営業戦略の策定に使えるフレームワークとは?
- 営業戦略は、市場シェアの向上や売上拡大などの目標を達成するための営業活動の中長期方針
- 営業戦略立案の上で、自社価値と市場動向・顧客理解を深めることが重要
- 営業戦略で活用できるフレームワークには、3C分析、ファイブフォース分析、SWOT 分析、セグメンテーション分析、4 P 分析、4 C 分析などがある
- 最適な戦略策定には、目標から逆算して自社の目指す目標値と顧客ニーズや競合などの市場環境の分析によるデータを相対的に検討することが大切
営業の成果を創出するうえで、営業戦略の策定はその第一歩となります。どこのセグメントに注力するのか、どれだけのリソースを投下するのかなどを検討することで、どの程度の成果が見込めるのかを見極めることが重要です。
しかし、営業戦略を策定するとはいいつつも、ただ市場を切り分けてセグメントを規定するだけで終わってしまい、実務まで戦略を落とし込めていないケースも多くあります。
そこで有効となるのがフレームワークの活用です。
今回は実際に営業戦略を立案する際に活用可能なフレームワークとその策定のステップをご紹介します。
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目次
営業戦略とは?
まずは営業戦略とはどのようなものであり、何を目的とするものなのでしょうか。戦略を策定するにあたって、目的の解像度を上げておくことが戦略策定の第一歩といえます。
営業戦略とは、市場シェアの向上や売上拡大などの目標を達成するための営業活動の中長期的方針のことです。
自社の強みや市場の寡占状態・ターゲット顧客を比較するなどして狙うターゲットを特定し、少ないリソースで最大の効果を得られるようにすることが目的になります。
その際に有効な施策として、市場をもとに切り口を設定し、ターゲットを特定していくセグメンテーションが有効になってきます。どのセグメントに、どの程度のリソースを投下をしていくのかなどを策定することで、より効果的に成果を上げることができるようになります。
営業戦略が定まらないことによる影響
なぜ営業戦略が重要であるのかを示すにあたって、営業戦略がない、もしくは目的に即していないとどうなってしまうのかについて見ていきましょう。
例えば、営業戦略がない、もしくはターゲットや市場を捉えきれていないケースでは営業活動自体が属人化してしまいます。意思決定者から現場レベルまで一貫性のある営業活動ができなくなってしまうのです。
営業担当者のスキルに依存することで成果にバラツキがでたり、顧客への理解が薄いまま営業を繰り返すなどの精神論に頼ってしまったりするケースが多くあります。
このような営業活動は結果として事業計画の推進を阻害してしまったり、売上の予測ができず投資判断を見誤ることになります。また、現場においても無駄な商談が増えてしまい、成果には繋がらないが、負担がかかってしまう状態を招くことになります。最悪の場合、優秀な人材の離職につながる可能性もあります。
このような事態を避けるためにも、自社価値と市場動向・顧客理解を深めたうえで営業戦略を立てることをオススメします。
営業戦略を正しく理解するには、営業戦略の位置付けを理解する必要があります。よく混同されやすいものと比較してみましょう。
営業戦略で使えるフレームワーク一覧
それでは具体的に営業戦略で使えるフレームワークを6つご紹介いたします。
3 C 分析
3 C とは、 Customer (顧客/市場)、 Company (自社)、 Competitor (競合)の3つの視点で分析するフレームワークです。
つまり、Customer (顧客/市場)では市場規模やターゲット、 Company (自社)では自社のリソースや強み、プロダクトの特徴を、 Competitor (競合)では、市場シェアやどのような競合プレイヤーがいるのかを分析します。
3 C 分析の目的
戦略を立案する前に、市場や顧客ニーズをもとに競合他社を分析した上で、差別化を図るためのフレームワークです。外的な環境を分析することで成果を上げるための糸口を探ります。
糸口を見つけることで、自社プロダクトを求める顧客とその量、どこにリソースをどれくらいの時間をかけて配分するのかなどの成果創出に必要な取り組むべきポイントが分かります。
活用事例
例えば、新商品を発売したいケースを考えてみましょう。
市場環境を把握するため、顧客のニーズや市場の成長性でセグメントを作成することで、狙いたい市場にターゲットがどの程度いるのか、今後需要はどの程度伸びるのかを把握することができます。市場環境を分析することで、戦略の指針にすることができるのです。
仮にターゲットの数が不足しているのであれば、ターゲットに合わせてプロダクトの性能や訴求ポイントを変えたり、またはリソースの配分の視点からそもそもリソースをかけないという選択肢を取ることもできます。
このようにミクロ市場環境を分析し、戦略の方向性を見定めることができます。
ファイブフォース分析
市場への新規参入や新商品立ち上げの際に自社の競合優位性を業界内の競合・新規参入の脅威・代替品の脅威・売り手の交渉力・買い手の交渉力という5つの視点から分析します。
ファイブフォース分析の目的
営業戦略を策定するにあたって自社を取り巻く脅威を5つの視点から分析します。業界内の競合や、業界全体の収益構造と需給を把握することで、収益性を検証するために使用します。
5つの脅威のうち、競合や新規参入の数など自社の収益性を脅かす要因を掘り下げ、収益性を担保するための対策を検討するべきといえます。
活用事例
例えば、注力市場にて既存製品・サービスをターゲット顧客に訴求していきたい場合、ここで課題となるのは「新規参入の脅威」と「代替品の脅威」になります。
仮にプロダクトと市場環境の分析により、参入障壁が低い状態であれば、収益性を脅かす要因になります。
そして、代替品の脅威は仮に参入企業が類似商品を展開する場合、買い手の交渉力を高める要因となり、結果自社の収益性を押し下げてしまいます。
SWOT 分析
SWOT 分析とは、 Srength (強み)、 Weekness (弱み)、 Oppotunity (機会)、 Thereten (脅威)の4つの視点で自社ビジネスと市場を分析するためのフレームワークです。企業の内部や市場など外部の環境を分析します。
SWOT 分析の目的
戦略を立案するにあたって、自社の課題や現状と市場が自社に及ぼす影響の2つの軸から、自社の弱みの改善や、強みを活かす戦略を策定することができます。
先述の3 C 分析やファイブフォースでの事実をもとに、両輪から定量的に達成したい目標を見定めることも有効です。
活用事例
例えば、新 SaaS プロダクトを展開する場合は料金や認知度、競合と比較した際の技術的優位性などから、強みとして打ち出せる要素と弱みとなる要素を洗い出します。次に、自社を取り巻く外部環境を分析します。
そもそもの市場規模や成長性、顧客のトレンド、競合状況からの参入障壁などから自社の強み、弱みを取り巻く要素を洗い出していきます。
しかし、これら外部環境はコントロールできないものです。戦略の立案にあたって、外的環境は相対的な評価の指標として捉えなければならないことに注意しましょう。
これらを内的環境と外的環境をぞれぞれ掛け合わせ、実際の施策に落とし込んでいきます。
セグメンテーション分析
狙っている市場について、3 C 分析やファイブフォース分析にて得られた情報や顧客管理ツールに溜まったデータをもとにターゲットの特定とそれに割くリソースの配分を決めます。
セグメンテーション分析の目的
戦略の策定にあたって、最小のリソースで最大の効果を得ることを目的とした分析です。
そのためには、定量的かつ具体的に目標を設定し、どの程度の時間軸で、どこ程度のリソースを投下し目標を達成していくのか、どのチャネルを選択するのかを決めていく必要があります。
効果的なセグメンテーション分析では以下の2点に留意すべきでしょう。
- 「どこを捨てるのか」というリソースの削減に軸足を据える
- 施策レベルまで落とし込むことを見越した戦略を立案する
というのも、少ないリソースで成果を最大化することを目的としているため、極端な話すべてのセグメントを短期間でカバーしようとした場合、戦略に一貫性が欠け、結果として成果につながらない状態を作ってしまいます。
活用事例
新規サービスの立ち上げに伴い営業人材に限りがあるケースを想定してみましょう。誰にどの程度アプローチするべきなのかを策定しないことにはリソースが分散し、非効率な営業活動を続けてしまう危険性があります。
そのため、 SWOT 分析にて自社サービスの特徴と市場の成長性、顧客ニーズ、競合の状況といった外的環境により注力セグメントを決めるためのデータを抽出します。
この際、データが正確かつ顧客のトレンドを捉えたリアルタイム性があることに注意します。戦略策定にあたっては、施策を一時的なポイントで見るのではなく、時間軸をもってサービスを拡張していかなければならないからです。
外的環境と自社サービスの特徴や需要が明らかになれば、そのデータと事業成長性や目的を考慮し、効果的なターゲットセグメントの特定とリソースの配分を規定することができます。
4 P 分析
4 P 分析とはマーケティング戦略において戦略を施策に落とし込むフェーズであるマーケティング・ミックスを検討する際に活用できるフレームワークです。
この4つの P は、製品戦略(Product)、価格戦略(Price)、流通戦略(Place)、販促戦略(Promotion)を表しています
4 P 分析の目的
市場の分析と自社環境の分析を通じて、提供するサービスや価格、サービスを提供するチャネルなど具体的な施策立案することを目的とします。
重要なことは、この施策は自社の位置付けや顧客ニーズをもとに立案されなければならないということです。 というのも、 SWOT 分析でも触れましたが、これらの4 P は外的環境とは異なり、コントロール可能な要素です。
つまり、自社の位置付けと顧客ニーズを相対的に、かつコントロール不可能な顧客ニーズなどの外的環境に合わせて考慮していく必要があります。
活用事例
例えば、ある高級腕時計の新商品を販売するケースを考えてみましょう。
市場など外的環境の分析により、市場における十分な顧客数とニーズ、競合製品との差別化、代替の脅威が少ないというデータを得ました。そのため、価格も売り手優勢の情勢を踏まえて、設定しました。
そして、顧客との接点を分析し、顧客はどの経路で自社製品に触れるのかを考察のうえ、販売プラットフォームとリソースを策定しました。
結果、顧客と自社製品をつなぐ効果的なマーケティングミックスにより、収益を最大化することができるのです。
4 C 分析
4 C 分析は4 P 分析と同様にマーケティング戦略において、マーケティング・ミックスを検討する際に活用できるフレームワークです。
4つの C は、顧客にとっての価値(Customer Value)、顧客にとっての費用(Cost)、顧客にとっての利便性(Convenience)、顧客とのコミュニケーション(Communication)を表しています。
4 C 分析は4 P 分析と同様、効果的な施策を検討するフレームワークですが、「顧客にとって」ということが示すように、顧客視点から検討します。一方、4 P はコントロール可能な企業視点から考察したものです。
さまざまなフレームワークを紹介しましたが、重要なことはこれらのフレームワークをいかに活用するかです。冒頭でも触れたように、戦略を実務まで落とし込み、営業活動の成果につなげなければなりません。
そのためには、顧客データや外的要因を元にした戦略を具体的かつ検証可能なプロセスに分解する必要があります。
フレームワークを使って営業戦略を策定する5つのステップ
ステップ1:現状の分析から課題を明らかにし、目的を明確化する
最初のステップは、自社ビジネスや市場、顧客ニーズ、競合といった市場の分析です。市場の規模や成長性において自社の現在の立ち位置を明確にし、戦略立案に必要な要素をデータとして収集しましょう。
外的環境に照らし合わせて自社の特徴を明確にすることで課題が明らかになります。だからこそ、目標を定量的にどれくらいのスパンで達成するべきなのかが明確になり、施策を具体化していけるのです。
有効なフレームワークとしては3 C 分析、 SWOT 分析、ファイブフォース分析があげられます。
ステップ2:顧客と自社の販売活動に関する解像度を高め、セグメンテーション分析を行う
環境の分析により目標と課題を明確化した後には、セグメンテーション分析に着手します。
ポイントはターゲット顧客を特定し、アプローチするチャネルを定め、リソースを投入するセグメントを選択することです。
ターゲットの特定は、ステップ1で分析した顧客ニーズと自社の目的をもとに設定しましょう。続いて、特定したターゲットの購買行動やトレンド予測にもとづいて、有効なチャネルを洗い出し、リソースを投下するセグメントを定めます。
ただ、このプロセス設計においては収集・蓄積したデータが現状の顧客トレンドを反映したリアルタイム性を担保していなければなりません。
多くの企業で CRM といった顧客管理ツールを導入していますが、データの正確性に関してはデータを営業担当者が入力してくれないなどの理由から正確性を欠いているケースが見受けられます。
また、市場や顧客の調査データはその性質上、調査時点の顧客動向を反映しているとは限りません。
正確なデータを蓄積・活用できる体制を整えることが大切になってきます。
ステップ3: セグメントごとの目標値を時間軸・チャネルごとに定める
セグメントを決めた後に考慮しなければならないのが、リソースとチャネルです。
各セグメントにアプローチするのはリソースの観点からも非合理的です。リソースは限りがあるため実現可能性の低い目標値を定めると、効果的なオペレーションが構築できなくなるのです。
まず、リソースを加味したうえでどの程度の時間軸でどの程度の目標値を達成するのかを定めましょう。
次に、各セグメントの規模、成長率、獲得コストを考慮し、自社が重視するポテンシャル要素にもとづいて優先的に狙いたいセグメントを決めます。
最後に、リソースをチャネルごとに配置していきますが、ここでは狙いたいセグメントに対してのチャネルごとの費用対効果を算出する必要があります。
そのためにはチャネルの費用対効果を算出するうえで必要かつコントロール可能な指標をデータをもとに可視化する必要があります。
ステップ4: セグメントに対するオペレーションを構築する
優先的に狙いたいセグメントとアプローチするチャネル、そのリソースを策定した後は実際にアプローチを行うオペレーションを構築します。
ここで重要なことは、認知から利用に至るまでの顧客のサイクルに沿って、自社の販売活動のオペレーションを構築することです。
つまり、営業部門で閉じた営業オペレーションには限界があります。マーケティングからカスタマーサクセスまで顧客のライフサイクルにもとづいた販売活動を顧客データにもとづいて実行することで、顧客体験を一貫して育成・サポートしていくことができます。
顧客の課題や体験を軸とした一貫した営業活動をすることで、受注率向上、解約率の低下などのメリットがあります。顧客体験の育成をもとに各部門が役割に応じた KPI を設計し、正確なデータ基盤を構築、共有するべきといえます。
営業プロセスの構築のステップについては こちら をご覧ください。
ステップ5: データをもとにオペレーションを改善・リソースの配置を見直す
オペレーションはインサイトをもとに常に改善していかなければなりません。顧客行動や顧客満足度、それに対する自社のアクションの因果関係を相対的かつ定量的に計測できるツールを導入し、成果をトラックできるようにしましょう。
顧客データを改善のためのアクションを実行し、当初の顧客仮設の精度を向上させることで、ビジネスの課題をリアルタイムに可視化し、予測可能な売上にもとづいて意思決定や効果的な戦略の策定が可能になります。
フレームワークは、企業の戦略策定の糧になります。しかし、重要なことはフレームワークのみに沿って戦略を立てることではありません。
大切なのことは、自社のビジネスモデルと定量的な目標、サービスやプロダクトの強み・弱みをもとにどんなターゲットをどの程度の時間で、どの程度のリソースで獲得していくのかを戦略に落とし込むことです。
目標から逆算して自社の目指す目標値と顧客ニーズや競合などの市場環境の分析によるデータを相対的に検討し、自社にとって最適な営業戦略を策定していきましょう。
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