サブスクリプションシフト 売り切り型から変わるべき営業プロセス【ウェビナーレポート】
- サブスクリプションで成功するためには、多くの機能を変えていく必要があり、結果約9割がサブスク事業に失敗しています。
- 成功のために、顧客獲得型営業からエンゲージメント型営業へと、営業プロセスを変革することが必要です。
- 営業プロセス変革のために、合意形成のプロセス=型を作ることが重要です。
Magic Moment では『サブスクリプションシフト-売り切り型から変わるべき営業プロセス-』のウェビナーを開催しました。
SaaS やサブスクリプションビジネスへの立ち上げ、変更を検討されている企業様も多いのではないでしょうか?
昨今の時代の変化により、売り切り型の営業プロセスから変革しなければ今後ビジネスを成功させることは難しいでしょう。
本記事では、サブスクリプションシフトにおいて変革が必要な要素は何か、その中でなぜ営業プロセスの変革が重要なのかについて、ウェビナー(セミナー)内容の一部を紹介いたします。
目次
サブスクリプション業界の現状
サブスクリプションビジネスは、コロナ禍をモノともせずに大きく伸びています。
株式指標でも TOPIX と比較しても圧倒的に成長しているのが SaaS 業界です。
プロダクト販売モデル
従来のプロダクト販売モデルは売上=過去の数字の集計で、毎月0から積み上げていかなければいけないフロー型のビジネスモデルで、モノが売れない時代において毎月、毎年成長をし続けるのは困難になりつつあります。
サブスクリプションモデル
一方でサブスクリプションモデルは、毎月の売上を積み上げるモデル(ストック型)のビジネスのため、ARR=今後1年間の売上といった先の数字が読みやすいビジネスモデルになります。
そのため多くの企業がサブスクリプションモデルへのシフトを検討しています。
消費者のニーズが大幅に変わってきている
サブスクリプションモデルのニーズが高まっている背景には、消費者のニーズが大幅に変わってきていることが影響しています。
消費者のニーズが、所有(モノ)から利用(コト)へシフトしており、企業は物が売れない時代を迎えて、プロダクトアウトからマーケットイン(顧客体験重視)への移行が不可避となっています。
サブスクリプションで成功するためには、1日でも長く続けてもらえるかが何より重要で、企業としては価値を提供し続け、「満足」させ続けなければ成り立ちません。
サブスクリプションシフトへは全てを変えないといけない
サブスクリプションで成功しようとすると、基本的に多くの機能を変えていく必要があります。
しかしながら、コンサルティングファームの株式会社クニエが、サブスク事業経験者500名に対して実施したサブスク事業の実態調査によると、現実的には、91%のサブスク事業で最も重要な KPI の達成率が100%に満たないという結果がでています。これは、9割がサブスク事業に失敗しているということです。1)
日経新聞などでも、サブスクの撤退が多い印象を受けます。上述の変えていかないといけない点が変えきれていない、きちんと売る力が無いところが課題だと言えます。
サブスクリプションビジネスは、顧客の価値を理解しながら営業しないと成功しない、難易度の高いビジネスモデルです。
成功に導くには、ビジネスゴールに基づいた戦略立案が必要です。その上でプロダクト、サービスを磨き、販売・サポート、それを支えるシステム、そして会社のカルチャーも変えていかなければいけません。
サブスクリプションは多様なデータを取得でき、様々な戦略オプションが出てきます。
しかし新規顧客を獲得しないと成長戦略は絵に描いた餅となってしまうため、営業活動およびそのプロセスが重要になります。以下では、営業および営業プロセスに絞った内容をご説明します。
なぜ営業プロセスの変化が必要なのか?
そもそも、なぜ営業プロセスに変化が必要なのかというと、消費者の購買行動が変化しているからです。
従来のファネル概念では、顧客が買いたい商品について調べることができなかったため、営業が内容を伝えるだけでも価値がありました。しかし現在では、そういった商品の情報がネットに点在するようになったため、営業担当者はもっと機動的に動く必要があり、フライホイールという概念にあるように、顧客と企業との間の情報の非対称性が緩和されてきています。
現在では情報そのものの価値よりも、顧客が顧客を呼ぶ動きが重要であり、営業の概念が変化しつつあります。
顧客獲得型営業からエンゲージメント型営業へのシフト
上述のように、所有から利用へのシフトや、フライホイールの概念への変化、訪問での商談からオンライン商談へのシフトなどから、従来の顧客獲得型営業からエンゲージメント型営業へのシフトが必要です。
顧客獲得型の営業とエンゲージメント型の営業では、
- そもそものビジネスゴール
- 手段
- 案件判断
- 営業姿勢
- 評価されるトップセールス
の点で全く違うものです。
獲得型営業組織 | エンゲージメント型営業組織 | |
---|---|---|
ビジネスのゴール | 今期の売上を最大化すること | 将来的な売上も見据えて 最大化すること |
手段 | 新規案件を獲得する(単発的) | 顧客を知り、関係性を構築する (継続的) |
案件判断 | 価格交渉など手段を駆使して 受注につなげる | LTVを望めない案件は受注しない |
営業姿勢 | 顧客の要望に応えるように 価値を提案する | 顧客も気づいていないような 価値を提案する |
評価される営業担当 トップセールス | 新規受注が最も多い | 継続案件が最も多い リピート・紹介してもらえる |
顧客獲得型営業が直面する課題
顧客獲得型の営業が直面する課題としては、以下の4つが挙げられます。
- 営業メンバーが短期的な自社の目標値に目がいき、売った後すぐに解約になる。酷い場合は訴訟になる。
- 新規契約が重視されるあまり、値引きなど不利な条件での販売となってしまい、結果的に利益が出ない。
- 焼き畑的な営業となり、新規開拓が続き、組織全体が疲弊する。
- 正しい評価ができず、真に活躍する営業マンのモチベーションが下がる。
したがって、営業にとっても顧客にとっても価値を提供できる営業組織およびプロセスの構築が大切になります。
営業プロセス全体の考え方を変革する
価値を提供できる営業組織を構築していくにあたり、営業プロセス全体の考え方を変革することは必要不可欠です。
3つのプロセス
エンゲージメント型の営業組織を作るには、大きく分けて戦略プロセス、業務プロセス、人材プロセスの3つのプロセスがあります。
戦略プロセス
- 組織の立ち上げ、再編成
- リード獲得からその後のアカウント拡大までの営業プロセスの全体設計
- 獲得視点ではなく LTV 視点でのカバレッジを最適化
業務プロセス
- 課題に応じた適切なツールの導入
- 経営指標可視化ソフトを導入し、重要な経営指標の可視化
- データからインサイトを発見し、アクションを策定
人材プロセス
- ミーティングや勉強会などで組織内へのエンゲージメント思考の浸透徹底
- インバウンド営業の生産性向上とアウトバウンド営業のリソース強化
エンゲージメント組織作りにはかなり大きな変革が必要で、TOP の意思決定が不可欠です。
「顧客エンゲージメント主義」の組織を作るという経営の意思決定が最も重要だと言えます。
短期的に取り組むハードの変革(見える化→標準化/最適化)では、
- 適切なツールの導入
- 自社のデータを取得
- KPI を定め PDCA を回す
といった見える化を通じた標準化、最適化が求められます。
一方、中長期に取り組むソフトの変革では
- 採用・育成の仕組み
- インセンティブ
- 組織と個人の主体性
など顧客エンゲージメント主義の組織形成に取り組みます。
以下では、この中でも業務プロセスについてどのように取り組むべきかを紹介します。
分業を通じて効率的な体制を構築する The Model 型のプロセスが主流に
サブスクリプションモデルへの移行は、営業にとっても大変です。というのも、プロダクト販売をサブスクリプションに切り替えたことで単価は下がり、業務量が増える営業工数は大幅に増加するからです。したがって営業の効率化は必要不可欠になっています。
そのため、サブスクリプションモデルにおいては、リードを獲得するマーケティング、BANT などフレームワークを用い、リードの優先順位を付けた上で次に繋げるインサイドセールス、商談を通じた提案〜クロージング、受注までの流れを担当するフィールドセールス、利用後の対応をするカスタマーサクセスで作業を分担して、営業の分業型体制を構築し効率化を図る The Model 型が、BtoB など法人を中心に主流となっています。
なぜ分業型になっているのかというと、顧客起点の営業プロセス構築が必要だからです。
顧客は細かい情報を多く見ているため、目標達成のためには顧客がどういう状況なのか把握する必要があります。その上で、欲しいタイミングで欲しい情報を適切に提供していくことが大切です。
営業組織組成 Step
とはいえ、一朝一夕に顧客起点の営業プロセスを構築することはできません。営業組織の組成にはステップがあります。
まず、営業組織全体のオペレーションを可視化します。そこから営業担当者ごとの営業スピードや移行率を測定します。その中で、トップ営業の行動の特徴や必要な活動量を言語化し、営業の型にします。そこから採用で求める水準や育成・採用プロセスを定めます。
このように一つ一つをこなすことで、筋肉質な営業組織を作れるようになります。営業組織が作れるようになると、データに基づいて受注率、LTV、アポの設定件数、商談、受注に加えて、継続された時の追加受注まで予測します。
営業プロセスの変革をどう解決するか
上記のような、営業プロセスの変革の解決のために SFA や CRM を導入する企業が多いものの、顧客管理のみのために使われており、成果に繋がっていないのが現実です。
以下のデータを見ても、導入企業の約8割が「定着している」と言っているものの、実際売上拡大や顧客増加といった成果には結びついていません。つまり、売上や受注率を高めるためには、別の方法や施策の実行が必要です。
CRM システムが成果に寄与しない原因として、
- 組織の分断
- データの分断
- データの抜け・漏れ
の3つが挙げられます。
このような課題に対処するため、近年特に海外で台頭してきたのが Sales Engagement Technology (SET) です。これまで人の手によって時間をかけてデータの入力・加工してきた工程が、より正確かつ高いレベルで実現できるようになります。
日本でも、これからの数年間で SET が普及すると考えられています。
合意形成のプロセス=型を作る重要性
顧客との関係を深めるためには、SET などツールを活用しつつ、営業の質を改善する必要があります。CRM 項目を埋めるためのヒアリングをしてしまいがちですが、本来であれば営業は、顧客のヒアリングやアピールをしながら合意を形成していくものです。
顧客との合意を形成していく営業の型を作ることが、営業組織にとって不可欠になっています。
型の有無で違いは現れる
型がない営業組織では、顧客へのアプローチややりとりも、経験を通じた属人性の高い暗黙知と化しており、組織としての学びが無くなります。
営業人材の育成については多くの企業が課題として捉えている点で、OJT での自己学習がコロナ禍で困難となっている中、プロセスを型とすることで体系的に学習できるようになります。
営業人材の評価も、ノルマの達成度合いよりも顧客との関係を深める行動ができているか、が重視されるようになります。
型がない営業組織 | 型がある営業組織 | |
---|---|---|
社内の営業ノウハウ | 担当者が営業経験を 重ねるたびに暗黙知化 | 組織の学びとして型 に言語化 (形式知化) |
営業人材の育成 | OJT を重ね自己学習 | 型 をベースに、体系的・効率的に学習 |
営業人材の評価 | 電話数やアポ数・受注した件数など 定められたノルマを満たしているか | 顧客の理解・顧客との 関係性を深める行動ができているか |
個別の案件の状況 | 担当者に確認しないと分からない | 型 の内容を見れば一目瞭然 |
現場の営業姿勢 | しばしば KPI を達成するための 強引な営業活動 | 顧客との関係性を深めるための 営業活動に集中 |
部門間の案件情報共有 | 情報共有の漏れが発生 顧客とのコミュニケーショントラブルが火種となる | 型 を参照したシームレスな情報共有 |
営業成績の偏り | 創業者やトップセールスなど 受注できる人間が限られる | 型に従った行動が出来ていれば 受注しやすくなる |
アメリカ製造業のサブスクリプションシフトの成功事例
Honeywell は、顧客ニーズの変化への対応と新しい収益の獲得のため、売り切り型のビジネスモデルからビル、航空機、工場、インフラなどを IoT 化し、生産性の向上、エネルギーの効率化、メンテナンスコストの削減といった様々なサブスクリプションサービスを提供しています。
同社は組織を大幅に変え、ソフトウェア企業への転身を名言しました。サブスクリプションへの転換に際し、社内の半分程度の人材を社外から雇い入れ、サブスクリプションビジネスが回っていく仕組みを作りました。同社の成功事例におけるベストプラクティスは以下の4つです。
- SW 企業への転身
- プラットフォームではなくアプリケーションを提供
- 中立な立場で市場を開拓
- 世界で350名の営業部隊
顧客が求めているのは、あくまでもある特定の課題を解決するソリューションです。その課題を解決するために、具体的なアプリケーションを提供しました。
世界中で350名の営業部隊を作り、彼らが効率的に仕事ができるよう、ツールやサポートを導入して環境作りをしています。
これらのサポートもあり、Honeywell は大きく売り上げを伸ばしています。
まとめ
どんなに企業がサポートしても、営業の日々の活動が結果を左右するのが現実です。
1か月間にパイプラインに追加される商談の数と、売上目標の達成率の間には相関が見られます。HubSpot Research の調査によると、1か月間の商談数が50件以下の企業では、収益目標を達成できない割合が72%なのに対し、51~100件の会社では15%、101~200件の会社ではわずか4%にとどまります。
つまり、いかにパイプラインを増やすかが重要となります。
パイプラインを増やすためには、営業担当者および営業組織に再現性があることが重要であり、そのためにやはり営業プロセスを型化することは必要不可欠と言えるでしょう。
Magic Moment では、営業プロセスの型化を実現するプロダクト「Magic Moment Playbook」を提供しております。実際に成果を10倍にした事例なども創出しております。
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《引用文献》
1)株式会社クニエ. “なぜ91%のサブスク事業は失敗するのか?サブスク事業に関する実態調査レポートを公開~500名の調査結果による「失敗するサブスク17の特徴」~.2021-03-09. (更新 2023-06-19). https://www.qunie.com/release/20210309/, (参照 2021-11-25).
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