セールスイネーブルメントの実践事例とポイント【ウェビナーレポート】

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要約SUMMARY
  • セールスイネーブルメントとは営業活動改善のための一連の取り組みのことで営業プロセスの型化などを指す
  • セールスイネーブルメントが必要とされる背景として、リモートワーク、オンライン商談の普及などの環境変化が挙げられる
  • セールスイネーブルメント実践事例として新人営業の即戦力化に効果があり、座学、実践トレーニング人数が増えるほど知見が乗数的に蓄積するシステムなどがある

Magic Moment では、「新人営業を即戦力化する仕組み」のウェビナーを開催しました。

セールスイネーブルメントの一環として、新人営業を早期戦力化させる仕組みの構築は重要ポイントです。

営業支援 SaaS「Magic Moment Playbook」を提供する弊社では、営業未経験のメンバーでも、1ヶ月で既存メンバーに比肩する営業成果をあげる人材に育てる仕組みが構築されています。

Magic MomentPlaybook ご紹介

ウェビナーの内容をもとに、新人営業を即戦力化させるための取り組み事例における6つのポイントを紹介していきます。

セールスイネーブルメントとは

営業成果の向上のための包括的な取り組み

セールスイネーブルメントとは、営業活動改善のための一連の取り組みを指します。例えば、営業プロセスの型化、すなわち営業プロセスにおけるアクションや情報について一定の基準を設定して組織内で共有する仕組みを作成する手法があります。

また、組織の営業活動の状況や成果を可視化することで、営業効率性を高める方法もあります。さらに、営業に関する情報を蓄積したうえで、データ分析に基づいた営業改善施策の立案・実行する仕組みを確立するのも有効です。

セールスイネーブルメントとは、これらさまざまな施策を組み合わせて、営業活動全体を強化する取り組みといえます。

セールスイネーブルメントが必要である背景 

図1:営業を取り巻く環境の変化(Magic Moment作成)

近年の営業組織や営業を取り巻く環境変化を背景に、セールスイネーブルメントの必要性が高まっています。

例えば、オンライン商談の普及やリモートワークの普及といった、営業手法の変化への対応が求められる時代に。また、日本における少子高齢化を背景とした営業力不足、The Model 化、すなわち営業の分業化の進行なども営業活動のあり方に変化をもたらしています。

新型コロナ禍における社会環境の変化を背景に、オンライン商談やリモートワークの普及などが起こり、営業のやり方が急速に変化しました。

この変化に対応するため、セールスイネーブルメントへの注目が急速に高まっています。例えば、Google のデータをみると、2020年下半期以降「セールスイネーブルメント」の検索結果などをもとにした「人気度」が急上昇しています。1)

セールスイネーブルメントに有効なツールについてはこちらでも紹介していますので、あわせて読んでみてください。

あわせて読みたい:セールスイネーブルメントツールとは?導入メリットとおすすめツール6選

セールスイネーブルメント実践事例

インサイドセールスの3つの型

図2:セールスイネーブルメント(Magic Moment作成)

分業型:最もポピュラーな型

顧客の営業ステージに応じて、インサイドセールスとフィールドセールスが分業する仕組みです。

社内のリストに基づいて、リード顧客に対してはインサイドセールスがアプローチを取ります。見込みの高さについて、社内の基準をクリアした顧客に対してはフィールドセールスが引き継いで、より具体的な商談活動を行い、成約を目指す手法です。

これは Salesforce が提唱する The Model 型組織のあり方で、ここの活動領域が明確になることで、生産性が向上するというメリットがあります。一方で、途中で営業担当者が変わるため顧客にとって相手の役割がわかりづらい、引き継ぎもれのリスクや営業責任の所在が不明瞭になるなどのデメリットも存在します。

独立型:営業員の評価が行いやすい

顧客の発掘から成約までインサイドセールス、フィールドセールスが協働して進める仕組みです。商材や営業地域、顧客規模、新規・既存顧客など一定の基準のもと、顧客をセグメント分けして、各セグメントごとにインサイドセールス、フィールドセールスの両方を配備します。HubSpot 社の提唱する「フライホイール型」の活動を行うインサイドセールスに多く採用されています。

両者が特定のセグメントを継続的にカバーするため、引き継ぎ漏れなどは発生しにくく、またそのセグメントの業績に応じて対応する担当者を評価できるため、営業評価をおこないやすい仕組みです。

一方で、全ての営業員が営業プロセス全体に貢献できるよう、幅広いスキルが求められます。また、顧客数が多いと、訪問活動のためのリソースが不足するリスクもあります。

協働型:検討期間が長い商材で見られる

インサイドセールスとフィールドセールスが一つのチームとなって、アカウントプランを立てて営業活動を推進する手法となります。ITSMA 社が提唱する ABM(アカウントベースドマーケティング) 型の組織です。

主にエンタープライズ、すなわち中規模以上の企業向けの BtoB ビジネスにしばしば採用される営業方法で、一定の企業もしくは企業群を営業相手として、戦略的なアプローチや密な顧客フォローができるのがメリットです。

一方で、メンバーの質や相性などによりチームの生産性に差がでやすいというデメリットもあります。

なお、今回は3つの型のうち、最もポピュラーな分業型でのセールスイネーブルメントの実践事例を紹介していきます。

実践事例を踏まえたセールスイネーブルメントの6つのポイント

今回のセールスイネーブルメント実践事例では、新人営業の即戦力化にフォーカスをして進められています。事例のなかでは、次の6つのポイントが明らかになりました。

  • 短期集中の座学+実践トレーニング(架電)は効果的
  • トレーニング下、活動量は成果と比例する重要な指標
  • 人数が増えるほど知見が乗数的に蓄積し、オンボードが容易に
  • 営業活動の記録と示唆出しが要諦であり、合意形成に着目
  • 既存 SFA/CRM で上記を実現するには大きくコストがかかる
  • 海外では Sales Engagement Tech が勃興しており、日本でも取り組みがはじまっている

それぞれのポイントについて、詳しく紹介していきます。

1.短期集中の座学 + 実戦トレーニング(架電)は効果的

図3:セールスイネーブルメント実践(Magic Moment作成)

上図はトレーニングのスケジュールを図示したものですが、座学は当初3日の短期集中で済ませているのが特徴的です。

インプットを集中的に完了したのち、速やかに実践トレーニングに移すことで、インプットしたノウハウを営業活動に活かし、早期に営業スキル向上の効果が得られます。

図4:セールスイネーブルメント実践(Magic Moment作成)

座学の内容は大まかに分けて、1日目が企業理解、2日目は顧客理解、3日目は手法理解となっています。

1日目は企業全体、組織全体のミッションを共有します。インサイドセールスは近視眼的な目標にとらわれて、営業の意味合いが見えづらくなりモチベーションを下げてしまいかねません。そこでまずは全体のミッションを明確にして、自分の営業活動が企業に果たす役割を意識させます。

2日目は顧客理解を進めます。ターゲット顧客が属する業界を理解し、また顧客の特性やしばしば発生する悩みなどのインプットを行います。また、BtoB 特有の営業プロセスについても、ここで共有します。

3日目は、今後の実践に向けて、手法理解を進めます。前日に顧客の特性や営業プロセス全体を習得させることで、営業手法について、その意味合いや求められる効果などについても理解してもらうことが可能です。アウトバウンドメールやコールについて、実際に所属する予定の部署と連携して練習を行い、フィードバック・改善策の検討を進めます。

顧客の悩みがすでに顕在化しているケースの多いインバウンドではなく、あえてアウトバウンドに対する練習をするのが重要です。

顧客の悩み・ニーズを能動的に考えて、新規ビジネスの見込みを立てる力や、顧客ニーズを高いレベルで解決するような大きな受注を取れる営業スキルを培うことができます。

2.活動量は成果と比例する重要な指標

営業活動量を増やすと、比例して成長速度が早まり、また結果も早く出せるようになります。

図5:活動量は成果と比例する重要な指標(Magic Moment作成)

営業活動量を増やすと、より多様な見込み顧客の課題と解決策に取り組む経験が蓄積されます。そのため、早期から顧客に対して質の高いアプローチが取れる営業員に成長することができるのです。

また、営業活動量を増やすということは、すなわち顧客と接点を持つ回数が増えるということを意味します。例えば一回あたりの接点の成功率が低かったとしても、多くの顧客にコンタクトすれば、早期から結果を出すことが可能です。

スムーズに新人営業員の活動量を増やすうえでは次の2点を実践するのが有効です。

  • 合意項目・トークスクリプトの作成
  • 反復作業の自動化
図6:課題仮説を合意しアポイントを取得する(Magic Moment作成)

Playbook に営業活動において合意すべき項目をまとめて、共有しておきます。

例えばこちらの図では課題、決裁権や導入時期、アポイント日時を、コミュニケーションの中で明確にしておくべき項目としています。また、それぞれの項目に関するトークスクリプトをまとめておけば、スムーズに必要な合意項目を引き出すことが可能です。

また、ルーティンの多さ、自前で調査、準備が必要なタスクの多さが、営業活動の量を阻害する要因になることも少なくありません。そこでルーティンのタスクや、顧客から問い合わせの多い資料に関するメール送付を自動化するなど、営業の手間を省く取り組みが活動量の増加に役立ちます。

なお、 Playbook の使用法については、こちらのお役立ち資料も参考にしてください。

→ダウンロード:営業の価値を最大化するPlaybook入門ガイド – Accel by Magic Moment 

3.人数が増えるにつれて知見が乗数的に蓄積し、オンボードが容易に

営業員の人数が増えると、各人の営業員の特徴や成果について豊富なデータが集まり、横串で営業員を比較可能になります。より質の高いデータのもと、営業員の成果や改善すべき点などが明確になるため、質の高いフィードバックを実施できるようになります。

また、営業活動に関わる業界や顧客情報や営業テクニックに関する情報なども、営業員が多ければ多くの知見が共有されます。これらをチーム全体の営業力強化につなげることが可能です。

4.営業活動の記録と示唆だしが要諦であり、合意形成に着目

データ活用を通じて営業活動の成果を高めるためには、記録する活動内容やそれを踏まえたコーチングが重要です。

表面的なアポ数だけでなく、合意形成やアポに対する成約後の平均単価など営業活動の状況を的確に捉えられる情報を集めるのが有効です。

図7:合意形成と全体最適(Magic Moment作成)

上の図は二人の営業員の営業活動の記録のサンプルですが、アポ件数だけであれば田中さんの方が多く、営業員として優れているように見えます。

しかし、右図で見ると、山田さんの方が、今後のアプローチ日時の確認や、予算合意など、営業活動を進めるうえで重要な合意を形成しています。

また、決裁権者へのアプローチにも成功しているため、決裁権者で押し戻されるリスクが少なく、スムーズな成約が期待できます。また、アポに対する売上の平均単価や合計売上も山田さんの方が高く、こちらの方が効率的に営業成果を上げていることがわかります。

このように多面的な情報の記録が、営業員の正確な評価や情報をもとにした的確なコーチングが可能になります。

5.既存 SFA/CRM で上記を実現するには大きくコストがかかる

過去の統計に基づくと、SFA/CRM を導入しても、顧客管理に留まっており、本来の SFA/CRM の導入目的となる顧客増加や既存顧客の売上拡大につながっていない企業が多くみられます。

図8:SFA/CRMでも根本的な解決はなされていない(Magic Moment作成)

また、営業活動をルール通り正確に記録させるのも容易ではありません。

  • 不正確なデータの入力
  • 企業指定の SFA/CRM 以外でのデータ管理の併用
  • 全てのデータを入力できていない

HubSpot の統計では、多くの営業員が適切にデータ入力ができていない現状が浮き彫りとなっています。

図9:営業記録の徹底の難しさ( HubSpot 社『“Why Your Sals Reps Hate CRM Software”2)より Magic Moment 作成)

一方で SFA/CRM の利用コストは高額なものになっているケースが多いです。 Salesforce や HubSpot による調査をもとにした情報を集約すると、SFA/CRM に関する投資は、営業担当者1名あたり年額150万円を超えます。

特に営業員のデータ入力のコストが大きく、金銭換算すると年額100万円ほどになるのです。

図10:SFA / CRM に関する投資( IDC 社『“White per sponsored bySalesforce”3)より Magic Moment 作成)

CRM における営業員のデータ入力の課題については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

→あわせて読みたい

【営業責任者必見】なぜあなたの部下は CRM ツールを入力しないのか – Accel by Magic Moment 

6.海外では Sales Engagement Tech が勃興しており、日本でも取り組みがはじまっている

世界的な調査機関であるガートナー社は 、近年 Sales Tech に「 第三の波」が到来しているとの見解を示しています。

図11:Sales Engagement Tech(Magic Moment作成)

既存の SFA/CRM を用いた営業活動には次のような課題が顕在化しています。

  • データ入力の手間がかかり、不完全なデータが形成される
  • 属人的な判断に依存し、効率的な営業活動を阻害
  • データ分析や予測に工数がかかる
図12:ツール/データ連携の課題が顕在化(Magic Moment作成)

米国においては先立ってツールの改善が進められてきましたが、そこでは、組織内のツール連携や入力プロセスの不備などが、ツール/データ連携における課題となっていることがわかりました。

  • 組織のサイロ化により連携が困難
  • 組織ごとにツールが異なり連携が不充分
  • 現場が使いこなせずデータが不完全

「第三の波」においては、こうした課題の解決が試みられています。全社でのデータ共有や入力、分析の自動化、そして今後の営業活動の判断に必要な販売やトレンドの予測、効果的な営業活動に対する示唆や提案までおこなってくれる仕組みの構築が進められています。

この第三の波の推進を担うテクノロジーがセールスエンゲージメントプラットフォームで、米国では、SalesLoft や Outreach といったユニコーン企業が手がけており、 Facebook や Microsoft といった名だたるグローバル企業が導入しています。

これらのツールは英語のみで現在リリースされていますが、日本でも唯一のセールスエンゲージメントプラットフォームである「 Magic Moment Palybook」というツールを展開しています。

単独で運用することも可能ですが、Salesforce など既存のツールと組み合わせて利用している企業も少なくありません。

同ツールでは顧客データの分析や営業活動の提示をシステムが自動でおこなってくれます。営業活動を迷うことなく進められ、分析結果をもとに質の高い提案活動が可能となります。

営業活動の量と提案の質を同時に非連続的に伸ばすことで、売上や生産性への大きな向上が見込めます。すでに、LINE や凸版印刷などの大手企業も含む、多くの企業で導入が進められています。

Magic Moment Playbook についてさらに詳しく知りたい人は、次の記事を参照してください。

→あわせて読みたい

5分でわかる「 Magic Moment Playbook 」 – Engagement Academy  

Magic MomentPlaybook ご紹介

まとめ

営業活動における環境変化を背景に、セールスイネーブルメントの重要性への注目が高まっています。

今回は、ウェビナーを基にその取り組み事例の一つである新人営業の教育コンテンツをもとに、セールスイネーブルメントにおける6つのポイントを紹介しました。

営業活動のさらなる効率化や成果向上のためには、 セールスエンゲージメントプラットフォームの導入をおすすめします。

Magic Moment では営業組織を強化するためのポイントをまとめた「営業組織の育成ハンドブック」を提供しています。営業組織に課題を感じている人は、是非 こちら をダウンロードしてみてください。

《引用文献》

1)Google トレンド(2019-01-06〜2023-01-07). https://trends.google.co.jp/trends/explore?date=2019-01-01%202023-01-01&q=Sales%20Enablement&hl=ja, (参照 2022-09-22)

2) Hubspot(2017-02-01)https://blog.hubspot.com/sales/why-your-sales-reps-hate-crm-software?__hstc=191447093.bb564480bb2b630f411921876b44ad7c.1687331839781.1692165910599.1692772426179.10&__hssc=191447093.1.1692772426179&__hsfp=3329251138&_ga=2.88850267.1991342041.1692772427-2146971749.1687331840&_gl=1c62nyk_gaMjE0Njk3MTc0OS4xNjg3MzMxODQw_ga_65X9B5QKRK*MTY5Mjc3MjQyNi4xMi4xLjE2OTI3NzI0NzMuMTMuMC4w, (参照 2022-09-22)

3) IDC White Paper sponsored by Salesforce, “The Salesforce Economy in the Next Five Years: 4.2 Million New Jobs, $1.2 Trillion of New Business Revenues,” October 2019. Ecosystem includes all companies that provide the products and services that surround a Salesforce implementation.(参照 2022-09-22)