【戦略×実践】SaaS のマーケティング戦略は?意識すべき法則とは

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要約SUMMARY
  • SaaS マーケティングはそのビジネスモデルから LTV/CAC に着目する
  • 見込み顧客により長く、より高頻度に高単価の商材を購入してもらうことを目的とする
  • 理想の顧客像を知る際のポイントは、マーケティング部門が獲得した顧客1人あたりがどれほどの期間で、どれほどの利益をもたらしてくれるかを推定できる状態であること
  • ターゲットとリソース、費用対効果の交点がマーケティングの突破口になる
  • 実践的なマーケティングにおける心構えは、顧客はなぜ自社と接するべきか?何が自社を特別な位置付けとするか?の視点

SaaS のマーケティングとは、ブランド認知を高めて長期的視野でサービスを販売する手法です。

SaaS 企業が成長するためには、マーケティング戦略とその実践のフローがシームレスに連携し、適切な PDCAが回る必要があります。

つまり、狙うべきターゲットや成功指標を決め、マーケティング手法を選択し、その費用対効果や仮説の確度をデータドリブンに検証していく必要があります。

そこで、本記事では、SaaS 企業のマーケティングが意識するべきポイントを SaaS のビジネスモデルから紐解き、それぞれを【戦略編】【実践編】に分けて紹介します。

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SaaS のマーケティングとは?

まず前提として、SaaS とは何か?そしてその SaaS のマーケティングとは何か?を押さえておきましょう。

SaaS とは?

SaaS(Software as a Service)は、ユーザーがインターネット経由でアクセスするクラウドベースのソフトウェアです。

SaaS は「サース」「サーズ」と呼ばれています。基盤になるインフラやミドルウェア、アプリケーションはサービス提供者側で一元管理されていて、自社の環境整備が必要なく導入のハードルが低いため、多くの企業が活用しています。

SaaS を端的に表すと、サブスクリプションモデルと呼ばれる契約形態(必要な時に必要な分だけ購読して利用すること)で利用することによって、インターネット上でソフトウェアをレンタルのように利用できるサービスのことを意味します。

定額や従量課金制のサービスが主となっており、利用量や期間に応じた複数のプランが用意されていることが多いです。動画や音楽の配信サービス、Netflix や Youtube Music もサブスクリプションであり、SaaS の一種です。

SaaS マーケティングとは?

SaaS マーケティングとは、市場における自社のブランド認知を高め、長期的視野で LTV を上げていく役割をもちます。

具体的には、自社の SaaS サービスを市場に位置付け、ポジションを確立し、プロダクトや自社のブランド価値を高めていく取り組みになります。特に、プロダクト主導の成長戦略 PLG(Product-Led Growth) を志す企業にとって欠かせないものです。

既存顧客からの売上アップに貢献することはもちろん、顧客が求める機能や課題をプロダクトチームへ反映し、狙ったターゲットのニーズを満たす製品の開発、リファラルによる新規顧客の紹介などにも貢献します。

ただ、SaaS は従来の売り切り型ビジネスのマーケティングとは勝手が違います。次に SaaS のマーケティングで意識するべきことを見ていきましょう。

SaaS のマーケティング部門が取り組むべきこと

SaaS のマーケティングで意識するべきことを知るには、まず SaaS 特有のビジネスモデルをまず理解する必要があります。

SaaS のビジネスモデルは、従来のビジネスモデルと比較してどのような特徴があるのでしょうか?

利益の発生が長期化する

多くの SaaS企業 は定額や継続的な課金制を取っていて、一定期間利用できる権利に対してユーザーが金額を支払います。つまり、ユーザーはサービスの必要性がなくなれば、いつでも解約できる柔軟性を持っています。これは利用者にとっては大きなメリットになります。

一方、SaaS サービスをマーケティングする立場から見ると、買ってはくれたもののすぐに解約されてしまっては、獲得にかけた広告費などのマーケティングコスト(CAC)その顧客から得た収益が釣り合わず、下の図が示すように赤字となってしまいます。

コストに対して収益は累積的に発生するからです。

図:サブスクリプションモデルの投資の回収は長期化する(Magic Moment作成)

そこで、SaaS のマーケティングが利益を上げるためには、顧客が自社との接点を終えるまでに自社に支払う総額を示す LTV(顧客生涯価値)が重要な指標になります。マーケティングにおいては、ターゲットとする顧客が生涯にわたり自社にもたらすと期待できる総収益を指します。

先ほどのマーケティングなどの顧客獲得にかけるコスト(CAC)と LTV を使うことで、マーケティングの獲得効率や理想的なターゲット像、将来得られる利益を推定することが可能です。

この LTV/CAC比率で将来の利益を推定する指標はユニットエコノミクスと呼ばれます。SaaS のマーケティングが意識するべき指標です。

ユニットエコノミクスが低ければ低いほど、マーケティング施策の獲得効率が悪く、獲得にかかったコストを回収し、利益を上げるのに時間がかかってしまいます。

ユニットエコノミクスの概要やベンチマークとなる比率、LTV を上げるための具体的なアプローチ手法を以下の記事で解説しています。

あわせて読みたい:LTV/CAC比 ユニットエコノミクスとは?LTV 向上の戦略を解説

リピーター育成のマーケティングが重要

SaaS マーケティングの成功には、先述の通り LTV を高め、CAC を下げることがキードライバーになります。

端的に、マーケターは見込み顧客により長く、より高頻度に高単価の商材を購入してもらうことを狙います。定量的に考えると、ARPU(ユーザー当たりの平均収益)を上げ、Churn Rate(解約率)を下げることです。

しかし、一般的なマーケティングでは、優良な見込み顧客を効果的に獲得することが是とされます。そして、見込み顧客が商談フェーズに渡ってからは、また新たな見込み顧客の獲得に移行する傾向があります。

一方、SaaS のマーケティングでは、マーケターも顧客との継続的な関係を築いていくことが求められます。

この SaaS マーケティング成功の鍵である LTV の向上には、 顧客が自社に特別な価値を感じている状態(顧客ロイヤルティが高い状態)であることが必要不可欠です。

これには、顧客のプロダクトやサービスへの満足度だけでなく、サービスを受ける過程で顧客が得られる体験も大切になってきます。例えば、プロダクト利用の推進や活用法、トレンドなどの情報を定期的に得られるというのも顧客体験です。

つまり、SaaS のマーケターは顧客ごとにパーソナライズ化されたコンテンツの提供などで顧客が他社では得られない体験を与え、末長く自社とお付き合いできるリピーターを育成する観点を持つことが大切です。

こちら の記事では SaaS のマーケティングが持つべき考え方や、LTV を向上する戦略から具体的な実践手法を紹介しています。

あわせて読みたい:マーケティングの LTV とは?LTV 最大化のマーケティング戦略を紹介

【戦略編】SaaS のマーケティング

SaaS におけるマーケティング戦略として、SaaS のマーケティング部門は何をするべきなのでしょうか。

マーケティングでは、まずその目的を明確にする必要があります。表面的なマーケティング手法から入ると再現性がなく、コスト増大や非効率的な PDCA に陥ります。

SaaS のマーケティング戦略の目的と役割

さきほどの大上段的な一般的 SaaS マーケティングの目的に即すと、戦略には以下の3つが挙げられます。

  • 推定LTV が高い見込み顧客の獲得
  • 見込み顧客の購買意欲の醸成/ブランド意識の醸成
  • LTV(ARPU or Churn rate)の増加

つまり、SaaS企業におけるマーケティングの役割は大きく以下の3つだと言えます。

  • 推定LTV が高い見込み顧客を定める
  • 推定LTV が高い見込み顧客の獲得/育成
  • 顧客データをデータドリブンに活用/ターゲットの再編

成功する SaaS のマーケティング部門はペルソナの確度が高い

SaaS のマーケティングが定めるべき、見込みが高い顧客とは、自社サービスを使うことで価値を感じ、自社に愛着を持つ推定 LTV が高い見込み顧客であるということです。

つまり、より長い期間自社のサービスを愛用してくれて、なおかつ単価も高い見込み顧客が何であるのかをマーケティング部門は知る必要があります。

マーケティング施策を打つためにも、まずは相手を知ることが重要です。

LTV の高い顧客像を設定する

まず、自社のマーケティング組織が、LTV の高い顧客の具体的なペルソナをイメージできているのかを確認するために、以下の質問に回答しましょう。

  • 現状で一番 LTV が高いのはどんな顧客属性ですか?
  • その顧客の推定 LTV はいくらですか?
  • その顧客の推定獲得コストはいくらですか?
  • その顧客と接点を持てるマーケティングチャネルはどれですか?
  • その顧客が気に入るサービスの機能は何ですか?
  • その顧客が気に入るサービス使用によるメリットは何ですか?

全てに答えられる組織は少ないかもしれませんが、既存の顧客データの分析や営業、カスタマーサクセスなどへのヒアリングを通じて仮説の確度を高めていくように努めましょう。

顧客接点を持ちづらいマーケティング部門としては、一度カスタマーサクセスや営業と徹底した議論を行い、以下の項目などを話し合うことをオススメします。

  • どんな数値(Expansion MRR / Churn rate 等)が LTV に貢献しているのか?
  • LTV の変数と顧客の行動を示す定量データの相関性を可視化し、何を客観的なロイヤルティ判断の指標とすることができるか?
  • なぜその定量的なデータは高くなったのか?
  • その指標に貢献する顧客は過去にどのような行動をしているのか?体験を得ているのか?
  • 自社のアプローチと顧客行動のデータとの間に相関性があるか?
  • その顧客の行動や体験は見込みの薄い顧客のものと逆相関するのか?または、他の見込みの高い顧客との共通点があるか?

確度が高い状態として、マーケティング部門が獲得した顧客1人あたりがどれほどの期間で、どれほどの利益をもたらしてくれるかを推定できる状態であることが大切です。この状態であれば、一番高い LTV が推定できるペルソナや、どのような体験がキーポイントになっているのかが分かります。必然的に自社が満たすべきニーズの解像度が上がっているはずです。

また、このようにドリルダウンしていくことで、施策の展開(どのような体験を届けるべきか)を視野に入れることもできます。

成功する SaaS のマーケティングはターゲティングと獲得チャネルの最適化をする

理想の顧客像を決めたところで、闇雲に手当たり次第施策を打つわけにはいきません。特に、狙うべきターゲット(優先ペルソナ)を定め、効率的に獲得していく際に考えるべきことをみていきましょう。

ターゲティング

さきほどの見込みの高い顧客の属性をさらに分解して考えましょう。

  • その人はどのような業界にいますか?
  • 会社の規模はどの程度ですか?
  • どのような関心ごとを持っていますか?
  • 何に困っている傾向がありますか?今後何に困りそうですか?
  • なぜ自社と良好な関係を築けますか?ニーズとサービスの相性?顧客体験の良さ?
  • どのような期待を持っていますか?
  • どのような体験を通じてロイヤルティを高めますか?

上記の質問をクリアにしていき、「業界×規模」「業界×課題(ニーズ)」などといくつかの軸を設け、ペルソナ像(セグメント)を作っていくようにしましょう。

そして、それぞれのペルソナについて、そのポテンシャルを考慮します。下の図のように、ポテンシャルを考慮しなければ、投資リソースも分散し、期待した効果が得られにくくなります。

図:機会損失の原因(Magic Moment作成)

SaaS のマーケティングで考慮すべきポテンシャル項目は以下のものがあります。

  • ROI
  • 推定LTV
  • 推定CAC
  • リードタイム
  • 課題(ニーズ)と自社サービスとの相性(提供できる価値)
  • 期待ネットワーク効果

リソースと獲得チャネルを検討する

見込み顧客が行動するかつ、費用対効果の高いマーケティングチャネルを考察していきます。つまり、理想の顧客に最も適したマーケティングチャネルを選択します。

候補となるチャネルごとに以下の項目を気にするようにしましょう。これは最も費用対効果の高いチャネルを洗い出すのみではなく、下の図のように定常的なトラッキングに基づき結果からインサイトを抽出するためでもあります。

図:リソースと獲得チャネルの検討(Magic Moment作成)

SaaS のマーケティングで考慮すべきチャネル費用対効果の項目は以下のものがあります。

  • ROI
  • 推定LTV
  • 推定CAC
  • リードタイム

ここでのリソースの検討とは、どの程度の時間軸で、どのセグメントを、どれほど獲得するかを検討するということです。

ここまでの「ターゲット」「獲得チャネル」「リソース」の交差する点が自社が一番狙うべき顧客です。どのように(チャネル)、いつまでに(リソース)、誰を(ターゲット)が分かる状態です。

ステップを改めて整理しましょう。

  • LTV が高い属性を見極める
  • LTV がなぜ高いのか?を顧客の静的な属性と顧客体験との両面から仮説立てる
  • ペルソナ(セグメント)ごとのポテンシャルを考慮する
  • ポテンシャルの高い顧客と接点を持てる獲得チャネルの特定する
  • チャネルごとの費用対効果を考察する
  • リソースを加味してカバレッジ範囲を決める

ここまで来れば、顧客の解像度は明瞭かつ高いはずです。

検討できるチャネルには次のようなものがあります。

  • ラジオ
  • テレビ
  • ソーシャルメディア
  • Eメール
  • ポッドキャスト
  • ブログ
  • 看板と外部サイネージ
  • 印刷物

SaaS を含め、営業組織には DX の考えが浸透しつつあります。しかし、それを有効な戦略や戦術につなげる過程や再現性の確保は難しい現状です。

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【実践編】SaaS マーケティング

戦略のなかでターゲットやマーケティング部門として押さえる指標と、その計測データ項目を決めたら、実際に獲得施策を検討します。

前提として、ターゲットが情報収集でどんなチャネルを利用しているのかを知ることが大切です。

SaaS マーケティングの代表的な手法

このような SaaS のマーケティングにて重要な役割を占める代表的な手法を見ていきましょう。

SaaS コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングに関する情報をオンラインで提供する Content Marketing Institute は、コンテンツマーケティングを次のように定義しています。

「コンテンツマーケティングは、価値があり、関連性があり、一貫性のあるコンテンツを用いて、明確に定義された見込み顧客を引き付けて獲得するマーケティング手法です。これは、収益性の高い顧客行動を促進することを目的としています。」

つまり、SaaS の文脈においては戦略編で自社が定めたターゲットの購買体験を、パーソナライズ化されたコンテンツを用いて最大化すること。つまり、顧客ライフサイクルを一貫して、ターゲットに自社を認知してもらい、購買の動機を与え、購買活動を促すことです。

大切なのは、顧客はなぜ自社のコンテンツを消費するべきか?氾濫するコンテンツのなかで自社を特別な位置付けにする戦術は?という視点です。

だからこそ、コンテンツは画一的ではなく、顧客の購買フェーズや顧客のニーズに応じて細分化されるべきものであり、コンテンツにはパーソナライズ化が大切になります。

また、留意点は主に2つです。

  • コンテンツを作るだけではなくデリバリーを見据えた戦術とする
  • SEO 頼りではなく、ターゲットに向けたニッチなコンテンツも制作する

デリバリーを見据えた戦術とは、顧客が適切なタイミングかつ適切な手段で、適切なコンテンツを得られるようにするということです。高品質なコンテンツもセールスファネルに沿った媒体で顧客のもとに届かなければ意味がありません。

例えば、セールスファネルの大上段、つまり自社ブランドを意識していない見込み顧客に対してはホワイトペーパー(WP)や How to 記事を、サービスを認知しているが購買意欲が十分ではない顧客には、E-book や Webinar、ダウンロード可能なチェックリストなどが有効な媒体になります。

また、多くの企業でコンテンツマーケティングというとそのリソースの大部分を SEO(Google のみに視線を向けた戦術)に割く傾向にあります。ただ、SaaS においては、確度の高いターゲティングを軸に、その意思決定者に向けたコンテンツのパーソナライズ化と差別化が非常に重要です。

ありがちな施策としては SEO にてキーワードボリュームの多いところばかり狙ってしまい、カスタマージャーニーのどの段階で、誰に刺さるコンテンツなのかを認識していないケースです。ボリュームを追うばかりではなく、意思決定者へ行動を促すボリュームが少なくとも、意図に沿ったコンバージョンキーワードに着目する必要があります。

SaaS のコンテンツマーケティングは、カスタマージャーニー(顧客ライフサイクル)のすべての段階で、顧客が次の段階へ進むための手助けとなるべき戦術です。

SaaS メールマーケティング

メールマーケティングとは、購読者に対して定期的にメールマガジンやニュースレターなどを送信して、見込み客との長期的な関係性を構築することです。

SaaS におけるメールマーケティングの考え方は基本的にはコンテンツマーケティングと同様です。一貫したカスタマージャーニーをベースに、顧客とのタッチポイントを探り当て、各フェーズでの顧客体験を最大化するための施策になります。

SaaS メール マーケティング キャンペーンの開封率は約21%1)で、これはすべての業界の平均値です。この開封率を向上させる戦術をお伝えします。

SaaS メールマーケティングのポイントとして参考にしてみてください。

行動トリガーを明らかにする

図:行動トリガー(Magic Moment作成)

顧客の行動を起点とした有名な AARRR モデルをもとに考えます。新規ユーザーの獲得から収益化までを5つのステップに分解しています。

こうしたファネル内での顧客とコンテンツの接点において、顧客がどんな行動(トリガーを引く)をすることで収益に流れる次のフェーズへ進むのかを明らかにしていきます。顧客が行動するきっかけを仕掛けていくイメージになります。

メールマーケティングフローで行動トリガーを作成できると、顧客が自社のブランドに関連するコンテンツに触れることができ、他社では得られない特別な体験を得ることができます。

紹介キャンペーンの展開

紹介キャンペーンは、新しい見込み顧客にリーチし、ビジネスを継続的に成長させる方法として有効です。マーケティングのファネルから離脱してしまった顧客との接点を作る観点からも推進する企業も多いです。

特徴として、広告などの施策と比べて低コストでブランドへのロイヤルティを形成できる傾向があることです。SaaS ビジネスに欠かせないロイヤルティ(LTV)ベースのビジネスの成長に貢献できる点からも検討したい戦術になります。

獲得コストと収益に影響する SaaS のマーケティングでは、 LTV/CAC を最適化していく観点からも有効な手段の1つです。

オンボーディングに注力する

オンボーディングプロセスでのメールマーケティングは SaaS にとって大切です。サービス開始直後の手厚いサポートなどのオンボーディング体験(顧客体験)が向上すれば、解約率を下げ(顧客維持率を上げ)、LTV の向上につながります。

マーケティングにとってもこのオンボーディングのプロセスに関わることで、ユーザー行動などをもとにデータドリブンなターゲットの再編にも活かすことができるメリットもあります。

実際、オンボーディングメールの効果は高いと言えます。

clevertap社によると、例えば、オンボーディング時に顧客が受け取る「Welcome mail」の開封率は57.8%と、通常のマーケティングメールより2倍以上の開封率になっています。 2)

また、エンゲージメントは33%向上し、通常のマーケティングメールよりも320%多くの収益を生み出すと推計されています。

ここでのテーマもパーソナライズ化です。例えば、SNS やリファラルなどオンボーディングプロセスに至った経緯で分岐させたそれぞれのメールパターンを作っておくなどしましょう。

もちろん、複雑な機能を紹介するメールではなく、ユーザー視点のメリットに焦点を当てることも忘れてはいけません。

常に顧客視点を忘れない

顧客セグメントがあって、ワークフローがどれほど適切に自動化されていたとしても、ユーザーに関連性のある魅力的なコンテンツを提供できていないのであれば意味がありません。

だからこそ、画一的なコンテンツでもなければ、自社視点でサービスを説明するコンテンツも不十分になります。

顧客はなぜ自社のコンテンツを消費するべきか?」を常に考えるようにしましょう。

「サービスで何ができるかではなく、どう役立つか」「どのような情報が顧客ビジネスのボトルネックを砕いていくか」の視点を大切に、ユーザーペルソナごとに、ケーススタディやダウンロード資料、同じ立場の顧客からのレビューなどのコンテンツを配信するようにしましょう。

他にもデジタルマーケティングで活用可能な考え方や Tips などを以下の記事で解説しています。

あわせて読みたい:デジタルマーケティング成功の要諦

SaaS マーケティングの KPI

主に SaaS のマーケティングで定常的に計測するべき指標を紹介します。

CAC(顧客獲得単価)

CAC とは、Customer Acquisition Cost の略です。ある一定期間において顧客一人獲得にかかる総コストを表したもので、広告費、通信料といったマーケティングコストや交通費、人件費といったセールスコストを含みます。

CAC はマーケティング費用がどれだけ効率的に新規顧客の獲得に貢献したかを理解することができるため、マーケティングの KPI とすることが有効です。特に、マスではなく明瞭なターゲットに向けたマーケティング施策では、投資収益率が PDCA の要とも言えます。

例えば、この値が低ければ低いほど、より効率的にマーケティング費用を使い、顧客を獲得できているということを意味するため、新規顧客獲得におけるマーケティング施策の効率性を把握することができます。

顧客獲得チャネルや自社のサービス、ターゲットごとの CAC を算出することで、どのようなマーケティング・営業活動が効率的に利益を生み出しているのかを把握することができ、自社の利益を生み出す戦略の策定にも有効に活用できます。

LTV(顧客生涯価値)

LTV ( Life Time Value ) とは、「顧客生涯価値」と訳され、顧客が自社と取引を始めてから終了するまでの間に、どれほどの利益がもたらされるかを示す指標です。

LTV の数値が高いということは、顧客が自社のサービスやブランド、サポートに満足しており、ファン化している状態であり、自社に資金を投じやすい状態であると判断できます。

特に、SaaS では収益が累積的に積み上がっていくモデルであるため、投資コストを回収し、利益を上げる観点からも SaaS の定量的な指標として重要視されています。

LTV は一般的に、既存顧客を総計または商材、顧客セグメントごとに計算するもので、ビジネスの収益予測やサービス/ブランドへのロイヤルティ計測の指数としても活用可能です。

MRR (月次経常収益)

MRR とは、Monthly Recurring Revenue の略で、月ごとに繰り返し得られる収益のことを指します。初期費用など1度限り発生する収益は除いて、ある月に定常的に発生する収益を表す指標です。

MRR は成長性を示す指標として最もステークホルダーから重要視されます。また、MRR の成長を率として把握するため、SaaS Quick Ratio も活用されます。

Churn Rate(解約率)

Churn Rate (解約率)とは、ある一定期間にサービスを解約したり、有料会員から無料会員にダウングレードした顧客の割合のことです。

SaaS ビジネスが成長するには、解約率は重要な収益ドライバーになります。解約率が高ければ MRR も LTV も悪化します。まさに、解約率は SaaS ビジネス成長の要とも呼べる指標です。

解約率を左右する要因を簡潔に表すと、ロイヤルティです。それも、製品への満足度だけではなく、顧客が自社とつながることで得られる体験や自社ブランドへの愛着、ファン度が大切です。

つまり、解約率の改善にて欠かせないのはカスタマーエクスペリエンス(CX)の向上です。

自社と顧客との接点で生じる顧客が購買時に得られる体験やオンボーディングでの手厚いサポート、最新の情報の提供などを通じて、積極的に成功体験を作ることが重要です。

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導入事例:https://www.magicmoment.jp/academy/category/case/

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《引用文献表》

1)INTUIT mailchimp, Email Marketing Statistics and Benchmarks by Industry,
https://mailchimp.com/resources/email-marketing-benchmarks/
2)clevertap, Customer Onboarding Emails: Best Practices, Examples, & Ideas to Hook New Mobile Users. https://clevertap.com/blog/onboarding-emails-best-practices/, (参照 2023-1-31)