インサイドセールスの立ち上げに必要な6ステップ
- リモートでの営業スタイルが好まれるようになり、インサイドセールスにも注目が集まっている
- インサイドセールスの立ち上げは、チームの結成、部門連携と KPI設定/ROI 設定、部門間の KPI 設定とルール決め、ツールの設定と案件ステータスの定義、顧客データの精査とデータ入力の業務設計、セールス・イネーブルメントという6つのステップで行うのが理想的
- 6つのステップを行うと KPI や目的に対して体制が紐付き、その体制をオペレーションのルールや使用ツール、取得したデータ、メンバーの育成の枠組みが支える形になる
コロナ禍で従来の営業手法が変化していく中で、The Model のような分業型の営業体制の立ち上げを検討・実施している企業が増えています。その中で、多くの企業がインサイドセールスの立ち上げを目指しています。ただ、インサイドセールスの立ち上げや運用に苦戦している企業も多く見受けられます。
主に育成観点や、PDCA を回す上での検証・改善のための分析などに課題を感じています。
まだまだ市場にインサイドセールスの経験者は少なく、未経験者を早期に即戦力に育成する必要がありますが、社内に経験者もおらず、なかなか難しいのが現状です。
分析では、インサイドセールスの立ち上げにおいて KPI をどう設定したら良いのか分からず、結果として検証・改善できないといった課題があります。
そこで本記事では、インサイドセールスにおける立ち上げに必要な6つのステップについて解説します。
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また、弊社 Magic Moment では、インサイドセールスの立ち上げから運用まで一気通貫で支援する「Revenue BPaaS」というサービスを提供しています。
目次
コロナ禍でインサイドセールスの立ち上げが増加
2019年から2020年にかけて、新型コロナウイルスの影響で営業活動をリモートで実施する企業が増えました。HubSpot Japan の「日本の営業に関する意識・実態調査2021」では、買い手が考える好ましい営業スタイルが訪問からリモートに逆転するなど、営業方法に大きな変化が生まれています。
リモート営業の普及に伴い、インサイドセールスにも注目が集まっており、多くの企業がインサイドセールスの立ち上げを目指しています。
2023年の現在は、約40%の企業がリモート営業を導入しており、ますます需要は高まっています。
また、この傾向から2024年は更にリモート営業を導入する企業は増えるでしょう。
なぜなら、顧客の購買変化と業務効率化による人手不足対策が挙げられるからです。
顧客の購買変化とは、インターネットの普及により、購買担当者の行動は、自分で必要な情報を調べ、ある程度対象の製品やサービスを絞り込んでから営業担当者に問い合わせるように変化してきました。
このような行動の変化に対応するには、顧客が求める情報を適切なタイミングで提供することが求められ、検討段階の初期から継続的にコンタクトを行うインサイドセールスによるコミュニケーションが適しています。
業務効率化による人手不足対策については、日本国内では、人口減少による人手不足が深刻になりつつありますが、人手不足を解消し業務を効率化する手段としてもインサイドセールスが有効です。
インサイドセールスの導入により、営業担当者のスキルに応じた適切な分業体制の構築や確度の高い見込み客への対応に注力するなど、営業活動の効率化を実現できます。
日本国内では、IT業界や外資系企業を中心に、人手不足対策としてインサイドセールスを取り入れる企業が急速に増加しています。
半数近くが直近1年でインサイドセールスを立ち上げ
HubSpot Japan の「日本の営業に関する意識・実態調査2021」では、2020年末時点で、国内企業の37.4%がインサイドセールスを導入しており、うち46.9%は直近の1年以内に立ち上げ・導入をした企業でした。インサイドセールスを立ち上げた企業がこの1年で大きく増えたことがわかります。
そこで本記事では、インサイドセールスの立ち上げ時に多くの企業が抱える課題や、インサイドセールス活用事例など、スムーズに立ち上げるための6つのステップを解説します。
インサイドセールス導入・立ち上げの難しさ
インサイドセールスの導入が進む中、困難な点もより明らかになりました。
インサイドセールスの立上げにあたり、よくある悩みとして
- 自社にあった形が分からない
- 組織内での役割分担が分からない
- 担当者のスキルや育成方法が分からない
- 顧客体験を悪化させることにならないか不安
といったことが挙げられます。
また、実際にインサイドセールスを始めた企業の課題として、
- デジタルマーケティングで創出した見込み顧客(リード)をフィールドセールスに繋げることができない
- フィールドセールスに繋げたものの、商談に繋がらない
- インサイドセールスの成果をどのように検証し、改善に繋げれば良いか分からない
- メンバーが定着しない・疲弊している、メンバーが成長しない
といったことが挙げられます。
インサイドセールスの難しさについては、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。
インサイドセールの立ち上げの6つのステップ
次に、インサイドセールス立ち上げについて、6つのステップで具体的な取り組みを紹介します。
ステップ1では、商材とプロダクト単価から、理想的な組織体制やリソースについて全体のフロー図にします。
ステップ2では、KPI の設定と ROI の測定を行います。KPIの数字がわからないと、マーケティングチーム、インサイドセールスの動きも決まりません。
次にステップ3として、営業担当者がどの KPI を目指して日々の活動をするのか、どのようなアクションやアプローチの回数でメールを送るのか、といったルールを決めます。マーケティングオートメーション単体だと顧客の育成が非常に難しくなりますので、この役割は営業のインサイドセールスに持たせることを推奨しています。
ステップ4として、MA ツールや CRM が代表的なツールですが、海外ではインサイドセールスで使えるツールに Outreach や SalesLoft があります。これらのツールは、インサイドセールス担当者に活動を示唆したり、メールのアクションを推奨します。
ステップ5として、顧客リストのクレンジングやターゲットリストの選定を行います。
ステップ6として、営業担当者の育成方法についてご紹介します。
Magic Moment では、インサイドセールスの立ち上げを検討されている皆様に向けて、インサイドセールスで陥りがちな落とし穴と共に、正しく取り組むために抑えるべきポイントについて解説する資料を無料で提供していますので、こちらもご活用くださいませ。
Step. 1 インサイドセールスチームの結成・立ち上げ
まずインサイドセールスチームの結成です。代表的には、3つの体制例があります。
- アポイントメントを取るところまでインサイドセールスが行う
- 全ての営業プロセスをインサイドセールスが行う
- インサイドセールスとアカウント営業が協業する
これに対し、商材をどういうものにするか、単一または複数にするのかという議論が必要です。
大企業ではインサイドセールスの立ち上げは難しい面があります。商材がたくさんある場合や、エリアに従業員がたくさんある場合、そしてルート営業でコロナ禍でも顧客を訪問した方がいいという考えの企業では、1つのプロセスだけを切り出して組織作りをするのは難しくなります。
1つの商材だけを切り出しても、実はアカウント営業で色々なところに営業担当者が200社ほどいて商材が紐付いている場合があります。しかし実際にその商材を200社にアプローチできているのは20社だけ、というような例も存在しており、社数に対して商品のカバレッジ、つまり営業担当者がカバーできる範囲が往々にして効いていないことがあります。
そこで、機能で売るような商品よりも、ソリューション営業のような、インサイドセールスの提案商材として合いそうなものから始めていくことをおすすめしています。
- 商材
- カバレッジ
- インサイドセールスでどこの部分までやれるのか
を考えます。
これは新規受注の営業ですが、カスタマーサポートや訪問していた業務をオンラインに切り替えることも可能です。自社で業務効率化のためのインサイドセールスなのか、売上を伸ばすインサイドセールスなのかも考える必要があります。
この記事では、売上を伸ばすインサイドセールスに焦点を当てて解説します。
売上を伸ばすインサイドセールスでは、見込み顧客の育成が重要です。
オペレーションの全体像からみて、どこまでをインサイドセールスが担うのか、部門間での合意が必要になるので、オペレーション全体像の一枚の絵を描くことをお勧めしています。
同時に、販売までのプロセスを業務フロー図にして、社内の理解を深める必要性があります。データの流れを可視化し、有効な活用方法を検討できます。
Step. 2 関連部門との連携と KPI 設定/ROI 測定
ステップ2では、カスタマージャーニーに紐づく KPI 設定と ROI 測定(Marketing、Inside Sales、Sales、Customer Success)について解説します。
インサイドセールスの KPI は、商談化、商談数を見ます。最終的にはフィールドセールスで受注ができているか、その先に繋がっているのかまで横軸でデータを見ていく必要があります。
全体最適を考えながらもインサイドセールスとしては商談化、商談数を見るのが一般的です。
アポイントメント数や商談数を増やせばいいといって、無駄なアポを作っても仕方がないので、マーケティングとインサイドセールスの部門間での担当者のやりとりは最低限必要になります。
部門連携は ROI の測定に必須となるので、立ち上げ時点から連携について考えられるのが理想です。
MA ツールの Marketo には ROI を測定できる機能があります。しかし国内でも利用者が少なく情報が少ないので、設定からリードの可視化と PDCA を回す仕組み作りをサポートしています。
Hubspot でも、新規コンタクトやキャンペーンで影響を受けたコンタクト、商談数などを MA ツールで見ることができます。
こういった MA ツールを活用すると、スプレッドシートでの管理が不要になり、データの見え方が自動化されます。
Step. 3 KPI 設定とルール決め
次に、インサイドセールスの営業担当者の KPI について紹介します。すべての担当者に同一のアクションをとってもらい、ノウハウの属人化を防ぎます。以下の項目に対して KPI とマニュアルを策定します。
- 一人当たりのコール数設定
- アクション
- Playbook
- メールテンプレート設定
- インサイドセールス活動の設定
具体的には、トリガー条件とそれに対するアクションの雛形を策定します。
セミナー参加日から何日目に電話をし、メールをするのかといった具体的な活動を考えます。その他のリードでも適切な回数と複数回のアプローチができるように、マニュアル化します。
最適なアクションをするタイミングについては、MA ツールがあると顧客の興味関心が可視化されます。CRM ではデータで顧客の情報を知り、最適なタイミングでアプローチします。
1回目の架電でだめであっても、データを共有して見込み顧客のニーズを知っていれば、2回目でのアプローチを有効に行うことができます。インサイドセールスの人がアプローチしやすいようなデータ環境を整え、どの情報をもとにアクションするのかの通知も受け取れるような仕組みを整えていく必要があります。
次にどのようなトークをしていくかにおいて、プレイブックを準備し、営業の合意形成を型化するのがお勧めです。
顧客とインサイドセールス担当者が合意していく点(費用、決裁権、納品時期など)を明確にして、効率的な営業につなげます。
Step. 4 インサイドセールスツールの選定案件ステータスの定義
データを基にアクションを提示するツールが出てきています。代表的なツールとして、SalesLoft や Outreach があり、インサイドセールスで利用している企業が海外では多く見られます。
MA ツールだけでは営業担当者のアクションにつなげるのが難しいですが、こういったツールを活用することで営業担当者ひとりひとりの活動が重要視され、リードに対してのアプローチをツールが支援します。
MA ツールが提示する次のアクションを見てメールや電話をし、データをインプットして、そのデータが CRM に戻っていく形になります。データベースである CRM に加えて MA ツールを活用することで成果が出やすくなり、営業の負担も減らすことができます。
Step. 5 顧客データの精査、データ入力の業務設計
自社にあるデータをリッチにし、より解像度を高めることが、インサイドセールスでのデータ活用において重要です。例えば、商工リサーチや帝国データバンクの情報を取得して自社の既存のデータに付加することで、インサイドセールスやマーケティングにおいて、よりニーズに合った効果的で精度の高い営業活動を行うことができます。
精度の高いアクションができると、営業担当者の無駄なリソースを使うことが減り、より成果の出やすい企業にアプローチできるようになります。
また、データ入力の設計にあたっては、ステップ1で作った業務フロー図と照らし合わせ、どのタイミングで行うのかを決定します。
Step. 6 セールスイネーブルメント(Sales Enablement)
営業オペレーションを可視化すると、営業担当者のアクションがデータ化されます。その上で理想的な営業担当者となるために必要なケイパビリティを把握し、採用・育成プランを立てます。営業オペレーションのデータを取れると、具体的かつ効果的なトレーニングを施すことができます。
大企業でのインサイドセールス活用・立ち上げ事例
実際に、大企業でもインサイドセールスの活用事例が増えています。
NTT東日本
対象商材:光ファイバー回線サービス「フレッツ光」
IS の立ち上げタイミング:
NTT東日本では、2015年に BtoC の営業から BtoB に力点をシフトしました。2017年にインサイドセールス専門チームを結成し、リードの取得からクロージングまでを行う業務を開始しました。開始時点では MGR 1名とコンサルタント3名の4人体制でした。
成果:
受注率は3〜4倍に
月間 CV 数は10倍に
受注額は34倍に
立ち上げにおける工夫:
人員教育では、アウトバウンドとインバウンドのスキルをフォーマット化し、一対一の対面での教育でモチベーション作りを行いました。また目標達成度を可視化し、明確な KPI を策定しました。
営業部との調整では、法人営業部門への警戒感へ対応するため、売上を全て営業部門の成果としました。一部サービスのリードから対応を始めて受注実績を積み上げ、対応サービス数を増やす段階的なアプローチを取りました。
KPI と仮説検証においては、まず以下の詳細な KPI を設定しました。
- UU 数
- 広告のクリックスルー率
- CV 数
- CV 率
- CPA
- 受注率
- 1件あたり受注額
その上で、データの可視化とデータを活用した PDCA を回しました。
USEN-NEXT Design
対象商材:
店舗向け音楽配信サービス
IS の立上げタイミング:
USEN-NEXT GROUP は、グループ企業のインサイドセールス業務を一手に担う新会社として2009年に設立されました。
成果:
- Magic Moment Playbook の導入で「商談完了率」が70%に増加
- 業務の効率化はコストの削減や時間の創出にも直結し、経営面でもインパクトを生むことができた
立ち上げにおける工夫:
新卒を対象にした営業実践を通した研修プログラムで Magic Moment Playbook を活用しました。自分が接点を持った見込み客から、いつ何件受注につながったか、つながらなかったか、見込み客に対しては MA でどのようなメールが配信されていて、どれくらい開封されているかなどを全て可視化しています。
また、今まで使っていたGoogleカレンダーやスプレッドシートなどは一切使わず、Magic Moment Playbookを使うようトップダウンで進めました。
オリックス
対象商材:
幅広いサービスラインナップ
IS の立上げタイミング:
2005年にインサイドセールスを担当する広域事業部を設立し、2015年に Market(MA ツール)を導入しました。1人あたり600〜700社を担当し、電話やメールなどの非対面で商品・サービスの提案を行っています。
成果:
- 定期架電対象が6万社から26万社へと拡大
- メールニュース配信可能件数が約3万件から約8万件に拡大
立ち上げにおける工夫:
MA ツールを活用し、メールの配信履歴と Web アクティビティのスコアリングを実施しました。また、全国の営業担当者から約15万枚の名刺をかき集めて、Sansan に入力しました。
まとめ
- リモートでの営業スタイルが好まれるようになり、インサイドセールスにも注目が集まっています。
- インサイドセールスの立ち上げは、チームの結成、部門連携と KPI 設定/ROI 設定、部門間の KPI 設定とルール決め、ツールの設定と案件ステータスの定義、顧客データの精査とデータ入力の業務設計、セールス・イネーブルメントという6つのステップで行うのが理想的です。
- 6つのステップを行うと KPI など目的に対して体制が紐付き、その体制をオペレーションのルールや使用ツール、取得したデータ、メンバーの育成の枠組みが支える形になります。これらのステップを通して、売上向上に貢献していくインサイドセールスの社内体制を整えていきましょう。
Magic Moment では、インサイドセールスの立ち上げや成果のでる営業プロセスの構築をサポートしています。こちらの記事では、実際にどんな営業プロセスを構築するのか詳しくご紹介しておりますので、是非ご一読ください。
参考文献
Web 担当者 Forum『リード獲得数10倍、受注率4倍に増やした、NTT東日本の「インサイドセールスセンター」』https://webtan.impress.co.jp/e/2020/05/13/35455
USEN-NEXT HOLDINGS 「会社情報」
https://usen-next.co.jp/company/profile.html
SalesZine 「「運用の例外を認めない」リーダーシップで、短期に営業合理化を実現したUSEN-NEXT Design」https://saleszine.jp/article/detail/2508
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