分析はできないどころか、見当違いの戦略や施策につながる恐れもあります。
また、この条件を満たすのは実は簡単とも言えません。「担当者が入力してくれない」、「情報の粒度が違う」、「データが1つの部門で閉じていて、一貫性がない」などと、データの信頼には全社的なデータ連携と運用ルールが必要になります。
こちら の記事ではデータが使えなくなる要因を解説しています。ぜひ、ご覧ください。
まとめ
CRM 分析そのものも目的を達成するための過程の1つでしかありません。分析によって得られたインサイトや仮説は実行し、検証され、また実行を繰り返すことで1歩1歩進んでいきます。
つまり、分析の段階で実行を見据えた取り組みが必要になります。この段階で、どれくらいの期間でどの程度の進捗を目標とするのか、そのために必要なチャネルとそのチャネルごとにどれほどのリソースがかかるのかを念頭に入れておく必要があります。
分析で得た示唆は実行しなければならないことを忘れないように取り組むことが大切です。
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