限られたリードから最大の収益を引き出す「リードナーチャリング」
- 商談を創出するためのリードナーチャリングは顧客フォローを行う上で重要性が増しています。リードを継続フォローしなかった場合、80%の顧客は2年以内に競合の製品を購入しているのです。
- 注目されている背景としては、顧客の購買検討プロセスが以前より複雑になっており、顧客コミュニケーションが高度化していることが挙げられます。
- 営業プロセスと同じように、リードナーチャリングもステージごとに科学的に管理する必要があり、明確にルールづけが必要です。
近年 BtoB を中心に、分業体制で営業活動を行う The Model 型営業組織を取り入れる企業も増えてきています。購買プロセスが複雑になり、顧客を理解することが難しくなっているためです。
こうした中で、競合と競い、かつ自社が顧客に選定していただくためには、リードナーチャリングが重要です。
商談に入る前に顧客から情報を入手し、見込み顧客になる前のリード段階で良い関係を築くことが、成約率を高める鍵となります。
本記事では、営業プロセスの「リードナーチャリング」に焦点を当て、最大限の収益を引き出すためのポイントをお伝えします。
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リードナーチャリングの重要性
リードとは、自社のソリューションやサービスを購入する前段階の、将来の取引相手となり得る「見込み顧客」のことを指します。つまり、見込み客段階のリードをいかに温めるかが、売上や利益につながる源泉となっています。
実際には獲得したリードのうち、購買段階にあるのはわずか10%と言われており、いかにその10%を実際に契約に導くかが重要になります。同様に、残りの90%から購買段階に育成して、商談につなげるかも重要な役割になります。
リードナーチャリングとは?
リードナーチャリングとは、直訳すると「見込み顧客の育成」です。獲得したリードの購入意欲を高め、将来的な受注につなげていくマーケティング方法です。 上述のように、リードから購買段階にある顧客はわずか10%であること、かつ顧客の購買プロセスが複雑になってきていることからも、リードナーチャリングの重要性が日々高まっています。
リードは、継続フォローによって購買意欲を高めることができる
リードの継続フォローの効果について、興味深いデータがあります。リードを継続フォローしなかった場合、80%の顧客は2年以内に競合の製品を購入しているのです。
これは、丁寧に継続してリードをフォローしていけば、2年以内に見込み顧客が購買意欲を持つタイミングが来ることを意味しています。
リードとして登録された段階で、濃淡はあれど貴社のソリューションに興味を持っています。それは情報収集レベルから始まるかも知れませんが、ニーズを喚起し、中長期でフォローすることで、高確率で商談化でき、検討するタイミングが訪れます。
その時に貴社が検討の俎上に載るように、来たるべきタイミングに備えてリードナーチャリングをし続けることが重要となります。
このような見込み顧客を獲得するための活動のことを、リードジェネレーションと言います。
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リードナーチャリングを実現するために必要な取り組み
リードナーチャリングを実現する上では、大きく3つのステップが必要です。
顧客の購買意欲を把握する
リードナーチャリングを実施していく上で、まずはじめに顧客の購買意欲を把握することが必要です。BANT 条件と呼ばれる項目を基本としてヒアリングすることが重要です。BANT とはBudget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(ニーズ)、Timeframe(導入時期)の4つのワードの頭文字です。
購買意欲を把握する上では最低限ニーズがあることが前提となり、購買意欲がない顧客をフォローしてもすぐに結果には結びつきません。
それ以外の3つの項目も分かれば、フォローすべきリードかどうか精度が高まります。例えば目の前のリードが決済者であれば、その人のニーズや要件をクリアすることで意思決定されるのであれば即座にフォローすべきですし、導入時期が少し先でも、有効リードとしてリードナーチャリングすべきと言えます。
購買意欲に合わせたコンテンツを配信する
続いてはコンテンツです。このコンテンツは顧客のニーズを把握していれば、どのようなコンテンツが購買意欲をそそるかある程度当たりがつきます。
同じような業界や規模感の導入事例を求めているのか、導入後の成果を求めているか、課題感について整理しているのかを捉えることが重要です。そのステージに合わせ、適切なコンテンツをメールなどで提供するリードナーチャリングを実施することで、リードが検討プロセスを進めるトリガーとなるでしょう。
課題や決裁権を持っているリードに絞って提案する
リードナーチャリングを進めるためには、課題や決裁権を持っているライトパーソンと呼ばれるアプローチすべき適切な人をフォローする必要があります。
社長と、何の権限もない担当者レベルの社員であれば、前者にアプローチできた方が可能性があります。会社の抱える課題に頭を悩ませ、かつ決裁権も持っていれば、より商談につながりやすく成約の可能性も広がります。
課題や決裁権を持っているリードの興味を引くようなアプローチができるよう、コンテンツや狙いを絞ってリードナーチャリングすることも戦略的に求められます。特定のリードに絞って提案するためにも、マーケティングオートメーション(MA)ツールを使っている企業も多く存在します。
限られたリソースでリードの興味関心を汲み取り、適切なタイミングで適切なコンテンツを届けることで、リードナーチャリングをサポートしてくれます。
リード育成のカギ:ステージ管理
リードから成約に至るまでは、複数のステップを踏んで提案プロセスを進めていきます。本章では、プロセスに関わるそれぞれのステップおよびその流れについて触れていきます。
ステップに合わせたリードナーチャリングが必要になります。
マーケ領域(Lead→MAL→MQL)
Lead→MAL
見込み顧客の全リストであるリード情報から MAL( Marketing Accepted Lead )に至る際、リードを精査するリードクオリフィケーションという作業が発生します。その際に、リードから競合会社や、自社のパートナー関係にある企業、学生や個人、学校の先生などを対象外とする作業が発生します。
精査した結果、残ったリードを MAL と呼び、ここからマーケターは活動を開始します。
MAL→MQL
続いては、MAL から MQL( Marketing Qualified Lead )の工程に入ります。MQL とは MAL の中から自社に興味関心を抱き、接触頻度も高く、マーケターが営業に引き渡しても問題ないと判断したリストのことです。
実際にこの MQL には会社ごとの基準があり、自社のイベントに出席してくれたという前提や、直接リードから問い合わせをいただいたなど、様々です。
MA を使って何度も自社のサイトに訪問し、コンテンツをダウンロードするなど、興味関心度が接触度合いから測れる場合も MQL と定義する基準になります。
セールス領域(MQL→SAL→SQL→Opportunity)
MQL→SAL
ここからはマーケターからセールスへ担当者が変わります。MQL から SAL ( Sales Accepted Lead )にするためには、営業メンバーがリードに対し訪問を行い、営業活動を開始したいと判断する必要があります。
実際に SAL となった場合、営業が引き受け、このリードに対しフォローを開始することになります。なお、SAL の基準としてはリードから訪問の依頼を受け取った場合も含めます。
SAL→SQL
SAL の次の段階は SQL( Sales Qualified Lead )と呼ばれます。SQL の段階になると、営業がすぐに商談を開始しないけれども、タイミングを見て定期的に関係を持つようになります。すぐにではないけれど商談が見込めるため、中長期的にフォローするリードです。
SQL のリードまでナーチャリングが進んだ場合、営業も商談化する手前まできているため、有効リードとしてインサイドセールスとの協業も進んでくる段階となります。
SQL→Opportunity
最後に Opportunity ( 商談 )です。ここまでくると、営業は資料など提案準備を行い、課題に対し自社のソリューションを説明し、活用することで課題解決ができるよう本格提案を開始するステージに来ています。
結果的に提案を行うことで、受注か失注かという最終的な結論が出るレベルの状態です。
リード育成の成果
リードナーチャリングで成約率は2.9倍になる
限られたリードを丁寧にフォローしていき、ニーズに答えていくリードナーチャリングを実施することで、確実に成約率の向上につながっていきます。その効果は2.9倍とも言われており、リードナーチャリングをしなかった場合と比べ雲泥の差があります。
リードナーチャリングと一言で言っていますが、具体的にどういった項目があるかというと、営業部門の効率化の向上、顧客獲得の機会損失の防止など様々です。リードナーチャリングが適切に行われると、購買意欲を持ったリードを捉えることができるため、商談化率や成約率向上につながります。
検討していないリードに対し、いくら営業をかけても効果は期待できません。リードの見込み度合いがたとえ薄くても、中長期でフォローをしていると、結果的に検討するタイミングを逃すことなく、営業の訪問につなげていけるでしょう。
MRR(毎月の経常収益)も改善される
リードナーチャリングは MRR 向上にもつながっています。MRR とは Monthly Recurring Revenue の頭文字をとったもので、毎月の経常収益のことです。クラウドサービスを提供している会社で使われる単位であり、いかに安定して経常収益を得られるかという点で使用されます。
リードナーチャリングが MRR とどう関係しているかですが、毎月のクラウドサービスを利用する以上、顧客はさまざまな理由で既存のアップセルやダウングレードが生じます。毎月使っていればもっと使い続けようというポジティブな側面もあれば、契約更新のタイミングでサービス利用料を減らそうと決断する企業もあります。
したがって、目的を契約するまでではなく、契約後も定期的に既存顧客をナーチャリングしていき、新たな商談の機会を作ったり、既存顧客の活用促進のために、イベントやウェビナー参加を促すことも重要な営業活動になります。
組織強化のための方策
リードナーチャリングの手法として、分業制やオンラインアプローチの強化が挙げられますが、実際に適切なフォローを行うことで、その成果が期待できます。オンラインアプローチが重要性を増している現状を踏まえると、オンラインでの顧客開拓に強い営業組織への育成にも力を入れていくことが、成長の鍵となります。
実際にどのようにオンラインに強い組織を作っていくかは下記の記事を参照ください。
リードナーチャリングの成功事例
A社:MA ツールを活用し、リードナーチャリングを通じて商談機会を増やした事例
背景
リード数はあったが、リストの優先順位が不明瞭であり、リードナーチャリングできていなかった。結果としてリードの温度感が低いうちから商談の機会を創ろうし、営業へ有効な商談となるようなリードを供給できていなかった。
リードナーチャリングの取り組み内容
定期的にメルマガを配信し、見込み顧客とのタッチポイントを持ち続ける施策を展開しました。方法としてはメルマガを活用し、ターゲットに対し MA の機能を用いて興味や関心度合いをつぶさにチェックし、リードナーチャリングしていきました。
リードナーチャリングの際、単にソリューション紹介の情報を送るだけでなく、躓きやすいポイントや対象企業が参考になる活用事例を送るなどして、コンテンツが画一的にならないよう注意していました。
リードナーチャリングのために、見込み顧客のニーズに合わせたセミナーも実施しました。セミナーに参加するリードは有効リードになる可能性があり、参加したリードに対してはよりコンテンツを絞った情報を届け温度感を高めていきました。
リードナーチャリングを通じた成果
リードナーチャリングを通じ、適切なタイミングで顧客にアプローチできるようになった結果、MQL から SQL、そして Opportunity になる機会が増えてきました。
また、リードナーチャリングの最中に顧客のニーズを汲み取れるようになりした。仮に今すぐ検討のタイミングでなかったとしても、定期的にコミュニケーションを取ることで、見込み顧客との関係性を良好に築くことができるようになり、いよいよ検討するタイミングには見込み顧客から商談の依頼をいただくことにつながったのです。
B社:全社での顧客接点と関係性の強化を実現した事例
背景
リードナーチャリングの仕組みが整備される前は、問い合わせがあるかないかというゼロイチの観点でしか顧客の興味関心を図れず、顧客アプローチの精度が低かった。
リードナーチャリングの取り組み内容
特定のソリューションを拡販したいとなった際、コンテンツを提供→キャンペーンやオファーを出す→反応のあるリードを丁寧にフォロー、という3ステップのリードナーチャリングを実施するルールを決めました。コンテンツの中身を明確にし、まずは見込み顧客に情報を届けるという点に絞った適切なコンテンツを作成しました。
その後、見込み顧客に対し、過去の導入実績を踏まえ、提示すべきお得情報を加え、興味関心度合いを探りながら、温度感を高めていくリードナーチャリングを仕掛けました。
最後に、明らかにコンテンツの閲覧時間が長い見込み顧客や、問い合わせなどの反応があり、イベントへ参加してくれるような見込顧客を丁寧にフォローしていきました。
加えて、問い合わせこそないものの、興味関心が高まっているとわかる行動をするリードに対し、アウトバウンドアプローチを仕掛け、商談の機会を創出していきました。
リードナーチャリングを通じた成果
リードナーチャリングを確実に行うことで、自社のソリューションの勝ちパターンを把握し、商談創出の機会が増えました。また、勝ちパターンを作れたことでそのノウハウを展開し、他のソリューションでもリードナーチャリングの成功例として社内で横展開ができるようになりました。
参考:List finder/https://promote.list-finder.jp/article/leadnurturing/success-stories/
リードナーチャリングに関するまとめ
リードナーチャリングの重要性
リードの状態からすぐに商談化して購買意欲を持っている割合は全体の10%と非常に限られています。したがって、いかに残りの90%リードを丁寧にフォローしていくかが収益の最大化につながる鍵となります。リードナーチャリングをする上で、当然リードの理解が必要であり、リードに対する的確なアプローチをしていく必要があります。
ステージ管理
リードナーチャリングで重要なポイントとして、リードのステージ管理が挙げられます。リードといっても、リードからMQL、SQL、Opportunityとそれぞれアプローチの方法が異なります。
リードを精査しながら適切なステージで適切な情報を届けていきます。今すぐに商談にならずに落ちていったリードであっても、リサイクルをしながら検討タイミングになるまで、仕組みを作ってフォローしていくと商談化ができるようになります。
リードナーチャリングの成果
リードナーチャリングを適切に行うことで、新規営業の成約率の改善だけでなく、既存顧客の MRR(毎月の経常収益)の改善やダウングレードの防止にもつながります。
見込み顧客のフォローという観点でリードナーチャリングは理解しやすいですが、既存顧客のアップセルや解約防止にもつながる点から、既存顧客に対しても重点的にフォローすべきです。
クラウドサービスは継続して利用してもらうことに価値があります。それは分業制の営業組織をとっている企業が多いことから分かるように、営業だけなく、カスタマーサクセスやインサイドセールス、マーケティング部門が一枚岩となって顧客と向き合う重要性を示唆しています。
Magic Moment では、インサイドセールスの立ち上げやリードナーチャリングの設計、成果に繋げるために抑えておくべきポイントに関してこちらのチェックシートにまとめて無料で配布しています。ぜひご活用くださいませ。
こんな方におすすめ
- これからインサイドセールスを始めたいが、何から手をつけたら良いか分からない
- インサイドセールスを実施しているものの、成果に繋がらない
- どのようなツール・データが必要なのか分からない
- マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの各部署が閉じており、連携がされない
- 見込み顧客(リード)を商談に繋げることができない
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