売上予測とは?予測の方法から予測精度の上げる7つの方法を徹底解説

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要約SUMMARY
  • 売上予測とは過去のデータに基づいて特定の期間の売上を予測すること。
  • 適切な企業経営・予算配分・人材管理などで使用されるため、売上予測は非常に重要な指標。
  • 売上予測には、過去の売上実績・販売サイクル・機会ステージごとの成約率・市場動向など、様々なデータが必要。
  • 売上予測の精度を高めるには正確なデータの分析と営業の型化を促進する Sales Engagement Platform の導入が効果的。

みなさんの組織では正確な売上予測ができていますでしょうか?「売上予測が大きく外れる」「なぜ売上予測の精度が悪いのか」このような悩みを抱える方は多いと思います。

売上予測が外れることにより、戦略や予算分配が上手くいかずに売上を伸ばせないケースはよく見られます。しかし、企業が継続的に成長するためには正確な売上予測を元に適切なリソースを適切な領域に配分することが必要不可欠です。そこで本記事では、売上予測の方法から予測の精度を高めるために必要なポイントまで徹底解説していきます。

また、弊社 Magic Moment では、営業のアクションをデータで自動化し、誰もが営業の活動量と商談成約率を同時に伸ばすことで営業組織の売上向上と生産性拡大を実現する Magic Moment Playbook をご提供しています。ご関心のある方はこちらから詳細をご確認ください。

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売上予測とは

企業の重要な判断基準に使われることの多い売上予測ですが、そもそも売上予測とは何なのかを確認しておくことは重要です。

売上予測の精度を高めるポイントを知る前に、まずは売上予測の定義を確認しておきましょう。

売上予測とは?

売上予測とは、ある特定の期間(毎月・四半期毎・半年毎・毎年など)に、過去の売上・成約率・業界動向などの様々なデータに基づいて、売上の見積もりを立てることを指します。つまり、予測は想定するある期間の地点での、定量的なものである必要があります。

売上目標との違い

売上予測と混同しがちな指標に売上目標がある点には注意しておく必要があります。前項で売上予測の定義を確認していきましたが、多くの企業が売上予測と売上目標を混同してしまっている傾向にあるのです。ここからは売上目標との違いを解説していきます。

売上目標とは?

簡単に言えば、売上目標は現実的かつ定量的な売上予測に基づいて立てられる自社の目標です。例えば、製品をある期間でどれほど生産するのか、それに必要な調達計画や財務プランなどが挙げられます。

また、目標達成のために必要な営業・マーケティングの顧客獲得の指標にもなります。もちろん、このためのターゲティングも客観的な予測、つまり、将来のある地点で期待できる需要に基づいていなければなりません。「パレートの法則」によれば、売上の80%は、20%の顧客からもたらされると言います。例えば、単価の高いニーズを持つ市場をセグメント化し、ターゲットを絞り込むことが有効です。

このため、売上予測と売上目標は分けて管理する必要があり、混同しないように注意する必要があるのです。

売上予測と売上目標の違い

売上予測と売上目標の大きな違いは各指標の目的にあります。売上予測は需要の予測をすることが目的であり、精度が正しいかどうかが重要です。そして、予測の精度を左右する要因を理解していることが大切です。

一方で売上目標は売上予測を満たした上で利益を出すことが目的であり、設定した目標を達成・超過できるかどうかが重要になります。

このように売上予測と売上目標といった指標は目的も求められる項目も異なってくるので、売上予測においては現実的な需要を予測できているかという点を重視しなくてはなりません。

売上予測が重要な理由

ここからは売上予測が重要な理由ついて主に3つに分けて説明していきます。売上予測が大切なのは、いかなる問題があろうともそのボトルネックとなる本質的な課題を発見できるからです。

企業を適切に経営するため

売上予測が重要な1つ目の理由は「企業を適切に経営するため」です。

企業が毎年成長していくためには、利益を出していくことが重要ですが、そのためには社内がスムーズに回っていく必要性があります。例えば、受注があっても対応できる社員が足りない、製品のフォローアップまで手が回らない、必要な予算が下りない、進捗が共有されていないので把握できないなどの問題があった場合、社内は疲弊していき、成果を上げることが難しくなり、適切な経営ができているとは言えない状況に陥ります。

このような事態を防ぐためには、どれぐらいの需要があり、どれぐらいの売上が予想され、どれぐらいの予算と人員をどこに裂けば上手く社内が回っていくかを判断する必要があるのですが、その判断基準として売上予測のデータが大いに役立つのです。

予算を適切に配分するため

売上予測が重要な2つ目の理由は「予算を適切に配分するため」です。

企業がうまく回っていくためには、必要な場所に必要なリソースを割く必要がありますが、中でも極めて重要なのが予算配分です。例えば、受注の対応や製品のフォローアップをする人員の採用、需要創出のためのマーケティングキャンペーンの広告運用、営業メンバーの進捗や成果を把握するためのツールの導入など、全て予算が通らないと進めることができません。

この予算をどこにどのくらい割くかという判断は売上予測を元に決めます。そのため、売上予測が外れた場合は、必要な場所に必要な予算がないために問題が生じることになるのです。こうした問題が起きないようにするためにも売上予測には正確性が求められます。

人事を適切に管理するため

売上予測が重要な3つ目の理由は「人事を適切に管理するため」です。

例えば、製品需要の増加が予測できた場合は、より多くの製品を届けるための営業人員の確保にリソースを割きます。逆に売上の低迷が予測できた場合は、需要を創出するためのマーケティング人員にリソースを当てる必要があります。

このように、どこに人的リソースを割くべきかは全て売上予測の内容によって変わってきます。逆にこの予測の精度が悪い場合は、注力した予算が有効に活用されず、売上目標を達成できないリスクを考えなくてはなりません。こうした理由から売上予測は企業にとって極めて重要な指標とされているのです。

売上予測に必要なデータである顧客ニーズや市場動向を掴むためには、営業チームの分析を行うことも重要です。下記記事も併せてお読みください。

あわせて読みたい:営業成績を高めるための分析方法、SFAを活用した方法も紹介

売上予測に必要なデータ

企業にとって致命的な問題の発生を防ぐためにも、売上予測は重要な指標であり、正確であることが求められます。正確な売上予測には、売上を予測するに足る指標を計るための正確なデータの収集が欠かせません。

このため売上予測をするためには、様々なデータが必要不可欠です。業界や企業によって見るべきデータは多少異なります。

例えば、認知から購買/継続までの一貫した営業プロセスにおける転換率を見ることで、現状のリソースからおおよその売上や利益を算出することが可能になります。

指標は以下のものが挙げられます。

  • 過去の売上実績
  • コンバージョン率
  • 商談化率
  • リードタイム
  • 受注率
  • 解約率

また、これらの指標を計測するデータはいうまでもなく「正確」「リアルタイム」「誰もが活用可能な透明性」が確保されている必要があります。多くの企業でデータを信頼できない状況にあることが こちら の記事の Gartner社の調査で示されています。

また、外的要因に関する指標やデータを参照することも重要です。というのも、以下のような自社でコントロール不可能な要因がビジネスに与える影響は大きく、それら要因に合わせて自社が対応する必要があるからです。

  • 経済状況
  • 法律や規制の変化
  • 競合の参入やシェアの変化
  • 市場の成長率や消費動向、獲得にかかるコストの変化

また、近年参入する企業が多いサブスクリプションビジネスにおいては、見るべき指標や収集すべきデータの種類が異なります。以下資料にて詳細に解説していますので、併せてお読みください。

無料ダウンロード:サブスクリプションビジネス経営者が見るべきKPI10選

売上を予測する7つの方法

ここまで売上予測の重要性や必要なデータについて解説してきましたが、売上予測には具体的にどんな方法があるのか気になる方も多いと思います。

ここでは、7つの売上予測の方法について紹介していきます。

商談の機会ステージから予測する方法

商談成功に至るまでの営業プロセスを「見込み客→認定済み→デモ→見積もり→成約」というように段階毎に分けます。次に見込み顧客がどの段階にいるかを確認し、想定売上に同属性の顧客の過去データから予期できる成約率を掛けることで売上予測を行う方法です。

例えば、ある営業担当者が5,000万円の契約が想定される見込み顧客との取引を進めているとします。担当している見込み顧客が製品の無料試用期間を終える段階にあり、試用後の成約率が60%である場合は3,000万円の売上を予測します。

機会ステージから予測する方法のメリットは、簡単な計算式で客観的な予測ができる点にあります。一方、この計算式では商談にかかった期間や商談の規模など、個々のデータが考慮されないため、不正確な予測データになりやすいというデメリットがある点も留意しなくてはなりません。

販売サイクルの長さから予測する方法

リードが成約するまでの期間を元に成約率が高い時期を予測します。リードは既存顧客からの紹介によるもの・全く取引のない企業へのアプローチから始まったものなど、ソース別に分けることで更に有力なデータを取ることができます。

例えば、リードが成約するまでの期間に平均6ヶ月かかるとします。顧客との取引を開始して3ヶ月が経過している場合、成約率は50%となります。仮にこれが既存顧客の場合は、リードが成約するまでの期間が平均1ヶ月、取引開始から2週間経過であれば成約率は50%という風に、リードのソース別に同様の成約率でも必要とする期間が変わってきます。

この予測方法は非常に現実的で正確な予測ができる点が大きなメリットです。しかし、見込み顧客が新規の場合と既存顧客からの紹介の場合など、リードの種類によって販売サイクルは異なってくるため、リードの種類毎に予測を行う必要があります。さらに、デメリットとして正確なデータを使用しないと予測が大幅に外れる可能性があるため、営業チームはデータを細目に記録する必要が出てくる点は覚えておきましょう。いうまでもなく、ソースごとにリアルタイムに必要なデータをトラックできることが前提です。

リードから予測する方法

各見込み客のソースを分析し、類似の見込み客の過去の動きを数値化し、その数値に基づいて予測を行う方法です。この方法では、「前月の1ヶ月あたりのリード数・ソース別リードから顧客へのコンバージョン数・ソース別の平均販売価格」といったデータを集めます。

ソース別のリード数を元に予測を行うため、より正確な売上予測が可能になる点がメリットです。ただし、複数の要因が絡むため、変動の影響を受けやすい点はデメリットといえます。仮にマーケティングチームがリード獲得の戦略を変えた場合、これまでのデータとはリード数やコンバージョン率が変わってしまうため、予測の際には戦略変更の影響も加味する必要が生じます。

過去の売上実績から算出する方法

過去の特定の期間の売上から売上予測をする方法です。単純に1ヶ月前の実績を参考にするのではなく、季節性や時期も考慮してデータを取るのがおすすめです。

例えば、1年前の6月の MMR が5,000万だとします。その場合は今年度の6月の MMR も5,000万円かもしくはそれ以上になると予測します。

この方法は簡単な予測ですが、過去のデータから見ても変動があまり見られない安定した業界の場合は非常に有効な予測方法と言えます。逆に、競争の激しい市場変化やトレンドの波を受けやすい業界の場合は不正確になりやすい点がデメリットです。というのも競合の参入や規制、ニーズの変化で同期間の成長率は変化するためです。

あくまで、売上予測のベンチマーク(指標)として活用すると良いでしょう。

テスト市場分析による予測方法

試験的にあるターゲットとする特定のグループに製品やサービスを提供し、データを予測に使用する方法です。

例えば、新製品を試験的に特定の地域で販売する、利用者数を絞ってベータ版のサービスを利用してもらうなどがあります。この試験運用での利用者のリアクションを予測に使用します。

予測に使用できるだけでなく、副次的な効果も期待できる点がメリットです。具体的には新製品を本格的に売り出す前に反応の悪い点をブラッシュアップするタイミング、ブランド認知度を高める良い機会としても活用できます。

一方で、ある特定のグループでの反応が良かったとしても、別のグループでも通用する訳ではないことは考慮しておく必要性があります。また、試験運用やベータ版のリリースにはそれなりの費用がかかる点も念頭におきましょう。

多変量解析から予測する方法

予測分析ツールなどを使用して売上予測を行います。具体的には、平均販売サイクルの長さ・機会ステージ毎の成約率・担当者のパフォーマンスなど、これまでに紹介した予測方法から多くの要因を全て組み込んでいきます。

例えば、営業担当者Aは成約率60%の見込み客へのアプローチを終えて売上予測は1,000万円、営業担当者Bは既存顧客から紹介された見込み客とのアポを取ったばかりですが、成約率が80%で売上予測は800万円とします。この場合の売上予測は1,800万円となります。

データと高度な分析ツールを使用するため、非常に正確な予測が可能な点が大きなメリットです。ただし、予算の関係などで高度な分析ツールを導入していない場合はこの予測方法は使えません。

また、ツールを導入していたとしても、営業チーム内で進捗やデータの更新が浸透していない場合はデータを活用できないため、正確な予測ができなくなります。

営業パイプラインから算出する方法

営業パイプラインとは、「見込み顧客との最初の接点から成約までの一連の営業フロー」のことを指します。下の図のように、パイプラインにある各顧客属性ごとの転換率やリードタイムに基づいて現状のリソースからある期間の売上を予測することができます。

下記図のように、営業パイプラインをフローとして可視化して各フェーズまた各顧客属性の転換率やリードタイムを出すことで、現状のリソースからある期間の売上を予測することができます。

図1: 「データ収集による顧客・オペレーションの可視化」(『組織変革プレイブック』より Magic Moment 作成)

また、上記のように顧客の行動サイクルと対応させることで自社の営業パーソンが取るべき行動が明確になります。一連の営業活動の内、どこで顧客が停滞し、ボトルネックとなっているのかがわかるため、改善の施策にも落とし込みやすくなるのが利点です。

顧客の行動をステージ毎に洗い出すにはカスタマージャーニーが役立ちます。以下の記事でカスタマージャーニーの作成方法を紹介しています。

あわせて読みたい:競合他社と差をつけるカスタマージャーニーの書き方

売上予測の精度を高めるためには

ここまで売上予測の重要性について解説してきましたが、売上予測はあくまで適切なリソース配分や戦略の立案を行うための手段です。そのため、売上予測を実施することが目的化してしまうことは望ましくありません。

アメリカの未来予測学者で弁護士であり、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の McKinsey Judge を務めたこともある Paul L. Saffo 氏は、「予測の目的は、単に未来を予測することではなく、現在有意義な行動をとるために知っておくべきことを伝えることです1)と話します。

事実、売上予測が正確な企業はそうでない企業と比べて、前年比で売上が10%増加する可能性が高いとされていて成果につなげるためには売上予測の精度を高め、営業活動の質の向上や自社にあった戦略の立案、それに伴う人的・金銭的リソースの適切な配分につなげることが重要です。

売上予測の基準を統一する

売上予測をするとき、営業責任者や担当者の経験や勘に頼ってしまってはいないでしょうか?Gartner によると、予測精度に自信を持っている営業関係者は 50% 未満と言われています。2)

その理由は客観的なデータに基づいた判断ではなく、主観的な直感に基づく判断に頼っているためです。属人的な感覚による予測では、各々でバラツキが出てしまい、非効率なリソースの分配につながりかねません。

そのため、組織全体で案件の確度の設定基準を統一することが必要です。設定基準を設けることで営業担当者の主観的な判断によるデータのバラツキを抑えることが可能になります。

例えば、下記図のように顧客と自社の営業担当の関係値を定量的に測れる項目を用意することで、売上予測の確度を高めることができます。

図2:「日々の顧客エンゲージメントの可視化イメージ」(『組織変革プレイブック』より Magic Moment 作成)

組織内で事前に顧客とのやり取りに関する項目を定め、自社の営業担当者の行動と照らし合わせることで、顧客がどれくらい自社に興味を抱いているのかがわかります。そうすることで、現在抱えているリードや商談が売上につながるのかより正確に予測することが可能となるでしょう。

こうした予測と分析によって得ることができた示唆を、自社の中で標準化して行動に転換し、一連のプロセスを改善していくことで、自社にとって最適な営業の型を構築することができます。自社にあった営業の型を標準化することで、さらなる営業予測の向上と適切な戦略の立案、企業の効率的なリソースの配分につながります。

売上予測の精度を高める Sales Engagement Platform

売上予測の精度を高めるためには、正確なデータの収集と高度な分析だけでなく、併せて営業の型化も大きな課題です。その問題を解決するのに効果を発揮するのが、Sales Engagement Platform です。

Sales Engagement Platform は、営業担当者が見込み顧客や既存顧客とのコミュニケーションをより効果的に実行できるようにするテクノロジーのことです。それぞれの顧客への最適なアプローチをデータに基づき可視化し、結果の分析と改善を自動で担ってくれます。これは多くの企業で顧客データの管理のために導入されている CRM と比べて営業に特化したツールとなるため、営業の自動化と売上拡大にピンポイントで効果を発揮することが期待できます。

結果、Sales Engagement Platform を活用し、自社の営業分析を行うことで、売上予測の精度を高め、自社にあった戦略の立案や必要な人的・金銭的リソースの配分を実現することが可能になります。

近年では顧客行動の変化から顧客とのコミュニケーション機会や商談回数の低下に悩まされている組織も多いですが、Sales Engagement Platform はそうした課題の解決にも役立ちます。気になる方は以下の記事も参考にしてください。 

あわせて読みたい:米国の先進企業が示す2023年以降のエンゲージメント営業の未来

Magic Moment Playbook

Magic Moment Playbook は、日本で唯一の Sales Engagement Platform です。

営業のアクションをデータで自動化し、誰もが営業の活動量と商談成約率を同時に伸ばすことで営業組織の売上向上と生産性拡大を実現することができます。

営業担当者の業務を標準化し、取るべきアクションを提示するため、1人1人がトップセールスのような営業活動ができるとともに、営業管理者は各々の営業成績を予測することが容易になります。

図3. 「Magic Moment Playbook」(『組織変革プレイブック』より Magic Moment 作成)

Magic Moment Playbook を詳細に解説した資料を下記からダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

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《引用文献表》

1)Harvard Business Review, Six Rules for Effective Forecasting
https://hbr.org/2007/07/six-rules-for-effective-forecasting
2)Gartner, Gartner Says Less Than 50% of Sales Leaders and Sellers Have High Confidence in Forecasting Accuracy
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2020-02-12-gartner-says-less-than-50–of-sales-leaders-and-selle