セールスイネーブルメントとは?意味やメリット、実践のステップを紹介
- セールスイネーブルメントとは「成果を出す営業パーソンを輩出し続ける人材育成の仕組み」。
- 特に、営業の属人化を解消できるのは、トップセールスなど一部の優れたノウハウを仕組み化し営業スキルを底上げする点で多くの企業においてメリットとなる。
- セールスイネーブルメントが注目される背景には、参入障壁の低下、顧客行動の変化、営業活動の属人化がある。
- セールスイネーブルメント、Magic Moment の取り組みとおすすめの書籍をご紹介。
中長期的な営業成果を追い求めない企業は存在しないでしょう。
どの企業も生産性・売上を上げたいと思っているはずです。そんななか、近年注目を浴びているのがセールスイネーブルメントの考え方です。これはまさに中長期的な成果を追い求める考え方で、ポイントは最適化と仕組み化にあります。
今回は、セールスイネーブルメントの意味やメリット、実践内容、ツールを紹介します
目次
また、Magic Moment では、セールスイネーブルメントを実践して、組織の誰もが売れるようになる仕組みを実装する営業支援ツール「Magic Moment Playbook」をご提供しています。実際に導入企業では育成期間2.5ヶ月分の短縮を実現しています。セールスイネーブルメントの取り組みをご検討の方はぜひこちらより詳細をご確認ください。
セールスイネーブルメントについて解説したオンデマンドウェビナーもこちらよりご覧いただけます。
セールスイネーブルメントとは?
まず、セールスイネーブルメントとはどのようなものなのでしょうか。
山下貴宏氏の著書『セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方』によると、セールスイネーブルメントとは「成果を出す営業パーソンを輩出し続ける人材育成の仕組み」であると定義されています。1)
これはテクノロジーを使った営業の最適化・仕組み化を目指すことを意味します。
そして、セールスイネーブルメントはある1つの部門やチームだけではなく、全社的に取り組む必要があります。しかし、これまでの営業成果に関わる、人材育成・研修、営業資料・コンテンツ、営業オペレーション、ツール管理・システム設計は、人事・システム・マーケティングなどの別部門で管理されていました。
これらの施策を、部門横断で一貫して設計するのがセールスイネーブルメントのコンセプトです。したがって、施策の数値化・可視化・分布図からの要因の大小の特定、改善の示唆を出すためのテクノロジーがセットになります。
Gartner によるセールスイネーブルメントの領域
Gartner によるとセールスイネーブルメントには、
- Content
- Executuin
- Training
- Coaching
- Preparation
の5つの要素があり、これらを全体設計するのがセールスイネーブルメントです。
セールスイネーブルメントのメリット
セールスイネーブルメントのメリットは、営業活動を仕組み化し、最適化すること。つまり個々人のレベルを底上げ、平準化して、中長期的な成果を目指せることです。
特に、営業の属人化を解消できるのは多くの企業にとってメリットとなります。主にそのメリットは2つあります
- 営業スキルを底上げして、平均的な営業担当者を増やすことができる
- トップセールスなど一部の優れたノウハウを仕組み化できる
特にトップセールスのスキルなどの標準偏差の外れ値を平均に組み入れることができるのは標準化の優れた点だと言えます。
セールスイネーブルメントが注目される背景
セールスイネーブルメントは SalesTech の領域
まず、セールスイネーブルメントのコンセプトは、アメリカを中心に広がる SalesTech 領域の営業支援テクノロジーの文脈に含まれています。
特に、近年日本でも導入が進む CRM/SFA といった顧客・営業管理ツールも SalesTech の文脈に含まれています。SalesTech とは Sales と Technology を掛け合わせた造語であり、IT を活用して営業活動の生産性を高める概念や、その目的のための製品やサービスを指しています。
最新の SalesTech のトレンドは以下の記事を参照ください。
【徹底解説】SalesTech(セールステック)とは?コロナ禍で変わる BtoB 営業
セールスイネーブルメントプラットフォーム市場の成長
MarketsandMarkets Research によると、世界でのセールスイネーブルメントプラットフォームの市場規模は19年には11億米ドルとなっていて、24年には26億米ドルにも上ると推定されており、CAGR(年平均成長率)は19.8%となっています。2)
下記のグラフが示すように、日本を含むアジア太平洋地域でも堅調に伸びると予測されており、日本においても今後セールスイネーブルメントプラットフォームの活用が進むと見込まれています。
セールスイネーブルメントプラットフォーム市場成長の背景
参入障壁の低下と競争激化
セールスイネーブルメントが注目される背景には、参入障壁の低下と競争激化が挙げられます。
現在、個々の営業組織を取り巻く環境はより一層厳しさを増しています。技術革新による商材の多様化により、顧客のサービスへのプレファレンスが変化し続けているからです。
つまり、顧客は無数に存在する商材から自分にとって価値あるものを厳しく選定します。それにより、多くの営業では、顧客との結びつきを強めること、それぞれに最適な提案をすることが求められるようになりました。
その需要の矛先がセールスイネーブルメントへ向かっています。営業やマーケティングに対して、コンテンツやトレーニングを通じて自社の営業活動を顧客のニーズ起点の活動へと最適化してくれるからです。
また、クラウド化がもたらすコストメリットや柔軟性と自社システムとの連携強化によって、企業は自社のコアコンピテンシーに集中できるようになりました。
つまり、参入障壁が徐々に削られ、価格競争に陥る企業が相次ぐなか、自社の模倣困難性を構築し、競争力を担保する機会を与えてくれるようになったのです。
顧客行動の変化
顧客行動の変化の点でも、セールスイネーブルメントが注目されています。近年では、バイヤーのデジタルシフト、コンテンツのオンライン化により、コミュニケーションはオンラインへシフトしています。この傾向は、コロナ禍以降より顕著になっています。
つまり売り手と買い手の情報格差がなくなっていることを示唆しています。バイヤーは簡単にネットで情報を収集できるため、BtoB 営業におけるバイヤーは、意思決定に必要なインサイトを営業担当者に求めるようになりました。
事実、HIGHSPOT によると買い手の約74%が、自社にとって有益なインサイトを提供できる企業を選びたいと考えています。3)
上記の理由から、従来の売り切り方の営業手法が通用しなくなってきていることが分かります。
顧客との関係構築の重要性からセールスエンゲージメントプラットフォームの台頭も顕著です。このプラットフォームの特徴は、売り手と買い手との関係値を育み、それを最適化し、LTV(顧客生涯価値)を上げることができることです。現在、Gartner は、セールスエンゲージメントプラットフォームを CRM に並ぶレベル1のテクノロジーであると位置付けています。
セールスエンゲージメントプラットフォームの詳細は以下の記事を参照ください。
世界的調査期間 Gartner が重要だと位置付けるセールスエンゲージメントプラットフォームとは
営業活動の属人化
セールスイネーブルメントが注目される背景には、営業のやり方が仕組み化されてないために、個々のやり方やスキルにバラツキが生じてきたことも挙げられます。
担当者ごとに営業のスキルのばらつきがあると、売上の予測が困難になるため、中長期的な成長を実現するコンセプトとは相反する要因となってしまいます。再現性がないため、成功の要因を数値化する必要が出てきます。
また、営業のスキルが標準化されてないと、マネジメントコストも莫大になる傾向があります。
セールスイネーブルメントを実現する CRM/SFA
セールスイネーブルメントの肝は仕組み化・最適化
顧客情報や営業のデータがないと、セールスイネーブルメントを始めることができません。そのため、CRM/SFA を導入し、データを収集・蓄積する企業が増えています。
CRM の意味や機能は以下の記事を参照ください。
CRM とは?意味や基本機能、メリット、導入時の注意点まで徹底解説
また、CRM を導入するときには、全体最適化を目指す必要があります。セールスイネーブルメントの実現にあたっては部門ごとに閉じたデータではなく、一元化し、誰でもアクセスでき、リアルタイムなデータにする必要があります。
ツールとデータの活用方法は以下の記事で解説しています。
CRM 活用のポイントとは CRM 活用・運用のポイントを徹底解説
セールスイネーブルメントの実践
営業へのコンテンツ・インサイトの提供による売上向上
現在の営業は、顧客の知らないインサイトを提供して意思決定を促さなければなりませんが、営業部門のみでその対応をするのは現実的ではありません。顧客が求めるコンテンツやインサイト、それを実行するためのトレーニングを営業チームに提供することが大切です。
例えば、全社的にターゲットセグメントの傾向に応じて顧客に刺さるインサイトを準備・分類して営業がいつでも使えるようにすると、営業の効率が高まり売上が向上します。
コンテンツは、提案書やアカウントプラン、導入事例や ROI 計算書などさまざまな内容が考えられます。重要な視点は、顧客に刺さるインサイトなのかどうかです。
近年はこのようなソリューション営業のスタイルが求められています。詳しくは以下の記事で解説しています。
ソリューション営業とは?基本戦略や必要なポイントについて解説
営業の行動フローを標準化、共有
営業のベストプラクティスを分析して、コンテンツを制作したり、スクリプト化することで、営業の属人化を回避し、すべての営業担当者が高いパフォーマンスを発揮できます。誰もがそのスクリプトを使えるようにすることが重要です。
トレーニング
営業のトレーニングにおいて、ノウハウやコンテンツを適切に使う必要があります。SFA や CRM といったツールや、コンテンツ、ナレッジの活用が有効です。
セールスイネーブルメントの実践ステップ
セールスイネーブルメントの実践ステップは様々ですが、以下では汎用的なベストプラクティスをご紹介します。
目標を具体化する
セールスイネーブルメントの大きな目的はバイヤーに対して営業が必要なインサイトを提供し、営業活動を仕組み化・標準化して成果を伸ばすことです。
顧客課題に対するインサイト、製品のメリット、営業フローのスクリプト、営業スキルなど、さまざまなコンテンツがあるなかで自社にとって最適なオプションと目標を具体化します。
顧客体験をフロー化する
セールスイネーブルメントのコンセプトでは、常に顧客視点であるべきです。いわゆるカスタマージャーニーが重要であり、顧客が自社サービスを認知してから購買までの行動や感情をターゲットごとに設定する必要があります。
営業のロールプレイもこの顧客フローをもとに行うのが理想的です。
カスタマージャーニーの作成は以下の記事を参照ください。
競合他社と差をつける カスタマージャーニーの書き方
顧客にインサイトを提供するコンテンツの制作
提案資料や顧客に応じたデータ、ホワイトペーパーや事例などを作成します。その他にも、ブログ投稿、ウェビナーなどのコンテンツにより、営業担当者にとって汎用性が高くコントロールしやすい方法で多くのバイヤーに価値を提供できるようになります。
セールストレーニングは継続的に
営業トレーニングによくある欠点は、年に1度しか行われず継続されないことです。営業担当者が得たスキルをアウトプットできる機会がないと、学んだことやコンテンツ、情報、ツールを忘れてしまいます。
そのため、月に少なくとも1回は正式なトレーニングを行い、これを継続的に行う必要があります。
コンテンツの活用を促進する
どんなに優れたセールスイネーブルメントプログラムであっても、提供されたコンテンツやツールの利用方法を営業担当者が知らなければ意味がなく、改善も進みません。そのため、前提としてコンテンツやインサイトは標準化しておき、ベストプラクティス、コンテンツ、およびツールを必ず利用するよう促すことが重要です。
Magic Moment の取り組み
Magic Moment Playbook (以下、MMP )は営業を仕組み化し、営業活動を自動化することでコスト削減、生産性の向上を実現する 日本唯一の SaaS プロダクトを提供しています。
Magic Moment Playbook の詳細はこちら
従来の CRM/SFA では、データの分析から行動への転換は属人化していました。それをシステムで代替し、顧客との関係値を築くことで LTV を最大化します。
営業が取るべき行動を提示。迷いなく営業が可能
営業のベストプラクティスを仕組み化。営業で何を聞くかの迷いがなくなる
営業の煩雑な作業はシステムが自動で実行。提案活動に集中できる
その他、 Magic Moment Playbook の機能についての詳しい情報はこちらの記事をご覧ください。
Magic Moment Playbook サービスサイト:https://lp.magicmoment.jp/magic-moment-playbook
資料請求:https://lp.magicmoment.jp/magic-moment-playbook-document
導入事例:https://www.magicmoment.jp/academy/category/case/
セールスイネーブルメントが学べるおすすめ書籍
最後に、セールスイネーブルメントをご自身で学習、実践したい方のために、おすすめの書籍をご紹介します。
今回ご紹介するのは「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方」、「営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント」の2つです。
セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方
山下貴宏(著)/2019年12月18日発売/ISBN:4761274581
一冊目にご紹介するのは「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方」です。
セールスフォース・ドットコム社のセールス・イネーブルメント本部長としてグローバルトップの営業生産性を実現した著者によって書かれた一冊。
事例を含めた具体的な手法も紹介されているのが特徴です。
セールスイネーブルメントに取り組みたいと考える企業が、何をどのような手順で進めればいいのか、それを進めるうえで前提として整備すべきことが何なのか?営業に関わる全ての方に向けて解説しています。
営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント
バイロン・マシューズ 他(著)/2019年1月17日/ISBN:4877718052
次に紹介するのは「営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント」です。
営業力強化分野のリーディングカンパニーであるミラーハイマングループの手法を、豊富なデータやベストプラクティス事例と共に紹介した「セールス・イネーブルメント」の実践的ガイドブックとなっています。
BtoB ビジネスにおけるセールス、マーケティングチームを強化していく意味でも有用な一冊です。
(日本語版)
(英語版)
《引用文献》
1)山下貴宏. 『セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方』. かんき出版. 2019-12-18. (参照 2022-09-22)
2)MARKETSANDMARKETS. “Sales Enablement Platform Market Global forecast to 2024”.
https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/sales-enablement-platform-market-26763161.html, (参照 2022-09-22)
3)Marissa Gbenro. “Winning Over the Modern Buyer”.HIGHSPOT. 2018-06-26.
https://www.highspot.com/blog/winning-over-the-modern-buyer/. (参照 2022-09-22)
図1)図2)MARKETSANDMARKETS, Sales Enablement Platform Market by Component (Platform And Service),
https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/sales-enablement-platform-market-26763161.html
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