SalesTech(セールステック)とは? これからのBtoB営業
- セールステックとは、Sales と Technology を掛け合わせた造語であり、IT を活用して営業活動の生産性を高める目的で使う製品やサービスのことを指す
- セールステック市場はコロナ禍以降、変化・成長しており、2021年度版では2倍以上に成長している
- 従来は人が担っていた営業プロセスの大部分をセールステックが担い、自動的にコミュニケーションを取る、もしくは人に最適なアクションを提示するものに変わってきている
2017年頃から日本でも注目を浴びるようになったのが SalesTech(セールステック)です。フィンテックなど、◯◯テックといったワードを聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。現在、人手不足や働き方改革、AI やクラウドといったテクノロジーの進化がセールステックの活用を促進していて、コロナ禍以降はその領域も変化しています。
今回はセールステックの概念や、コロナ禍で転換点を迎える最新のセールステックの動向をお伝えします。最後にはこれらの変化を踏まえ、BtoB 営業がどのように変化していくのかを考察します。
目次
セールステックを含む営業 DX の全体像については「営業組織の DX の要諦」でも解説しております。
最先端の営業知見を知りたい方や営業組織の生産性を高めたい方はこちらもご活用下さい。
また、弊社では最先端のSales Tech、「Magic Moment Playbook」を提供しています。
SalesTech(セールステック)とは?
セールステックとは、Sales と Technology を掛け合わせた造語であり、IT を活用して営業活動の生産性を高める目的で使う製品やサービスのことを指します。セールステック市場は、欧米を中心に盛り上がっており、近年では DX 推進の意識の高まりやコロナ禍でのリモートワーク推進の影響で、日本でも拡大しています。
日本国内では特に CRM 市場の伸びが顕著です。IDC Japan が2018年に発表した「国内 CRM アプリケーション市場予測」によると、2017年の国内 CRM 市場規模は1,056億4,900万円で、前年比約10パーセントの増加となっています。2022年には1,430億3,600万円の規模まで拡大すると予測されています。1)
コロナ禍以降、変化・成長する SalesTech(セールステック)市場
国内外で市場が拡大するセールステックの最新カオスマップは、ナンシー・ナーディン氏による「2021 B2B Enterprise SalesTech Landscape」にまとめられています。
2021 B2B Enterprise SalesTech Landscape
「2021 B2B Enterprise SalesTech Landscape」を発表したナンシー・ナーディン氏は、Gartner 社などでアナリスト経験を積んだのちに Smart Selling Tools 社を立ち上げ、2010年以来、毎年精力的に B2B セールステックのカオスマップを作成しているセールステックの第一人者です。
2021年版のカオスマップには、45のカテゴリー、1,078のソリューション(うち461はCRM)が含まれています。日本でセールステックという言葉が認知されてきた2017年版が約400ツールであった経緯を考えると、2021年度版では2倍以上に成長しています。
つまり、世界中での新型コロナウイルス感染拡大による経済打撃以降も、ソリューション数が爆発的に伸びていることが分かります。
事実、このコロナ禍においてアメリカの代表的な GAFAM といった銘柄を含む株価指数である S&P500 は、中長期的には堅調に推移しているものの20年2月20日からのおよそ1月半は暴落しました。
しかしながら、セールステック市場はコロナ禍でも市場自体が急成長しており、いくつかの主要セールステック企業が、数十億ドルの評価額を達成しています。Outreach は2020年に評価額13億3000万ドルを達成し、 21年の第1四半期には前年比100%以上の ARR の増加、SalesLoft は21年はじめに11億ドルの評価額に達しました。
特にコロナ禍以降にまとめられたセールステックのカオスマップには、リモート環境に適応するソリューション、特に顧客との関係性、いわゆるエンゲージメントを築くソリューションが際立つようになりました。これはナンシー氏のセールステックの5つのグループにも表れています。
セールステックの5つのグループ
ナンシー氏は、21年のカオスマップからセールステックのカテゴリーの定義を再編成し、5つのグループと45のカテゴリーに分類しました。
グループは以下の5つに分けられています。
- 担当者(Reps): 営業担当者、プリセールス担当者、ISR (インバウンド営業担当者)、SDR (営業開発担当者)
- スキルの開発と強化
- 管理と運用
- CRM データインテリジェンス
- CRM
このうちの約40%のソリューションが CRM に分類されるわけですが、特筆すべき点としては顧客データを管理するフェーズから、営業そのものや売上を上げる行動そのものを予測・支援するソリューションが登場していることです。
よって、営業担当者のグループはさらに5つのサブグループに分けられています。
- Prioritize(優先順位付け)最初に最良のリードと見込み客に電話をかける
- Engage(関与)有意義な会話ができる見込み客を獲得する
- Earn(獲得) 信頼と信用を築き、ソリューションをニーズに合わせてマッピングする
- Close(クロージング)取引を完了させる
- Expand(拡張)更新、アップセル、クロスセル
この5つのサブグループは主に営業の実行フェーズを時間軸で分けたものであり、営業活動を一貫して支援するソリューションが登場していることを示唆しています。
特に、このサブグループの1つ「Engage」が注目を浴びています。このグループの Online Video Meetings などはコロナ禍以降のテクノロジーの代表例と言えます。
Sales Engagement Platform (セールスエンゲージメントプラットフォーム)の台頭
この営業そのものを支援・成長させるソリューションを代表するのが、セールスエンゲージメントプラットフォームです。代表的な企業としては、Outreach や SalesLoft があげられます。
FACT.MR の調査によると、このセールスエンゲージメントソフトウェアの市場規模は、21年の50億ドルから22年には74億に増加すると見込まれていて、22年からの10年間に市場規模はさらに4倍になると見込まれています。日本においても CAGR は13.3%と見込まれています。 2)
この成長の背景としては、クラウド化の推進によるコスト効率化・優位性確保への投資が進むこと、または AI を統合することで顧客のロイヤルティ向上・リードの生成・予測精度の向上を実現することが可能になるからです。
つまり、セールスエンゲージメントプラットフォームはデータを起点とした営業活動の自動化・最適化・データトラッキングとインサイトの生成を担う機能を備えています。
また、Revenue.io の調査によると、現在ではこのセールスエンゲージメントへの企業投資は CRM への投資を上回っています。特に、コロナ禍以降は顧客とのコミュニケーションがオンライン形態へ移行し、データを活用した予測・インサイト抽出に関心が変化していることが背景にあります。
いまでは世界的な調査機関 Gartner もこのテクノロジーを必須レベルだと位置付けるようになりました。
従来のセールスイネーブルメント(Sales Enablement)は存在しない
従来のカオスマップでは存在していたセールスイネーブルメントの分類が無くなっていることも、2021年版のマップの特徴です。セールスイネーブルメントとは、営業活動に必要な施策を一貫して設計・管理することで、営業活動を最適化することを指しています。
ナンシー氏はこのセールスイネーブルメントをさらに「コンテンツマネジメント」と「トレーニングとコーチング」の2つのカテゴリーに分類しています。
コンテンツマネジメントとは、営業担当者が使用する製品情報や成功事例、提案書などのコンテンツを管理・最適化することです。トレーニングとコーチングは、営業担当者に対する研修を指しています。
結果、ナンシー氏は異なる役割が混在していたセールスイネーブルメントの分類を無くし、上記の2つに分類したとしています。
コロナ禍以降注目されるカテゴリー
プリセールス(Presales)
ナンシー氏によると、コロナ禍以降に注目されるカテゴリーとしてプリセールスを対象とした新しいソリューションを挙げています。デモや概念実証、パイロット版のユーザー獲得をサポートする機能を備えたツールです。
これらのツールを活用することで、営業マネージャーはプリセールス時に今まで得られなかったデータを獲得できます。これらのツールはさらに以下のカテゴリーに分類されます。
- デモ(Demos)
- プリセールス イネーブルメント(Presales Enablement)
- プリセールス管理(Presales Management)
デモとプリセールスイネーブルメントのツールの例として 「CONSENSUS」 があります。CONSENSUS はデモの自動化による顧客体験の向上や、販売サイクルの短縮を可能にするソフトウェアを提供しています。
具体的にはセールスエンジニアが CONSENSUS 上でビデオデモを作成し、営業担当者がデモをリンクとして見込み客にメールを送信します。メールを受け取った見込み顧客は、知りたいことを選択した上で自分に合ったデモをオンデマンドで入手することができるのです。
CONSENSUS では、リアルタイムに見込み顧客のエンゲージメントを追跡し、顧客に優先順位をつけることで営業チームの活動を支援することを目的としています。
プリセールス管理のツールの例としては「vivun」 が挙げられます。
virun が提供するサービスは以下の通りです。
- Hero by Vivun® Elevates Solutions Teams with the Power of AI
- Eval
- Vivun Platform Overview
- AI Advantage
買い手と売り手とのコミュニケーションを一貫して形成し、営業担当者によるプリセールスの効果を高めています。
レスポンス(Response)
レスポンスを向上させるツールは、以下の2つのカテゴリーに分類されます。
- レスポンスに値するコンテンツ(Response-worthy content)
- 装飾された電子メール(Embellished Email)
レスポンスに値するコンテンツツールの例として、「Uberflip」があります。Uberflip は、購入者を最も関連性の高いコンテンツにつなげることで、見込み顧客の育成や顧客ロイヤルティの向上を目指しています。これは非常に重要であることを以下のデータが示唆しています。
Forrester によると、顧客の 63% は、自分のニーズ、業界、または役割に関連しないコンテンツを無視していて、逆に関連性の高いコンテンツは顧客エンゲージメントを維持・向上させることができるとしています。
Uberflip は、バイヤーの役職、企業、業界ごとのニーズに合わせたパーソナライズ化された関連コンテンツを提供することで、顧客体験のギャップを埋めるように設計されています。
装飾された電子メールツールの例として、「Opensense」 があります。
メール署名、メール広告キャンペーン、販売追跡、コンプライアンスをすべて 1 か所で簡単に管理できるプラットフォームです。
コロナ禍で転換点を迎えるセールステック(SalesTech)
新型コロナウイルス感染症の拡大はソリューションの変化のみならず、BtoB 顧客の購買行動の変化をもたらしました。これまでに比べて、製品の情報収集や比較検討をオンラインで行うようになっています。
マッキンゼーアンドカンパニーの調査によると、2019から2020にかけて BtoB の顧客との接触はデジタルインタラクションに推移しており、調査フェーズでは前年比およそ150%、評価フェーズでもでおよそ120%増加しました。
つまり、営業はこれまでと比べてオンラインコミュニケーションにおけるデータをいかに活用するかという点が大切になってきます。
しかし、多くの企業ではデータの正確性や連携に課題を抱えています。顧客データを使えなくなる要因については以下の記事をご覧ください。
なぜ CRM 内の顧客データが分析に使えないのか?データ活用を阻む8つの原因
また、コロナ禍以前と比較して、セールスのチャネルは電子メールやオンラインチャット、ビデオ通話に移行しています。そのため、営業チームのマネージャーは、効果的な対面でのやり取りとリモートでの販売方法とのバランスをとりながら最適な対応をしていく必要があります。
さらに重要な示唆としては、 BtoB の顧客(意思決定者)の多くが、デジタルチャネルを活用したリモート営業による販売モデルがコロナ禍以降も有効であり、持続性を期待できると評価している点です。つまり、この BtoB 営業のデジタルシフトはパンデミック以降も続いていくことを示しています。
上記で紹介したカオスマップにおける Video Selling、Online Video Meeting などのバイヤーの行動変化に合わせたカテゴリーの登場、営業活動そのものを自動化するソリューションの登場と繁栄には、この BtoB 営業を取り巻く環境の変化が密接に関わっています。
このことも、今後もセールステック市場が拡大する要因として考えられます。
セールステック(SalesTech)が変える営業活動
新型コロナウイルス拡大以前のセールステックでは、営業活動のプロセスの一部、特に情報管理の工数を減らすといった人間の手作業をテクノロジーで効率化することが主な目的とされており、大部分の顧客との接点は人が担っていました。
それに対して、コロナ禍以降のセールステックでは、顧客がデジタルでの接点を求め、それに呼応するようにテクノロジーが顧客との接点に対応しています。つまり、従来は人が担っていた営業プロセスの大部分をセールステックが担い、自動的にコミュニケーションを取る、もしくは人に最適なアクションを提示するものに変わってきました。
これらのセールステックの変化が示すことは、人がテクノロジーにすべて置き換わるということではなく、人がやるべきこと・そうではないものを住み分けることが大切だということです。
このうち、従来は人が判断・分析せざるをえず、人によってバラツキの大きかった領域をテクノロジーの得意なデータをもとにした判断に置き換える流れが加速しているということをナンシー氏のマップは示しています。
弊社 Magic Moment は顧客とのエンゲージメントをもとに営業の質と量を向上する Magic Moment Playbook を提供しています。「営業が今やるべき行動」を提案することで営業の質を高め、コミュニケーションを自動化することで営業の活動量を最大化します。
Magic Moment Playbook の機能についての詳しい情報は こちらの記事「営業改革を実行するための主要機能」 をご覧ください。
Magic Moment Playbook サービスサイト:https://lp.magicmoment.jp/magic-moment-playbook
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《引用文献》
1)IDC Japan. 「2017年の国内CRM市場規模は前年比10.1%増の1056億4900万円」. 2018-08. クラウド Watch. https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1137244.html, (参照 2022-08-24)
2)Fact MR. “Sales Engagement Software Market”. https://www.factmr.com/report/sales-engagement-software-market, (参照 2022-08-24)
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