なぜ ROI の測定が重要なのか?数字を意識したマーケティング戦略の設計方法
- ROI を算出することで施策ごとの収益へのインパクトを明確にでき、正しい意思決定ができる
- ROI を元にマーケティングを改善するとともに、長期的な売上を伸ばす視点が大事である
- 長期的な売上を伸ばす上で顧客との関係構築が重要であり、そのためには顧客エンゲージメントが鍵となる
近年、マーケティングが企業戦略においてさらに重要視されるようになりました。その理由の1つは、顧客が情報を集める手段が変化したからです。
SNS やオンライン広告を代表とするデジタルマーケティングが普及し、現代では買い手が自ら情報収集することが可能になりました。2012年にシリウス・ディシジョンが発表した調査データでは、情報収集・比較検討・意思決定といった購買プロセスのうち、前半の67%はセールス担当者が接触する前に完了していると説明されています。
この67%の購買プロセスの途中で、競合他社にリード(見込み顧客)を奪われたり、顧客の興味関心が薄れてしまうといった状況が発生します。機会損失を防ぐためには、顧客の購買プロセスの初期段階にマーケティングでアプローチすることが重要です。
しかし、顧客の購買ステージの初期段階からアプローチするマーケティングは「なにが」「どれだけ」「どのように」収益に結びつているのかを把握するのが困難です。個々のマーケティング施策の効果を数値で表すことができなければ、収益に繋がらない施策に無駄なコストをかけてしまいかねません。
このような状況を防ぐために、本記事ではマーケティング施策の ROI を測定することの重要性、ROI を測定するためのプロセス設計方法、そして ROI 測定後の手順を解説します。
参考:サブスクリプションビジネス経営者が見るべき KPI 10選
目次
なぜ ROI の測定が重要なのか
ROI とは「Return on Investment」の略称で、投資費用対効果を数値化した指標です。マーケティングの場合は、マーケティング投資額に対して得た利益を表します。
マーケティング施策ごとの ROI を測定していないと、どの施策が効果的で、どれだけ収益の増加に還元されているのかが分かりません。限られたリソースを効果のない施策に投資し続け、結果的に経営に負担をかけてしまうといった状況に陥る危険性があります。
一方で ROI を測定していれば、費用対効果が数字で可視化され、施策ごとの収益へのインパクトが明確になります。定量的な根拠を持って正しい意思決定を行うことが可能になり、効果が実証されている施策にリソースを分配することができます。
ROI を測定するためにマーケティングのプロセスを設計する
マーケティング施策の ROI を測定するためには、顧客の購買プロセス全体を俯瞰して、収益までの流れを可視化する必要があります。
収益までのプロセスを設計する
効果を測定したい施策が収益までに辿るプロセスを明確にします。最終的なゴールから逆算して、必要なプロセスを洗い出します。
例えば、オンライン広告の ROI を測定したい場合、プロセスを以下の様に設計します。
全体プロセスの内、受注を最終的なゴールとします。
リード獲得の手段が5つあるとします。
異なる3種類のオンライン広告があるとします。
オンライン広告が、リード育成を経て、アポ・訪問から商談、そして最終的に受注につながる一連のプロセスを整理しました。収益までのプロセスが可視化されることで、正確な ROI が測定できます。
ROI を算出して、マーケティングを改善する
プロセスを可視化したら、次は ROI を測定してマーケティング施策の効果を検証します。数値化された費用対効果を基に、ボトルネックを発見しましょう。
ROI を算出する
マーケティングの ROI は以下の様に算出します。
上記で説明したオンライン広告の例を活用して、ROI を算出してみます。ROI を測定するために必要な情報を
- A社の自社製品・サービスの平均単価が50万円
- オンライン広告Aから受注までに至った件数が4件
- 営業に関わる人件費やその他コストを含めた販管費が50万円
- 人件費などを含めたオンライン広告 A へのマーケティング投資額:50万円
とします。それぞれを計算式に当てはめると以下の様になります。
ROI (%) = (200万円ー50万円ー50万円) ÷ 50万円 × 100 = 200%
この計算式から算出された ROI は「200%」となり、投資額に対し200%の利益を得たことになります。
施策に期待していた成果が出ていれば、その施策は効果的だと判断できます。施策の導入前に設定していた目標を下回っていた場合は、その施策を改善もしくは撤廃し、組織目標への貢献度に応じてリソース分配を最適化します。目標と結果にギャップが発生した原因を突き止めることも、忘れてはいけない必須課題です。
ROI だけでなく、サブスクリプションビジネス全般の成功に必要な重要指標をまとめた資料はこちらにもあります。ぜひ、合わせてご確認ください。
マーケティング施策を改善する
効果的なマーケティング施策とボトルネックが明確になったら、現状を改善するためのアクションを実行します。
例えば、オンライン広告・セミナー・ウェブコンテンツそれぞれの ROI が以下の様になったとします。
- オンライン広告の ROI = 200%
- セミナーの ROI = 130%
- ウェブコンテンツの ROI = -10%
最も効果を発揮したのはオンライン広告 A です。セミナーはオンライン広告 A ほどの効果は出なかったものの、結果は残しているため、改善の余地があると考えられます。オンライン広告 A で効果を発揮することができた理由を分析すれば、抽出されたインサイトをセミナーの改善に役立てることが可能です。ウェブコンテンツには根本的な解決が必要でしょう。
施策の改善策を導入する際の注意点は、マーケティングには数値で測定できない利益があることです。ROI は数値で表される利益をもとに算出します。そのため、ブランドのイメージアップや知名度の向上といった定性的な内容は反映されません。この点を理解した上で、ROI を活用しましょう。
ROI を意識したマーケティングを実現するには
マーケティング施策の ROI を算出するプロセスが構築されていることで、効果的なマーケティング活動を促進します。数値が判断基準となるため、根拠に基づいた意思決定を実現できます。
しかし ROI の測定に伴い、以下の様な課題を抱える企業様も少なくないでしょう。
- データがバラバラで正しい数値の測定ができない
- 部門が分断されていて、収益までのプロセスを可視化するのが難しい
- 既存の業務があるから、新しい取り組みに時間を割けない
中途半端にプロセス設計に取り組んでも、「正しい ROI は測定できないのに普段の業務には負荷がかかるばかり」といった状況に陥りかねません。
プロセス設計をする上で、短期的な売上ではなく長期的な売上をどう伸ばすか、という思考を元に設計することが重要です。長期的な売上を伸ばす上で、顧客との長期的な関係構築が大きなポイントとなります。顧客との長期的な関係構築を築くためには、顧客エンゲージメントが鍵となります。
顧客エンゲージメントとは何か、について知りたい方はぜひこちらがおすすめです。
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