Sales Tech Chaos Map 徹底解説
- セールス・テック市場は、 DX への意識やテレワーク推進の影響で、日本でも徐々に市場が拡大している
- 日本国内では特に CRM 市場の伸びが顕著で、2022年には1,430億3,600万円の規模になると予測されている
- 2020年は営業 DX が大きく動いた年となった。営業活動の各フェーズでさまざまなソリューションが登場している
目次
近年、営業DX への関心やテレワークの促進が増す中で、Sales Tech が注目を集めており、営業活動の各フェーズでさまざまなソリューションが登場しています。本記事では、セールステック・カオスマップの全体像を解説し、ツールカテゴリーやその機能、そしてこれらのツールが営業プロセスに与える影響について詳しく説明します。
また弊社では、Sales Tech の市場トレンドや今後の動向についてまとめた「【最先端】SalesTech(セールステック)ガイド〜SalesTech 市場トレンドと BtoB 営業の変化の考察」を無料で提供しています。ぜひダウンロードしてご活用ください。
セールス・テック市場は伸びている
IT を活用して営業活動の生産性を高めるセールス・テック(Sales と Technology を掛け合わせた造語)市場は、欧米を中心に盛り上がっており、近年では DX への意識やテレワーク推進の影響で、日本でも徐々に市場が拡大しています。
日本国内では特に CRM 市場の伸びが顕著で、IDC Japan が2018年に発表した「国内 CRM アプリケーション市場予測」1)では、2017年の国内 CRM 市場規模は1,056億4,900万円だとされています。これは前年比約10パーセントの増加で、2022年には1,430億3,600万円の規模になると予測されています。
様々なソリューションが登場
2020年は新型コロナウイルスによるテレワーク推進の影響もあり、営業 DX が大きく動いた年となりました。営業活動の各フェーズでさまざまなソリューションが登場しています。
日経クロストレンドとマツリカが作成した日本版「セールステック・カオスマップ」2021年版では、「見込み顧客の発掘」「商談機会の創出」「契約」「アップセル/クロスセル」「顧客のロイヤル化」の5つの営業プロセスに合わせて、各社のサービスがマッピングされています。
コロナ禍を背景に営業組織の活動の在り方に変化、ツール活用の在り方も変化している
直近では、コロナ禍を背景に営業組織のあり方に変化が起き、ツール活用のあり方も変化しています。日本版「セールステック・カオスマップ」2021年版を参考に、コロナ禍以降の営業 DX について掘り下げていきます。
【変化1】オンラインでの営業・商談とリード獲得ニーズ高まる
「見込み顧客の発掘」の段階では、セミナーやイベントによるリード(見込み顧客)獲得のツールが増加しました。新型コロナウイルス感染症拡大により、対面で行われていたセミナーや展示会の実施が難しくなり、ウェビナー(オンラインセミナー)を実施する企業が増えたことが大きな要因です。
動画配信やリード管理、イベント運用に必要な機能を搭載したオンラインイベントを管理するツールが多数登場しました。主なプレーヤーは「EventHub」「EventRegist」「Sansan Seminar Manage」です。
また、オンラインイベントで獲得した見込み顧客と商談する仕組みとして、オンライン商談ツールの導入も進みました。新型コロナウイルス感染症の拡大前は対面営業が一般的だった業界にもオンライン商談の導入が一気に進みました。オンライン商談ツールを提供するベルフェイス社によると、2020年3月〜5月で1万2000社が同社サービスに登録しました。
【変化2】商談フェーズで「動画活用」が加速
業種によってはオンライン商談のみでは受注に至らない場合もあります。特に耐久性など製品の特徴はテキストや図などの資料だけでは伝わりにくいため、商談フェーズでの動画の活用が進みました。
以前までは、対面で見込み顧客に製品を直接見て触れてもらうことで営業を行なっていた BtoB 領域でも動画の導入が進みました。そのため、社内で簡単に動画を作れるツールが広く活用されるようになりました。
例えば、用意されているテンプレートを選んで素材を集めるだけで簡単に動画が作れる「1Roll」「RICHKA」といったツールや、あらかじめ用意された素材を組み合わせることで、営業に使えるアニメーションを制作可能な「VYOND」といったツールが活用されるようになりました。
【変化3】「電子契約」の普及が加速
政府による脱ハンコの後押しと新型コロナウイルス感染症拡大によるテレワークの影響で、「eSigning」(電子契約)の普及が加速しています。
アイ・ティ・アール社の調査2)によると、国内の電子契約サービスは17年度の約20億円から、23年度には約198億円になる見込みとなっています。
国内最大手は弁護士ドットコムの「CloudSign(クラウドサイン)」で、その他にも GMO 系の「Agree(アグリー)」、はんこメーカーのシヤチハタのクラウド型電子決裁サービス「シヤチハタクラウドビジネス」が出てきており、激戦市場となっています。
【変化4】「コミュニティーマネジメント」需要高まる
顧客のロイヤル化のフェーズでは「Subscription Management」として、サブスク型ビジネスの契約管理を行うツールが出てきました。
サブスク事業を展開する上では、売り切り型ではないビジネスモデルゆえに契約管理が複雑であることがネックとなっています。それを支援するのが Subscription Management ツールで、大手は米国発の「Zuora」、最近では日本の「Scalebase」が伸びています。
また、CS (カスタマーサクセス)の重要性が浸透してきていることから、プレイドの「KARTE (カルテ)」、ODK ソリューションズの「pottos(ポトス)」といった CS(カスタマーサクセス)ツールを提供する会社が増えてきています。
CS に関連する項目として、顧客同士が助け合い高め合う「Community Management」のニーズも高まっています。日本では企業や顧客が顧客同士のコミュニティを組織・運営するツールが増えていますが、それをデジタル化した「commmune(コミューン)」や「coorum(コーラム)」といったサービスが出てきています。
各コンポーネントについて解説
以下では、各コンポーネントについて解説します。
データ管理
BI
BI とはビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)を指し、ビジネス分析やデータマイニング、データビジュアライゼーション、データツールやインフラストラクチャ、ベストプラクティスなどを組み合わせることで、組織がよりデータに基づいた意思決定を行えるように支援することです。
主要サービス: Actionista!、Domo、LaKeel BI など
iPaaS
iPaaS とは「Integration Platform as a Service」の略で、複数のシステムを連携することで業務自動化を実現するサービスを指します。
バラバラに管理されているデータを統合し、システム間の連携を円滑にすることでデータ管理の手間を省き、業務効率化を図ります。
主要サービス: ActRecip、Anyflow、Celigo など
MA
MA とはマーケティングオートメーション(Marketing Automation)の略語で、収益向上を目的としてマーケティング活動を自動化するツールを指します。
MA を導入すると、見込み顧客一人ひとりの興味関心に合わせたマーケティングキャンペーンの展開と顧客とのコミュニケーションが可能となり、見込み顧客との良好な関係の構築につながります。
主要サービス:Aimstar、b→dash、BowNow など
SFA/CRM
CRM は「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント」の略で、顧客関係管理ツールを指します。SFA は「セールス・フォース・オートメーション」の略で、営業活動自動化ツールを指します。
どちらも顧客情報管理を主体としたシステムであり、近年の顧客の価値観の多様化により困難になった顧客の実態を効率的に把握し、見込み顧客に対して正確にアプローチすることの必要性から、導入する企業が増えています。
主要サービス:e セールスマネジャー、JUST.SFA、kintone など
営業効率化
Event/Seminar Management
セミナーやイベントによるリード(見込み顧客)獲得を目的とした、動画配信やリード管理、イベント運用に必要な機能を搭載したオンラインイベントを管理するツールを指します。
新型コロナウイルス感染症拡大により、対面で行われていたセミナーや展示会の実施が難しくなり、ウェビナー(オンラインセミナー)を実施する企業が増えたことで、普及が進みました。
主要サービス:EventHub、EventRegist、Sansan Seminar Manager など
Contact/Lead List
営業活動にあたり取得した見込み顧客の連絡先(名刺)やリードのリストを管理するツールを指します。
名刺交換した相手の人事異動情報をタイムリーに通知したり、営業活動に役立つさまざまな情報を自動収集してメールで配信するなど、商談前の情報収集に役立ちます。
名刺交換した相手との接触履歴を名刺に紐付けて管理でき、ソートや検索も可能です。商談メモを蓄積・共有して社内でのチーム連携を強化することができます。
主要サービス:CAMCARD、Sansan、Selct DMP など
Account Targeting/Scoring
Account Targeting とは、データ分析に基づいて成約確度の高い企業を特定することを指します。最新のマーケティング手法である ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)においては、Account Targeting で特定したターゲット企業に向けて、マーケティングと営業のリソースを集中させます。
Account Targeting ツールを活用することで、成約確度が高いターゲット企業リストを簡単に作ることができます。ターゲティングのためにつくられた企業データベースを、直感的かつ多様な切り口で絞り込み、成約確度が高いと予想される企業のリストを作成可能です。
主要サービス:FORCAS、Musubu、SALES BASE、uSonar など
Public DMP
Public DMPとは、外部メディアが提供するデータから「WEB 上におけるユーザーの行動や興味」などを集めて管理する仕組みを指します。自社だけでは把握できない消費者の行動や属性をつかむことができ、新規顧客の集客や CV 率を上げることが可能です。
Public DMP ツールを活用することで、自社のデータと外部データを合わせてまとめて管理・分析ができます。これにより、新たなターゲットの発見や、広告配信が実現します。
主要サービス:IM-DMP、juicer、Yahoo!DMP など
Video Sales
社内で簡単に営業のための動画を作れるツールが分類されています。コロナ禍以前までは、対面で見込み顧客に製品を見せて営業を行なっていた BtoB 領域でも、テレワークの推進によって動画の導入が進みました。
特に耐久性など製品の特徴はテキストや図などの資料だけでは伝わりにくいため、商談フェーズでの動画の活用が進みました。
主要サービス:1Roll、RICHKA、VYOND など
Online Meeting
オンラインミーティングは、全員が物理的な1つの場所に集まることなくオンライン上で会議することを指します。パソコンやスマホ、タブレットなどの電子機器と、インターネット環境のみで参加でき、海外の顧客やスタッフとの会議にも利用可能です。
主要サービス:Calling、VCRM、Zoom、ベルフェイスなど
Sales Enablement
セールス・イネーブルメントとは、営業活動において継続的に成果を挙げることを目的とした、営業組織の強化・改善の総括的な取り組みを指します。
セールス・イネーブルメントツールを活用すると、営業活動で使用するセールス・コンテンツを充実させて社内で共有でき、また営業担当者の教育・トレーニングプランを設定して成果の高い育成を行うことができます。
主要サービス:Bigtincan Hub、Calliduscloud、GeAlne など
Reference Management
Reference Management とは、ビジネスにおける情報収集・分析を効率化し、企業の進化を加速させるプラットフォームを指します。
情報にあふれ早いスピードで変化し続ける現代において、情報を迅速に掴み、素早い意思決定を行う必要性が高まってきています。一方で、情報収集にばかり時間がかかり、意思決定のスピードと質が落ちてしまうという課題もあります。
Reference Management ツールには、業界分析や企業調査に必要なビジネス情報が整理・格納されており、経営企画や新規事業開発、法人営業に必要なリサーチと意思決定をスピーディに行うことができます。
主要サービス:LBC、SPEEDA、日経テレコン、帝国データバンク、東京商工リサーチなど
Subscription Management
Subscription Management には、サブスク型ビジネスの契約管理を行うツールが分類されます。
サブスク事業を展開する上で、売り切り型ではないビジネスモデルゆえに契約管理が複雑な点がネックになりやすく、それを支援するのが Subscription Management ツールです。
主要サービス:Zuora、Scalebase
Route Sales Management
Route Sales Management には、営業や配送・運送の車両を Web やスマホでリアルタイムに管理するサービスが分類されます。車両管理や、配車業務など日々の管理業務、事業部全体の効率化を行うツールです。
交通事故や保険料の削減のサポート、稼働率などの分析レポートの提供、日報の自動化や各種通知機能など、ドライバーの安全を確保し、車両を使った事業活動を効率化します。
主要サービス:cyzen、SmartDrive Fleet、UPWARD など
CPQ
CPQ とは、見積の自動化、適切な価格の管理、受注までをよりスピーディーに行う見積り・請求管理ツールを指します。
ツール上の操作だけで適切な在庫数に辿り着き、 価格設定、割引、承認も合理的に行います。 スプレッドシートやメールといった営業活動以外の作業にかかる時間を最小限にし、提案など見込み顧客への活動に時間をかけることができます。
主要サービス:APTTUS CPQ、Oracle CPQ Cloud、Salesforce CPQ など
eSigning
「eSigning」は電子契約を指します。政府による脱ハンコの後押しと新型コロナウイルス感染症拡大によるテレワークの影響で、ハンコを取りに会社へ行ったり、直接会ったりする必要がない電子契約の普及が加速しています。
主要サービス:CloudSign、Agree、シヤチハタクラウドビジネス
Community Management
Community Management には、顧客同士が助け合い、高め合うためのツールが分類されます。日本では企業や顧客が顧客同士のコミュニティを組織・運営することが多いですが、それをデジタル化したサービスが出てきています。
主要サービス:commmune、coorumなど
Customer Success
カスタマーサクセスとは「顧客の成功」という意味で、受動的に顧客の要望を満たすサポートするだけではなく、顧客の成功(事業の成果)と自社の収益とを両立させる事を目指して、能動的に顧客に対して働きかけることを指します。
顧客のゴールを理解した上で、顧客のリソースやツールの使用状況データなどを分析し、必要なアクションプランなどをガイドしていくツールです。
主要サービス:KARTE、pottos など
Chat Support
チャットサポートは、チャットによりリアルタイムな顧客対応を実現するカスタマーサポートの方法を指します。
コールセンターと比べて、1人のオペレーターが同時に複数のお客様とやり取りできるため、サポート業務の効率化が可能です。氏名、住所、電話番号といった顧客情報はお客様自身が事前に入力するため、オペレーターの負担とコストが軽減します。
主要サービス:Chamo、ChatBook、Freshdesk など
Revenue/Renewal Management
レベニューマネジメントとは、在庫の繰り越しができないビジネスにおいて、需要を予測して売上高の最大化を目ざす販売の管理方法です。
供給量が限定される航空業界やホテル業界では、設定価格によって完売して欠品になったり、売れ残りが生じたりすることがありますが、この管理ツールを活用することにより、需要に合った適切な価格設定をして企業収益を最大化します。
主要サービス:Oracle Billing and Revenue Management Cloud、APTTUS Renewals Management など
組織・人材育成
Sales Call Tracking/Coaching
セールスコールトラッキングとは、販売プロセスを完全に可視化するコミュニケーション追跡ツールです。
営業担当者と見込み客の間の電話をスケジュールおよび追跡して、顧客の購入意向を理解し、それに応じた売り込みを準備します。また、マネージャーが通話品質や営業担当者のパフォーマンスを評価し、それらを戦略的に使用して営業効率を向上させるのにも役立ちます。
主要サービス:CallConnect、Dialpad、MiiTel、Twilio、Pikupon、Zendesk Talk など
Accelerration
Acceleration には、毎日大量に届くメールの中から重要なメールを AI が自動的に仕分けてくれるツールが分類されています。
Google chrome など世界中で使われているメーラーの拡張機能として配布されるツールで、メーラーと連携させることで、返信忘れや他のメールに埋もれて確認が遅れるといったミスを減らすことができます。
主要サービス:Digima、Mixmax、Notia、Smartsheet、Yesware など
Knowledge Management
Knowledge Management には、日々の営業活動から生まれる顧客ニーズやセールスが自社の価値訴求した提案内容を AI が構造化し、売れる営業のノウハウを可視化するツールが分類されています。
営業担当者によってばらばらになりがちな営業活動の方法や提案資料ですが、ツールを活用してトップセールスのノウハウを可視化することで組織全体に売れる営業の勝ちパターンが共有され、社内の誰もがトップセールスになれる営業支援サービスです。
主要サービス:Asales、CardPicks、Reflectle、TANREN など
まとめ
- セールス・テック市場は、DX への意識やテレワーク推進の影響で、日本でも徐々に市場が拡大している。
- 日本国内では特に CRM 市場の伸びが顕著で、2022年には1,430億3,600万円の規模になると予測されている。
- 2020年は営業 DX が大きく動いた年となった。営業活動の各フェーズでさまざまなソリューションが登場している
《引用文献》
1)クラウドwatch, 2017年の国内CRM市場規模は前年比10.1%増の1056億4900万円、IDC Japan調査, https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1137244.html
2)ITR, ITR Market View:ECサイト構築/CMS/SMS送信サービス/電子契約サービス市場2020, https://www.itr.co.jp/report/marketview/M20001200.html
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