TARGETED LEAD ENRICHMENT
リードエンリッチメントという考え方。必要な情報を獲得する
空欄を埋めるためではない。狙う企業、会いたい役割、接触する理由、到達可能性のうち、次の営業行動を変える情報だけを先に定めて獲得します。
CRMを開くと、企業名、業種、従業員数、売上、所在地、Webサイトが埋まっています。
データは整って見えます。
しかし営業からは、別の質問が来ます。
この会社の、どの部門へ連絡すればよいですか。
今、話す理由はありますか。
誰ならこのテーマを判断できますか。
連絡してよい経路はありますか。
企業情報が豊富でも、この質問に答えられなければ新しい商談は始まりません。
リードエンリッチメントは、CRMの空欄を増やさず埋める技術として語られます。けれど、BtoBの新規開拓で必要なのは、項目数ではありません。
次の営業行動を変える情報が、足りているか。
そこから逆算します。
COMPLETE RECORD ≠ ACTIONABLE LEAD
企業レコードが埋まっても、会話は始まらない。
一般的なデータエンリッチメント
HubSpotはデータエンリッチメントを、連絡先や企業レコードの項目を自動で補完し、完全で新しい状態に保つ機能として説明しています。氏名と業務用メール、または企業ドメインを使って、商用データセット、第三者提供者、Web上の公開情報から検証済みの業務情報を探し、CRMの項目を更新します。[16]
用途として、フォームを短くする、リードスコアリングを改善する、役職・業種・企業規模でキャンペーンを絞る、ワークフローを起動する、といった例が挙げられています。[16]
Clayは、複数のデータ提供者を順番に照会し、企業規模などの欠損を補う方法や、標準データベースにない情報をAIによるWeb調査で見つける方法を提供しています。[17]
これらは、既にあるレコードを詳しく、正確に、使いやすくするエンリッチメントです。
BtoB新規開拓では、もう一つの使い方があります。
レコードを起点にするのではなく、狙う顧客と営業目的を先に置き、その目的に必要な情報だけを獲得する方法です。
「持っているデータ」ではなく「必要な判断」を先にする
たとえば、人事部門向けの新サービスを売りたいとします。
企業データベースから、従業員1,000人以上の企業は抽出できます。しかし、その後には多くの分岐があります。
- 人材採用の責任者か、人材開発の責任者か
- 本社一括か、事業部ごとの判断か
- 採用数が増えているのか、配置転換が課題なのか
- 既に類似サービスを導入しているか
- そのテーマを今扱う理由があるか
- 連絡してもよい業務上の経路があるか
全部を調べる必要はありません。商材と商談条件に関係する項目だけでよいのです。
INFORMATION CONTRACT
調査前に決める、五つの必要情報。
この五つを決めると、「あると便利な情報」と「ないと動けない情報」を分けられます。
会社の創業年が提案に関係しないなら、今は要りません。決裁者の個人名を知っても、その人へ連絡する適切な方法と利用目的がなければ、行動には使えません。採用拡大が購買のきっかけになる商材なら、従業員数の静的な値より直近の求人変化が重要です。
情報の価値は、珍しさではなく、判断を変えるかで決まります。
企業、人物、シグナル、到達、反応を分ける
リードエンリッチメントで扱う情報は、五つの層に分けられます。
企業
業種、規模、所在地、事業内容、財務、利用技術など。対象市場に入るかを判断します。
人物・役割
会いたい部門、役割、職責、判断への関与。名刺にある肩書だけでなく、今回のテーマを誰が扱うかを見ます。
シグナル
採用、組織変更、IR、サービス導入、事業方針など、接触理由やタイミングを変える事実です。シグナルがあっても、購買意向を断定してはいけません。会話を始める仮説として使います。
到達可能性
業務上利用できる連絡経路があり、適切な目的と条件で相手へ届く可能性があるか。連絡先が存在することと、利用してよいことは別です。
反応
届いた、届かなかった。関心がある、今ではない、担当が違う、対象外だった。実際の反応は、次の接触と対象選定を変える情報です。
FIVE LAYERS
後ろの情報ほど、実行しなければ得られない。
データベースの空欄補完は、主に企業・人物・シグナルを整えます。
狙った顧客へ届くためのエンリッチメントは、到達可能性と反応まで扱います。ここで初めて、「この情報を使って営業が動けるか」を確かめられます。
何でも集めるほど、良いわけではない
情報を増やすと、維持する責任も増えます。
誰が更新するのか。古くなったときにどう扱うのか。誰が閲覧できるのか。どの目的で利用できるのか。削除や利用停止の申し出へどう対応するのか。
個人情報保護委員会のガイドラインは、利用目的の特定と制限、適正取得、利用目的の通知・公表、データの正確性、安全管理、第三者提供などを事業者の義務として整理しています。[18]
情報がWebで見つかることだけを理由に、自由に収集・利用できるとは限りません。個人情報か個人関連情報か、取得元との契約、第三者提供、外国での取扱い、業界固有ルールなどで確認事項は変わります。
HubSpotも、エンリッチメント機能の利用者に対して、適用法令、通知、オプトアウト、同意・許諾を含む義務の確認を求め、個別の法的助言は自社の法務担当へ確認するよう案内しています。[16]
この記事は法的助言ではありません。実際の設計では、自社の法務・個人情報保護・情報セキュリティの責任者へ確認してください。
取得前に決める八つのこと
- 01利用目的
営業対象判定、連絡、商談準備など、何に使うかを具体化する。
- 02対象と除外
狙う企業・役割と、既存顧客、競合、連絡禁止先などを分ける。
- 03必要最小限の項目
集められるからではなく、行動を変える項目だけにする。
- 04取得元と利用条件
情報源、第三者提供、利用規約、国外取扱いを確認する。
- 05正確性と更新日
古い情報を事実として使わず、検証状態を残す。
- 06アクセス権
誰が閲覧、出力、更新できるかを限定する。
- 07配信停止・削除対応
相手の意思を次の活動へ確実に反映する。
- 08成果との接続
項目が増えたかではなく、接触、反応、商談が変わったかを見る。
この確認を後回しにすると、使えないデータと管理負担だけが残ります。
Revenue Platformの「リードアセット」
Revenue Platformの付帯サービス「リードアセット」は、一般的な企業リストの空欄補完とは違う位置づけです。
公式サイトでは「リストのエンリッチメントではなく、リード=人のエンリッチメント」と説明しています。連絡先だけの名簿ではなく、採用・IRなどの買いシグナルと反応データで検証した「到達可能なリード」を納品し、一度つくれば顧客の恒久資産として残す考え方です。[19]
顧客が指定するのは、次の内容です。
- 狙う企業
- 会いたい部門・役割
- 商談や接触の目的
- 必要な情報
- 除外条件
- 利用上守るべき条件
その条件に沿って情報を獲得・検証し、契約した範囲を顧客資産として残します。固定の項目、件数、価格、納期ではなく、公式サイトではリード一件あたりの従量・個別見積りとされています。[19]
FROM REQUEST TO ASSET
欲しい情報を決める。到達と反応を確かめる。自社に残す。
顧客が決める
対象企業
会いたい役割
必要情報
利用目的・除外条件
獲得・検証
企業と人物
買いシグナル
到達可能性
反応データ
顧客に残る
契約したリード情報
検証状態
次の営業判断
継続利用できる資産
公開していないのは、どの情報源をどう組み合わせるか、どの順序で調べるか、到達をどう判定するかといった内部の実行方法です。
顧客が判断するために必要なのは、方法のレシピではありません。自社が何を指定でき、何を受け取り、何に使えるかです。
リードアセットと商談創出は、目的が違う
リードアセットは、狙った人物と検証情報を自社へ残したいときに使います。
商談まで実行を任せたい場合は、Revenue Platformの中核サービスと組み合わせます。Revenue Platformは、対象市場、商談条件、除外条件、予算上限を合意し、AIと人が接点をつくり、条件に合う日時確定済みの商談を成果として届けます。[19][20]
| 欲しい結果 | 選ぶ対象 |
|---|---|
| CRMの企業・連絡先項目を補完し続けたい | 一般的なデータエンリッチメント |
| 狙った企業の、会いたい人物と必要情報を資産にしたい | リードアセット |
| 対象への接触から条件に合う確定商談まで任せたい | Revenue Platform |
| 資産も商談も必要 | リードアセット+Revenue Platform |
同じ「エンリッチメント」という言葉でも、納品物と成果地点は違います。
最初の依頼書は、一枚でよい
リードエンリッチメントを始める前に、次の一枚をつくります。
- 対象企業の条件
- 会いたい部門・役割
- 今回の営業テーマ
- 接触理由を変える情報
- 必要な到達情報
- 対象外・連絡禁止の条件
- 取得情報の利用目的
- 営業が次に行うこと
すべての項目を埋める必要はありません。分からないものを明示することが、調査の始点になります。
狙った顧客の、狙った情報を、狙って獲得する。
少し重ねすぎに聞こえる表現ですが、意味は単純です。
情報から顧客を探すのではなく、会いたい顧客から必要情報を決める。
それが、新規開拓で使えるリードエンリッチメントです。
国内の営業リスト・企業データサービスとの違いから見たい方は、こちらもご覧ください。
リストツール、日本市場のプレイヤー比較。継続契約は何を買っているのか
獲得済みリードを商談まで動かす方法は、こちらで解説しています。
Sources
[16] https://knowledge.hubspot.com/records/get-started-with-data-enrichment — HubSpot データエンリッチメント [17] https://www.clay.com/use-cases/data-enrichment — Clay Data Enrichment [18] https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku — 個人情報保護委員会 個人情報保護法ガイドライン(通則編) [19] https://revenueops.jp — Revenue Platform 専用サイト [20] https://magicmoment.jp/revenue-platform — Magic Moment Revenue Platform 公式ページ
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狙った顧客に、何が足りないか整理します。
対象企業、会いたい部門・役割、接触理由、必要な情報、利用目的、除外条件を伺い、企業リストではなく営業行動に使えるリード資産のつくり方を整理します。