オンライン営業を成功させる型化(Playbook)の重要性
- 顧客との関係性構築やメンバーのマネジメントに課題が生じやすいオンライン営業では、営業組織体制やオペレーション設計は顧客起点であることが重要です。
- オンライン営業では、顧客との信頼関係構築を強化する上で、営業プロセスの設計と営業活動の型( Playbook )化が必要となります。
- Playbookをベースに、営業人材が体型的・効率的に学習でき、Playbookに沿った行動をすることで営業の成果(LTV)を最大化できます。
2020年前半からのコロナパンデミックで加速したDXの影響で、2021年現在ではオンライン営業が当たり前になりつつあります。
しかし、オンライン営業を行う組織を立ち上げたが成果に繋がっていないことや、元々対面で行なっていたが、オンライン営業へシフトしなければならない状況になり、苦戦を強いられている企業様も多いのではないでしょうか?
本記事では、オンライン営業の現状やメリット・デメリットを考察した上で、成功するためには必要な行動について解説します。
→ダウンロード:オンライン営業の価値を最大化するPlaybook入門ガイド
目次
オンライン営業へのシフト
HubSpot Japan による「日本の営業に関する意識・実態調査2021」では、2020年12月時点での買い手が考える好ましい営業スタイルは、2019年に訪問営業が優位だったところからオンライン営業が逆転しました。
それに伴い、顧客が営業担当者に求めるニーズも変化しました。オンライン営業ではZoomやbellfaceをはじめとしたテレビ会議などのデジタルツールを使いこなせることや、商品の説明力・提案力、理解を深めるための資料や動画の工夫が、対面営業よりも求められます。
オンライン営業が普及する中で、新規開拓を中心にインサイドセールスに注目が集まっており、多くの企業が立ち上げを目指しています。2020年末時点で、国内企業の37.4%がインサイドセールスを導入し、うち46.9%は1年以内に導入しました。
では、オンライン営業を成功させ、成果を最大化させるためにはどのような要素が必要なのでしょうか。
オンライン営業のメリット・デメリット
当たり前ですが、オンラインで営業するにあたり、メリットとデメリットの双方があります。
WizBiz株式会社が2021年7月に発表した調査結果を元に、営業のオンライン化によるメリットとデメリットを考察していきます。2)
オンライン化のメリット
まずはじめに、営業のオンライン化によるメリットとして以下のような点が挙げられました。
- 『移動コストが削減できる(75.2%)』
- 『商談相手の負担を軽減できる(30.6%)』
- 『営業対象を全国に広げられる(27.7%)』
- 『商談までのリードタイムを短縮できる(25.0%)』
- 『商談数を増加できる(20.7%)』
総じて、移動コストや商談相手の負担の軽減といった、今までのオフライン営業に比べて営業活動を効率化できる傾向が見られます。
また、コミュニケーションが全てデジタル化するため、営業活動の大部分をデータとして記録することができます。そのデータをもとにさらなる効率化を進めることが可能となる点もメリットだと言えます。
オンライン化のデメリット
オンライン営業では営業活動を効率化しやすいというメリットがある反面、以下のようなデメリットも存在しています。
- 『商談相手の反応や温度感が分かりにくい(54.9%)』
- 『商談相手の心理的障壁が上がる(34.9%)』
- 『商談相手からの信頼を得にくい(34.7%)』
- 『商談相手が持つ課題などの情報を得にくい(29.1%)』
オフラインではアイスブレイクなどノンバーバルコミュニケーションである程度補っていた信頼関係の構築や、相手の温度感の見極めが、画面上での会話のみでは難しくなっている傾向にあります。
また、その他の課題としてよく見られるのが、顔が見えない状況でのマネジメントの難しさです。テキストコミュニケーションでは意思疎通が完全にできなかったり、本当に活動をしているのか見えなかったりすることから、メンバーのマネジメントに不安を感じる営業責任者が増えています。
オンライン営業の成功の鍵となるインサイドセールス
顧客との関係性構築やメンバーのマネジメントに課題が生じやすいオンライン営業では、顧客起点の営業組織の構築が肝要となります。
特に、web 上でのリード獲得の機会も増えている中、リード獲得・育成を担うインサイドセールスを顧客起点で運用することが成功における重要なコツとなっています。
インサイドセールス(オンライン営業)の定量的チェック項目
広告やセミナー(ウェビナー)などマーケティング活動を通じて発掘したリードの獲得・育成を担うインサイドセールスの活動を成果に繋げるためには、正しい体制と KPI が必須です。以下では、そのための定量的チェック項目をご紹介します。
体制
リード獲得プロセス
ターゲット顧客の行動に基づいて、リードを創出する標準化された方法論を持っているか
リード育成プロセス
数多くの手法の中で、採用するリード育成プロセスが決定しているか
リソース
採用したリード育成プロセスを実行する為のリソースは揃っているか
KPI
予測
売上を予測する為の方法を持っているか(アポがゴールになってないか)
ベロシティ(スピード)
リードを育成し、商談化、受注までの期間は競合と比較して短いか
機会転換率
リード獲得率、商談化率は競合より高いか
オンライン営業の体制とKPIの見直し
体制と KPI を見直すには、
- オペレーション:ルール設計
- ツール:指標となるデータを正しく取得する
- イネーブルメント:メンバーの育成
の3つの要素から、体制とKPIの見直しを行います。
先行指標:PCR( Pipeline Creation Rate )
PCR( Pipeline Creation Rate )とは、売上が継続的に伸長するかを判断する先行指標です。
PCR = {(今月創出した特定条件のパイプラインの総額 / 前月創出した特定条件のパイプラインの総額) – 1 }x 100(%)
で算出されます。
パイプラインが創出されるということは、見込み・既存リードとの関係が築かれ、サービスに興味を示されている状態です。
月次・四半期で売上が変動し、商談の質はまちまちなのにもかかわらず、組織のリーダーは売上を今後も伸ばし続けるために手を打っていく必要があります。
意思決定を下す際に遅行指標の売上で成否を判断すると、中長期トレンドがわからずに決定を下さなければいけなくなります。それに対して、PCRの目標を指標とすると、中長期のトレンドを把握した上での意思決定が可能になります。
例えばPCR + 10%を維持できていれば、中長期の売上はのびるだろう、というように予測ができます。
ツール・オペレーション・イネーブルメントによってセールス組織が機能し、顧客体験が向上し、結果として高い PCR 水準を実現できます。
顧客起点で一貫した営業プロセスを構築
オンライン営業では、特に顧客との信頼関係の構築等が課題になる中で、ツール・オペレーション・イネーブルメントを実現するためには、顧客起点で設計・構築することが大前提となります。
顧客体験を起点にした組織設計と型の構築
ロイヤルカスタマー(生涯価値の高い顧客)をベースに、「顧客に提案(提供)する体験=合意形成」を共通認識とします。顧客との合意形成がなされているといえる状態とそのフレームワークを設計します。
フレームワークを設計した上で、顧客起点で一貫した営業プロセスを構築することで、顧客価値は最大化します。
顧客の体験を基にした部門横断型の営業プロセスを構築するためには、まず顧客を知ることが重要です。
顧客を知るためには、全ての行動履歴を把握する以下のようなデータの収集が不可欠となります。
- 見込み顧客が調査段階で何に興味を持っているのか
- 見込み顧客は、単に調査している段階なのか、製品を見定めている段階なのか
- 獲得後の解約率が低いトップセールスはどう顧客を獲得しているのか
- 顧客は製品のどの機能をどれだけ使い、どの機能を使っていないのか
営業活動の型化(Playbook)
営業プロセスを構築したら、次にやるべきは営業活動の型化です。
営業活動の型化というのは、世の中に存在する営業フレームワークをうまく活用しつつ、自社独自のノウハウを組み込んだ営業を型化すること(Playbook の作成)を指します。
型化(Playbook)のメリット
型( Playbook )を持つ営業組織では、担当者の営業経験が組織の学びとして言語化され、形式知化されます。この Playbook をベースに、営業人材が体型的・効率的に学習でき、Playbookに沿った行動をすることで案件を受注しやすくなります。
また個別案件の状況は Playbook を参照すれば一目瞭然で、部門間の案件情報共有にも活用できます。
Playbookの作成方法
型の作成では、以下4つを順に設定していきます。
- フェーズ、ゴール、達成項目を定義
- 受注するためにヒアリングや合意すべき内容の精査
- 商談で参考となるスクリプトの作成
- Playbookに過不足がないか最終確認
具体的なアクション
1.フェーズ、ゴール、達成項目を定義
- 受注・失注企業に関する営業プロセスを見返し、受注のためのマイルストンを定義
2.受注するためにヒアリングや合意すべき内容の精査
- マネージャー / トップセールスメンバーへの個別インタビュー
- 合意項目・ヒアリング項目の洗い出し
- 商談の場を想定した順序の検討
3.商談で参考となるスクリプトの作成
- 録音された商談 / 架電の振り返り
- トップセールスへのインタビュー
- 各項目のスクリプト作成
4.Playbookに過不足がないか最終確認
- 過不足がないかを現場の営業担当者(もしくはメンバー)とも擦り合わせ
その後、実際Playbook を用いて営業活動を行なっていきます。
作成したら終わりではなく、活用していく中で、定期的に見直しを行います。
- Playbook を用いた営業活動の実施
- 実際の営業活動を経て得られた経験や成果を基に、Playbook をブラッシュアップ(項目の追加・削除、入れ替え、文言変更)
オンライン営業(インサイドセールス)の成功事例
ここまでオンライン営業を成功させるための体制やKPIについて説明しました。
その中で、成功させる上でツール・オペレーション・イネーブルメントの活用が不可欠です。
この3点を機能させていくためには、顧客を起点とした営業プロセスを構築した上で営業活動のPlaybookを作成することが重要であることを解説しました。
それでは、実際に体制やKPIを構築した上で、オンライン営業をどのように実施し、成功させているのでしょうか。ここでは、実際に成功している2社の事例を見ていきましょう。
NTT東日本
対象商材:光ファイバー回線サービス「フレッツ光」
成功要因:営業体制とKPIを設定し、運用改善を重ねることで成果を最大化
成果:
・受注率は3〜4倍に
・月間 CV 数は10倍に
・受注額は34倍に
インサイドセールスの立ち上げタイミング:
NTT東日本では、2015年に BtoC の営業から BtoB に力点をシフトしました。2017年にインサイドセールス専門チームを結成し、リードの取得からクロージングまでを開始しました。開始時点では MGR 1名とコンサルタント3名の4人体制でした。
立ち上げにおける工夫:
人員教育では、アウトバウンドとインバウンドのスキルをフォーマット化し、一対一の対面での教育でモチベーション作りを行いました。また目標達成度を可視化し、明確な KPI を策定しました。
営業部との調整では、法人営業部門への警戒感へ対応するため、売上を全て営業部門の成果としました。一部サービスのリードから対応を初めて受注実績を積み上げ、対応サービス数を増やす段階的なアプローチを取りました。
KPI と仮説検証においては、まず以下の詳細な KPI を設定しました。
- UU数
- 広告のクリックスルー率
- CV数
- CV率
- CPA
- 受注率
- 1件あたり受注額
その上で、データの可視化とデータを活用した PDCA を回しました。
USEN-NEXT Design
対象商材:店舗向け音楽配信サービス
成功要因:営業活動のPlaybookを実現し、ツール・オペレーション・イネーブルメントの活用を実現
成果:
- Magic Moment Playbook の導入で「商談完了率」が70%に
- 業務の効率化はコストの削減や時間の創出にも直結し、経営面でもインパクトを生むことができた
インサイドセールスの立上げタイミング:
USEN-NEXT GROUP は、グループ企業のインサイドセールス業務を一手に担う新会社として2009年に設立されました。
立ち上げにおける工夫:
新卒を対象にした営業実践を通した研修プログラムで、Magic Moment Playbook を活用しました。自分が接点を持った見込み客から、いつ何件受注につながったか、つながらなかったか、見込み客に対しては MA でどのようなメールが配信されていて、どれくらい開封されているかなどをすべて可視化しています。
また、今まで使っていたGoogleカレンダーやスプレッドシートなどは一切使わず、Magic Moment Playbook を使うよう、トップダウンで進めました。
Magic Moment Playbookは営業活動の型化とその後の運用改善を促進するツールです。
活用いただくことで、多くの企業様のPlaybookを構築し、営業組織や営業活動の強化に貢献しております。
以下に会員登録をいただくことで、詳細の事例を無料で見ることができますので、ぜひご覧ください。
まとめ
- 顧客との関係性構築やメンバーのマネジメントに課題が生じやすいオンライン営業では、営業組織体制やオペレーション設計は顧客起点であることが重要です。
- オンライン営業では、顧客との信頼関係構築を強化する上で、営業プロセスの設計と営業活動の型( Playbook )化が必要となります。
- Playbookをベースに、営業人材が体型的・効率的に学習でき、Playbookに沿った行動をすることで営業の成果(LTV)を最大化できます。
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《引用文献》
1)HubSpot Japan. “日本の営業に関する意識・実態調査2021”. 2022-02, https://www.hubspot.jp/company-news/stateofsales-20210208 (参照 2021-11-10).
2)WizBiz株式会社. “Withコロナ時代における営業手法の変化”. 2021-07. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000083343.html, (参照 2021-11-10).
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