顧客満足度を向上させる思考法とは? CS の好循環を生み出す方法
日本市場は成熟化が進み、企業は、「製品・サービスをつくっても売れない」困難な状況に陥っています。
機能や品質だけで勝負することができなくなっている今、安易に価格競争に乗り出せば、悲惨な道をたどることもあります。
顧客が他社よりも自社のサービスを選択するには、顧客が離れないよう、顧客が安心して利用し続けたいと思う「顧客満足度(CS)」を高めることが重要です。
本記事では、企業が顧客満足度を向上させるための5つのステップと具体的な実践例を企業の事例とあわせて紹介します。
目次
以下資料では、売ったら終わりでなく、顧客との継続的な関係構築を目指す顧客エンゲージメントの考えを解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
無料ダウンロード:最先端の営業哲学:顧客エンゲージメントとは
また、弊社 Magic Moment では、顧客エンゲージメントを起点とした営業支援 SaaS 「Magic Moment Playbook」を提供しています。
顧客満足度(CS)とは
顧客満足度(CS 英語表記:Customer Satisfaction)は、企業が「自社の顧客が自社の商品やサービスに対して満足しているかどうか」を定量的に測定するための指標のことです。
企業は自社の商品・サービスの顧客満足度を見ることで、「顧客にどのようなニーズがあるのか」「顧客がサービスの利用に問題を抱えていないか」を知る手がかりにすることもできます。
また、顧客満足度が高いということは、顧客の信頼や愛着(顧客ロイヤルティ)を獲得するきっかけにもなります。
例えば、製品自体の満足度に加えて、「購入後のアフターフォローが充実している」「いつも細かい要望まできいてくれる」などの顧客の満足する体験、感情を継続して提供することができれば、顧客からの信頼を獲得し、企業の成長基盤につながります。
テーマは「信頼」です。
顧客は信頼を抱く企業に対して、より多くの対価を払います。
顧客との信頼関係を築くことができる企業は、 LTV(顧客生涯価値)を高め、長期的に発展することができるのです。
あわせて読みたい:LTV (Life Time Value)とは?算出方法や改善方法まで徹底解説
顧客満足度向上が必要な理由
ではなぜ顧客満足度が重要なのか、その背景を深掘りしていきましょう。
近年、市場の成熟化とともに、ほとんどの製品やサービスは、技術や性能だけで差別化するのが難しくなってきています。「自社だけの特別な技術」を持っている企業はそう多くはありません。
かといって、価格を下げて顧客を獲得するのも有効ではありません。利益率が下がるのみではなく、最悪のケースでは競合に顧客を奪われてしまうからです。
価格で勝負するということは、競合は自社より良い価格インセンティブを用いて簡単に顧客を奪い取れるということを意味します。あなたが5%割引をすれば、競合他社は10%の割引をします。この価格競争のサイクルで生き残ることが難しいことは言うまでもありません。
つまり、サービス品質と価格差が標準化されていくなか、期待できる差別化要因が「この企業と関わっていたい」と感じる顧客体験(CX)や顧客満足度になります。
多くの企業が新規獲得や新しい技術の開発に大部分のリソースを投じて、顧客体験(CX)に目を向けないなか、顧客満足度向上の戦略を取り入れることで大きな推進力を手にできます。
事実、多くの顧客は製品やサービス自体を購入しているのではなく、提供される「体験」に対価を支払っています。
XM Institute の調査『ROI of Customer Experience, 2020』 1)によると、自身が成功しているとの感覚や、ブランドに対する好感情といったカスタマーエクスペリエンス(CX)が、「より多く購入する」「他人にサービスを推奨する」などの行動と強い相関性があることが示されていて、特に、ブランドに対する良い感情が最も顧客の企業へのロイヤルティを形成し、収益の拡大につながると指摘されています 。(図1)
また、調査が示すようにロイヤルティが高まった顧客は自ら新たに顧客を呼び込んでくれます。マーケティングコストの削減にも寄与し、収益/コストの両面で有効な戦略であることが分かります。
あわせて読みたい:顧客ロイヤルティとは?高めるメリットやそのための施策を紹介
顧客満足度向上のための5ステップ
顧客満足度を向上させるということは、顧客に最高の体験価値を提供するということです。
そのためには、顧客がどんな時に満足するのかを知り、自社と顧客の各タッチポイントと営業プロセスに落とし込んでいく必要があります。
ステップ① 顧客とのタッチポイントを特定する
はじめに、顧客と自社が接点を持つポイントを明らかにします。
顧客と企業の関係は、常に変化しています。
かつては、テレアポや飛び込み営業で、顧客のもとへ実際に足を運びながら主体的に顧客へ情報を提供しにいって関係をつくっていました。
しかし、この図の通り、現在の顧客は営業マンに売られた商品を買うのではなく、顧客自身の集めた情報をもとにサービスを購入しています。
顧客はウェブサイトやデジタル広告を見て商品を購入しているのに、企業がこれまで通り顧客のもとへ飛び込んで営業をかけても不要なコストを割くだけです。
今後は、企業が顧客とのタッチポイントを正確に認知しておく必要があります。
顧客とのタッチポイントを洗い出すには CRM をはじめとする顧客管理ツールやアンケート調査で、顧客行動を明らかにすることが有効です。
顧客が自社を、いつ、どこで知って、誰と、どんな情報を得ているか、何をしたのか特定させましょう。(営業、マーケティング、カスタマーサービス、テクニカル・サポート、人事、など)
データが集れば、カスタマージャーニーを具体化させることができます。
あわせて読みたい:競合他社と差をつけるカスタマージャーニーの書き方
ステップ② 必要なデータを収集し、分析する
次に、顧客満足度を測定します。
代表的な顧客満足度を測るための KPI を3つご紹介します。
各指標の特徴を理解したうえで指標を立て、分析する必要があります。
NPS(Net Promoter Score)
顧客の満足度を、「他者に推薦したいと思うか」という基準から、間接的に調査する方法を NPS(推奨者の正味比率)といいます。直接的に満足度を尋ねるよりも、サービスの総合的な評価を行ってくれる場合が多いことと、企業の業績や収益との相関性が高いことから注目を集めています。
顧客に利用サービスを「他者に推薦したいと思う」度合を、10段階で評価してもらい、0~6を批判者、7~8を中立者、9~10を推奨者とし、下のように計算することが一般的です。
NPS(%)= (推奨者の数/全回答数)-(批判者の数/全回答数)
CES(Customer Effort Score)
CES は、「顧客努力指標」といい、顧客のネガティブな行動を見る指標です。
顧客がサービス利用に感じている負荷やストレスを調査することを目的としています。
アンケート形式で、顧客に「サービスの利用にストレスはあったか」「どこにストレスを感じたか」を評価してもらいます。
CRR(Customer Retention Rate)
CRR は、「顧客維持率(リテンションレート)」といい、既存顧客を、一定の期間にどの程度維持できているかを見る指標です。
CRR が高いと、顧客が不満なく自社のサービスを利用できているという一つの目安になります。
顧客がサービスを利用し始める早い段階で調査することが望ましいでしょう。
これらの指標は、ウェブやソーシャルメディアの解析やアンケートによる顧客フィードバックによって行います。
とくに、顧客満足度の調査においてアンケート調査は欠かせません。
現在は、Web やアプリ内で回答してもらうのが一般的です。
アンケートを実施する際は、顧客によって重視するポイントが異なることに注意が必要です。
「サービスにどの程度まで品質を求めるか」「サービスに何を一番求めているか」など、顧客の違いがわかることで、より正確に顧客の実態を知れるようになります。複数の回答を尋ねたり、自由形式の質問を織り交ぜながら質問するとよいでしょう。
顧客満足度を測るだけでなく、顧客満足度が高い顧客の特徴を分析することもとても重要です。
顧客満足度が高い顧客の特徴は、顧客満足度を向上させるための示唆を得ることができるためです。
複数の顧客のフィードバックを見ることで、「どうすれば顧客が満足度を向上させられるのか」をデータから予測できるようになります。
近年、企業はより多くの情報を収集することができるようになりました。競合に負けないデータトリブンの組織体制は、企業が取り組むべき最重要課題の一つです。詳しい解説は、こちらの資料をご覧ください。
無料ダウンロード:データドリブンなセールスマーケティング組織の構築 投資すべきチャネルの見極め方
ステップ③ 顧客目線の価値提供プロセスを最適化させる
次は、顧客目線の価値提供プロセスに合わせて、カスタマージャーニーを設計します。
顧客は必ずしも企業が意図した通りにルートを辿ってくれるものではありません。
企業の側から顧客に寄り添い、顧客のとる行動を先回りをして価値提案を行う姿勢が重要です。顧客行動を先読みできる企業は、顧客にとって、楽で選びやすいため、他社に対して大きな差別化ポイントになります。
THE MODEL 型の営業プロセスは、その代表例です。
顧客が企業を認知し、興味を持ってサービスを購入し、本来の目的を達成するまでの一連のプロセスを企業が各営業フェーズに落とし込んでいるのが特徴です。
下の図の通り、THE MODEL 型の営業プロセスでは、顧客の購買プロセスに企業の営業プロセスを最適化させています。
顧客起点で一貫した営業プロセスを構築することで、顧客に提供する価値を最大化させることができるのです。
企業本位に従来のやり方をやり続けていれば、顧客はついてきません。
顧客がとりうる行動パターンを想定しながら、顧客体験とのタッチポイントを配置し、適切な価値提供プロセスを設計しましょう。
ステップ④ 顧客満足のポイントをつくる
顧客に合わせたプロセス設計ができたら、今度は、顧客との各タッチポイントを、より確度を上げて顧客満足度が得られるよう強化させます。
顧客とのタッチポイントは、顧客との関係を生み出す現場です。
つまり、タッチポイントをどのようにデザインし、顧客に体験を提供できるかによって、顧客からの自社に対する評価が決定づけられるということです。
素晴らしい体験価値は、顧客の購買後に「このサービスを利用してよかった」「また利用しよう」という感情を引き起こし、顧客の記憶に残ってもらうことができます。
具体的には、ステップ②で集めた顧客満足度の高い顧客の理解をもとに、顧客との各タッチポイント(ステップ①)で顧客体験価値を向上させます。
例えば、「カスタマーサポートをよく利用している顧客は顧客満足度が高い」というデータがあったとします。
この場合、顧客がサービスを利用する際に必要なサポートが不足していることが考えられるため、FAQ を充実させたり、購買後のオンボーディング機関に自社から積極的なフォローを行う必要があると考えることができます。
ステップ⑤ 常にアップデートさせる
以上①~④で、顧客満足度を向上させるプロセスの構築が完了しました。
最後は、この機能を維持できるよう、必要に応じて更新していきましょう。
企業と顧客の関係は、常に変化します。いつでも顧客に自社のサービスを選んでもらえるよう、顧客が求めているものや競合の動向に敏感になり、改善し続けていかなければなりません。
例えば、アプリサービスを提供する場合、顧客のデジタルに対するハードルは、顧客の環境とともに変化します。顧客がどこまでデジタル操作に慣れているか、年齢や環境、デジタル端末の使用状況を調べることで、プロダクトの設計やチュートリアル・マニュアルの内容を変更する必要があるでしょう。
自社の顧客が長期にわたって自社の顧客でいてもらうためには、一回限りの施策実行では不可能です。
仮説立て、背策立案、実行、効果検証を繰り返し、提供する価値を日々アップデートさせましょう。
あわせて読みたい:御用聞き営業からソリューション営業への転換
すぐにできる顧客満足度向上の実践例
顧客満足度向上は「上げる」という視点だけではなく、「下げない」という視点から考えることも大変重要です。
「顧客の不満を解消させること」にフォーカスしたすぐにできる実践例を2つ、ご紹介します。
顧客動線の改修
まず、企業が一番早く取り組むことができる実践例は、顧客動線の改修です。
顧客がサービス利用に困難を感じたり、否定的な感情を覚えることを、「ペインポイント」といいます。
Gartner 社を含めた20年間、CX のアナリストも務めていた Esteban kolsky 氏によると、不満を持つ26人の顧客のうち、実際に企業に不満を伝えるのは、1人だけだということです 2)。
つまり、サービスに不満を感じた顧客は、自社の気が付かないうちに離れてゆくため、企業が積極的に「ペインポイント」を取り除くことが必要です。
具体的には、顧客からのアンケートやヒアリングによるフィードバックをもとに、顧客目線で自社のサービスに不満を感じるところがないかを点検します。
例えば、顧客目線でウェブサイトをクリックしてサービスページを読んだり、製品のデモを操作してみて、「お客様が探しているものが見つからない」「商品の理解や購入が難しい」ということはないでしょうか?
顧客満足度に悪影響を及ぼすユーザーの摩擦やフラストレーションのポイントが現れたら、すぐに改善に取り組みましょう。
米クレジットカード大手 Mastercard も、テクノロジーを駆使したカスタマージャーニーの最適化に取り組んでいます。
顧客へ提供する価値を「シンプルであること」と「安全性」の2つに絞り込み、システムの操作性の向上と、セキュリティの向上を実現させました。
動線改修の最大ポイントは、顧客の求める価値に最適化させるよう考えることです。
顧客への積極的な支援
サービスに不満を感じた顧客は、自社の気が付かないうちに離れてゆくため、企業が積極的に支援を行うことが重要です。
近年、なかでも、カスタマーサクセスの存在が注目を集めています。
カスタマーサクセスは、顧客が商品を購入した後に、顧客が本来の目的を達成できるよう、企業が支援する役割のことをいいます。
具体的には、「利用しているサービスに問題がないか」「改善して欲しい機能はないか」を顧客へ聞き込みしてサポートしたり、顧客の気づいていない価値の提案を行います。
企業は、顧客に長くサービスを利用し続けてもらえれば利益になるため、顧客と企業の双方にとってメリットがあります。
とくに SaaS 系サービスを提供する企業の多くはカスタマーサクセスを採用しています。
世界有数の IT企業 IBM もカスタマーサクセスに力を入れている企業の一つです。
カスタマー・サクセス・マネージャー (CSM) チームを設置し、 IBM のサービスが顧客の成功を後押しできるよう、信頼できる専門家によるサポートを受けられるようにしています。
顧客満足度を維持することは、顧客との関係を大切にするということです。
顧客との関係を大切にする企業は、顧客から選ばれ続け、収益も安定させることができます。
Magic Moment では、「顧客エンゲージメントの向上が顧客価値最大化につながる」という考えのもと、営業プロセスや顧客エンゲージメントを可視化させる 「Magic Moment Playbook」を提供しています。
その他、Magic Moment Playbook の機能についての詳しい情報は こちらの記事「営業改革を実行するための主要機能」 をご覧ください。
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《引用文献》
1) Moira Dorsey, David Segall, and Bruce Temkin. “ROI of Customer Experience, 2020”. Qualtrics XM Institute Research. 2020-08-18. https://www.xminstitute.com/research/2020-roi-cx/, (参照 2023-03-01).
2) Esteban Kolsky. “CX for Executives” Slide Share a Scribd company. 2015-09-04. https://www.slideshare.net/ekolsky/cx-for-executives/8,(参照 2023-03-01).
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