CONTINUE / UPDATE / STOP / REPLACE
好調な施策、不調な施策。どう判断するか
直近のリード単価だけで、良い・悪いを決めない。増分効果、限界ROI、自社の損益分岐点をそろえ、続ける、変える、止める、置き換えるを判断します。
先月まで好調だった検索広告の獲得単価が上がった。展示会では名刺が集まったが、商談が少ない。ウェビナーの申込数は目標を超えたのに、営業から「今すぐ話せる人がいない」と言われた。
会議では、施策ごとに色が付きます。
- 緑なら継続
- 黄色なら改善
- 赤なら停止
分かりやすい一方で、何を直すべきかは分かりません。
リード単価が悪いから広告を止める。商談化率が悪いからイベントを減らす。メールの反応が悪いから件名を変える。数字に反応してはいても、原因を切り分けていないからです。
Gartnerが2024年にマーケティング責任者418人へ行った調査では、87%が過去12か月にキャンペーンの成果上の問題を経験していました。45%は成果不振を理由にキャンペーンを早期終了することが「時々、頻繁に、または常に」あったと回答しています。[5]
早く止めることが正しいとは限りません。惰性で続けるのも同じです。
判断した後に、次の施策が良くなる事実が残るか。
そこまでを施策評価に含めます。
FOUR DECISIONS
「良い・悪い」の二択をやめる。
成果も学びも増え、追加一件の費用が許容範囲にある。
需要は見える。対象、訴求、経路の一部を直せる。
十分に観測しても、成果も次の判断材料も増えない。
需要はあるが、実行区間が埋まらず商談まで進まない。
最初に「何を成果とした施策か」を戻す
広告はクリックを生む。展示会は会話と名刺を生む。ウェビナーはテーマへの関心を確かめる。コンテンツは理解と検索接点をつくる。
どれも役割があります。
問題は、役割を越えた成果まで同じ指標で求めることです。認知施策を短期商談だけで切れば、将来の需要を失います。反対に、商談創出の施策を申込数だけで評価すれば、営業成果のない活動を延命します。
まず、施策の終了地点を決めます。
| 施策の仕事 | 主な途中結果 | 次へ渡す条件 |
|---|---|---|
| 認知 | 到達、想起、指名検索 | 対象市場での理解が増えた |
| 関心形成 | 閲覧、参加、資料請求 | 課題やテーマへの関心が確認できた |
| 接点獲得 | 企業名、担当者、許諾済み連絡先 | 個別に連絡できる状態になった |
| 商談創出 | 反応、課題、検討条件、日程 | 営業が合意条件を満たす商談を受け取れる |
施策が悪いのではなく、期待した仕事が違うことがあります。
ROIを測る前に、「増えた成果」を決める
管理画面に売上やコンバージョンが付いていても、その施策が成果を生んだとは限りません。施策がなくても起きた成果を含むことがあるからです。
IABはインクリメンタリティを、マーケティングがなかった場合と比べて、施策が追加で生んだ成果を測ることと定義しています。高額な予算配分や経営へのROI説明には、信頼できる反実仮想、偏りの制御、偶然と効果の分離が必要だとしています。[24]
Google 広告のコンバージョンリフトも、広告を見た群と見なかった群を比較し、コンバージョン数・価値の増分、増分獲得単価(iCPA)、増分広告費用対効果(iROAS)を測ります。[22]
評価する順番は、次の通りです。
MEASURE WHAT CHANGED
接点への貢献と、成果を増やした因果を分ける。
BtoBでは受注まで時間がかかります。そこで、施策ごとに一つの数字へ押し込まず、同じ対象企業群を次の三段階で追います。
- 先行結果:対象企業への到達、反応、有効商談、営業受入
- 中間結果:創出パイプライン、提案進行、案件化
- 最終結果:受注、増分売上、増分粗利、回収期間
「リード数では良い」「売上では悪い」と数字が争うときは、成果地点と観測期間がそろっていません。
世界の実務は、三つの測定方法を重ねる
一つの測定方法ですべてを説明しようとすると、判断を誤ります。
- アトリビューションは、どの接点を通ったかを速く診断する
- 実験は、施策がなければ起きなかった増分を検証する
- **マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)**は、複数チャネルと外部要因を含めて予算全体を見る
IABの2025年版MMMガイドは、重要な意思決定ではMMMを予算ポートフォリオ、地域・ホールドアウト・A/Bテストを因果検証、アトリビューションをファネル把握に使い、少なくとも二つの測定シグナルで判断を裏付けるよう勧めています。[25]
TRIANGULATE THE DECISION
異なる測定を組み合わせ、最後に財務基準で判断する。
過去のROIと、次の一円のROIを分ける
過去平均のROIが高くても、追加予算が同じ効率で働くとは限りません。対象市場が狭くなり、広告接触が飽和し、同じ一件を得る費用が上がるからです。
Googleのマーケティング・ミックス・モデリング「Meridian」は、過去の平均成果を見るROI、投資額と増分成果の関係を見るレスポンス曲線、次の追加予算から得られる効果を見る限界ROI(mROI)を分けています。追加配分には、過去平均より限界ROIを使う考え方です。[23]
ROI IS NOT ONE NUMBER
評価する数字と、次に配る数字は違う。
ベンチマークは、業界平均より自社の損益分岐点から作る
「BtoB広告ならROAS何倍が正解か」という共通値はありません。粗利率、商談からの受注率、回収可能期間が違うためです。外部ベンチマークは異常値を見つける補助線にとどめ、継続・停止の基準には自社の採算を使います。
優先順位は次の通りです。
- 自社の損益分岐点:この商品、この商談条件で許容できる上限
- 自社の過去実績:同じ市場、同じ成果地点、同じ観測期間の中央値と幅
- 対照実験・増分測定:施策が追加で生んだ差
- 外部ベンチマーク:業界、国、企業規模、チャネル、期間が近い値
たとえば、一件受注したときの粗利が300万円で、その30%を新規顧客獲得に使う場合、許容顧客獲得費は90万円です。商談からの受注率が20%なら、許容商談単価は18万円です。
これは推奨相場ではなく、計算方法を示す例です。実際には営業人件費、導入費、継続率、追加原価、回収期間も含めて自社基準を決めます。
この18万円を外部平均と比べる前に、同じ商談条件での実績と比べます。平均値だけでなく中央値、上位・下位の幅、件数も見ます。少数の大型受注で平均が跳ねた施策を、そのまま再現可能と判断しないためです。
成果が鈍った場所を、四つに分ける
一つ目は対象です。
会いたい企業へ届いているか。企業規模や業種だけでなく、部門、役割、課題まで合っているか。対象外の相手が多いなら、広告文を変える前にターゲットを直します。
二つ目は訴求です。
相手が今動く理由になっているか。製品の機能を説明しても、相手の優先課題とつながっていなければ反応は増えません。
三つ目は経路です。
その相手へ届くチャネルか。検索しない人を検索広告だけで待っていないか。メールが届かない相手へ、同じ送信を続けていないか。
四つ目は実行です。
反応した後、誰が意味を読み、個別に返し、商談条件まで進めるか。ここが空いていると、対象も訴求も合っているのに数字は止まります。
DIAGNOSE BEFORE YOU CUT
変える場所を間違えると、次も同じところで止まる。
成果がない期間にも、学びが増えているか
施策は短期成果だけでなく、次の判断材料を生みます。
- どの企業が反応したか
- どの役割には届かなかったか
- 何に関心があり、何には関心がなかったか
- 今ではない理由は何か
- どの条件なら商談を受けられるか
この情報が増えているなら、数字が弱くても改善余地があります。
反対に、配信数と開封率しか残らず、対象企業の反応理由が分からない。毎月同じ総括をしている。担当者が変わると学びが消える。この状態では、施策費だけでなく学習機会も失っています。
OUTCOME × LEARNING
次の予算は、成果と学びの両方で決める。
継続、修正、停止、置換の条件
継続する
合意した成果が増え、追加一件を得る費用が採算内にあり、同じ条件で再現できる。単に前月比が良いだけでなく、対象市場の残りと営業の受入能力も確認します。
修正する
需要や反応はあるが、対象、訴求、経路の一部に原因が見える。変更点を一つに絞り、元の施策と比べます。
Google 広告が既存キャンペーンから変更案の下書きを作り、適用前に影響を検討できるようにしているのは、変更点と比較対象を残すためです。[21] 他の施策でも同じで、同時に全部を変えると何が効いたか分かりません。
停止する
決めた観測期間を終えても、成果が出ず、反応理由も増えず、修正仮説もない。契約更新日や前年実績を続行理由にしません。
置換する
需要は確認できたが、反応後の実行が不足している。たとえば展示会で対象企業と会えているのに追客が止まる。ウェビナー参加者はいるのに、個別対話へ進まない。重点企業は決まっているのに、営業が接触できない。
この場合、媒体を止めるより、実行区間へ予算を移す方が合理的です。
不調施策の予算を、Revenue Platformへ移す条件
Revenue Platformは、すべてのマーケティング施策を置き換えるものではありません。広告、イベント、コンテンツが担う認知や関心形成は残ります。
移す候補は、次の三つがそろう予算です。
- 会いたい企業または保有リードが分かっている
- 営業が受け取りたい商談条件を決められる
- いまは相手へ届き、反応を受け、商談まで進める実行が足りない
Revenue Platformでは、対象市場、商談条件、除外条件、月の予算上限を顧客が決めます。活動と成果を日次で確認し、条件に合う確定商談を成果として受け取ります。[19][20]
つまり、移すのは「悪い施策の予算」ではありません。
需要はあるのに、商談まで実行されていない予算です。
REPLACE THE MISSING WORK
媒体は残し、止まっている営業実行区間を補う。
機能する接点
・認知をつくる広告
・理解を深めるコンテンツ
・接点を生むイベント
止まっている区間
・獲得リードを追客できない
・実行人員が足りない
・有効商談の条件が曖昧
条件を決めて試す
・対象企業と除外条件
・有効商談の定義
・予算上限
・日次の活動と成果
一度に全部を動かさない
不調予算を見つけても、翌月から全額を移す必要はありません。
McKinseyは予算再配分を段階的に進め、パイロットで初期の証拠と学びを得ることを勧めています。初年度の移動上限を設けた企業や、一部のブランド・市場で明確なROI目標を置いて試した例も紹介しています。[6]
BtoB商談創出なら、最初の検証を次のように切れます。
- 一つの対象市場
- 一つの商談条件
- 明確な除外条件
- 上限を決めた予算
- 営業が受け入れられる件数
- 続行、修正、停止を判断する日
これなら、既存施策を壊さずに比較できます。
会議で聞くべき六つの質問
- 01この施策の仕事は何か
認知、関心、接点、商談のどこまでを担当するか。
- 02止まったのは対象、訴求、経路、実行のどこか
一つの指標ではなく、原因を分ける。
- 03十分な観測期間を置いたか
長い検討期間を持つ商材を、短期数字だけで切らない。
- 04一件追加する費用は採算内か
平均だけでなく、追加投資の限界費用を見る。
- 05次の判断に使える事実が増えたか
反応理由、対象外、時期、役割の学びが残っているか。
- 06実行不足なら、どの予算を移せるか
未追客や人手不足へ消えていた費用を、成果条件付きで置き直す。
好調な施策は、数字が緑の施策ではありません。なぜ成果が出たかを説明でき、次の投資でも再現できる施策です。
不調な施策は、数字が赤い施策とも限りません。
成果も学びも増えないまま、前年と同じ理由で続いている施策です。
予算配分そのものから見直したい方は、先にこちらもご覧ください。
次の記事では、企業データベース、単発リスト、データ統合、実行付きサービスを同じ「リストツール」として比較しないための選び方を整理します。
リストツール、日本市場のプレイヤー比較。継続契約は何を買っているのか
Sources
[5] https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2025-02-18-gartner-survey-reveals-over-a-quarter-of-marketing-organizations-have-limited-or-no-adoption-of-genai-for-marketing-campaigns — Gartner Campaign Execution Survey 2025 [6] https://www.mckinsey.com/capabilities/growth-marketing-and-sales/our-insights/how-to-reallocate-marketing-budgets-to-drive-growth — McKinsey How to reallocate marketing budgets to drive growth [19] https://revenueops.jp — Revenue Platform 専用サイト [20] https://magicmoment.jp/revenue-platform — Magic Moment Revenue Platform 公式ページ [21] https://support.google.com/google-ads/answer/6318732?hl=ja — Google 広告 カスタムテストについて [22] https://support.google.com/google-ads/answer/12003020?hl=ja — Google 広告 コンバージョンリフトについて [23] https://developers.google.com/meridian/docs/post-modeling/roi-mroi-response-curves — Google Meridian Incremental Outcome, ROI, mROI & Response Curves [24] https://www.iab.com/guidelines/guidelines-for-incremental-measurement-in-commerce-media — IAB Guidelines for Incremental Measurement in Commerce Media [25] https://www.iab.com/wp-content/uploads/2025/12/IAB_Modernizing_MMM_Best_Practices_for_Marketers_December_2025.pdf — IAB Modernizing MMM Best Practices for Marketers
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