経験が浅いメンバーでも営業成果をあげられるようになる方法

要約SUMMARY
  • 営業職の採用競争の激化、サブスクリプション型事業による顧客の継続的な満足度の向上などにより営業力の底上げは必須である
  • 営業力の底上げのためにはデータに基づいた営業ノウハウの共有が必要である
  • データに基づいた営業ノウハウの形成に必要なのは「売れる営業方法」をモデル化し、検証することである
  • 仮説検証で得られた結論をチーム内に浸透させるための、オペレーションを作ってチームで実践することが、営業力の底上げにつながる

ザ・モデルの出版以降、組織として営業力を強化していく気運が、BtoB サブスクリプションサービスの営業組織を中心に、高まっています。

また、昨今、Sales Enablement(セールス イネーブルメント)という言葉が日本にも入ってきています。経験のない中途入社者でも、なるべく早くオンボーディングを行うこと、継続して成果に直結する営業研修やマネジメントを行うことが重要です。そのような取り組みを実行しようと思えば、デーダドリブンで施策、営業行動、営業成果を検証していく必要があります。

今回は、データドリブンで営業力の底上げ(営業担当者の営業経験が浅くても営業成果を上げられるような組織的取り組み)をどのように行うのか、ポイントを紹介していきます。

また弊社では、営業戦略の立案に向けた営業組織の課題特定にお悩みの方に向けて「BtoB 営業組織レベルチェックシート 」を無料で提供しています。ぜひダウンロードしてご活用ください。

なぜ営業力の底上げが必要なのか

BtoB サブスクリプションサービスの事業において、採用競争力の観点、および事業成長の双方から、営業力の底上げは重要です。

採用の競争環境

昨今の採用環境を鑑みると、経験が浅くても、成果をだせる、モデルと仕組みが必要であるといえます。

現在、多くの会社が法人営業を中途採用しています。入社してすぐに、しかも継続して高いパフォーマンスをだせる人員を採用できればいいのですが、昨今の転職市場を鑑みると、営業職の求人倍率が高いので、採用競争が激しいといえます。

必ずしも、「BtoB サブスクリプションサービスの営業経験者」が入社するとは限らないのです。

顧客の継続的な満足度向上が、事業の成否を左右する

そのビジネスモデルから、特定顧客の案件から単発で案件を獲得するような営業スタイルではなく顧客の成功を願い、その実現に向けて顧客の課題解決を支援する営業スタイルが求められます。

マーケティングから営業活動、カスタマーサクセスに至るまで、組織全体で均質で一貫性のある対応力が求められます。なぜなら顧客が満足しなければ、サービスの継続は望めないからです。

これは、BtoB サブスクリプション型事業にとって、事業の成否を左右する重要事項といえます。

一方、営業組織の実態はどうでしょうか。

売上は一握りのハイパフォーマーに依存

ある統計データでは、営業担当者の約60%が、「当初の予算を達成できそうにない」と回答している結果がでています。

予算達成率は特定のメンバーに偏っていることが想像される結果ではないでしょうか。

図:SalesForce,「営業担当者による売上目標の予想達成率」よりMagic Moment作成

Sales Enablement の重要性

自社の営業力強化をめざす上で、Sales Enablement の考えは欠かせません。

方法論としての Sales Enablement は、まず自社のハイパフォーマーを分析することからはじめることが多いのですが、データを活用できていないと、ハイパフォーマーとそうでない人との差、ローパフォーマーの行動の何を変えればパフォーマンスが上がるのか、のヒントが不明で、

営業力の底上げの最初の第一歩を踏み出すのが難しくなります。

このような状態を改善し、営業力の底上げをはかるには、下記のステップが必要です。

1.「なぜ売れるのか」を解明するための土壌を整える

2.「売れる営業方法」をモデル化し、検証する

3.「売れる営業方法」を組織に浸透させる

ではひとつひとつ、詳しくみていきます。

1.「なぜ売れるのか」を解明するための土壌を整える

データの取得と整備

組織全体の営業力の底上げは、データに基づいた営業ノウハウの共有なくして成立しないため、営業戦略上の重要活動、ハイパフォーマーの重要な行動と推測されるものは、定義を揃え、正しく報告され、データとして活用できる状態を整えることが重要です。

日本でも、SFA が導入され、営業組織においても KPI を取得することが当たり前になっています。

しかしながら、「思うようにデータが取得できない、示唆が得られない」(エビデンス必要)などの声はまだ多く、上述したデータの活用状況に影響を及ぼしていると推察されます。

商談行為や提案行為、見積提出といった行為において、SFA で入力してもらい数値としてまとめることは、多くの企業が行っているでしょう。

上記のような営業プロセス上の定義ですら、認識がずれていることが多々あります。また「提案」をたくさんこなすように指示があれば、多少定義と異なっても、提案として報告され、よくある結末として、提案が多いのに受注がすくない、原因は不明、という結果になります。

また、「結果的な指標」だけを追いかけていると、顧客にとって不快な体験をしてしまう可能性もあります。例えば、アポ数や商談数などを追いかけ、中身の架電頻度や内容、メール送付頻度や内容を見ていない場合があります。顧客が興味がないのに商談を無理矢理設定したり、顧客の課題に沿わない商談をしてしまうと、顧客が離反してしまいます。

課題内容やニーズの強弱、好ましい接点の持ち方を顧客視点で継続することが成果につながるため、そのようなデータも取得できることが望ましいと言えます。

ツールの選択

すべてのデータの元となる、営業担当者の入力はデバイスフリーで一度の入力で済む、効率的なツールを選択することが重要です。また、ある統計データでは、営業担当者が営業活動に費やせる時間は全体の労働時間の34%という、結果がでています。

営業担当者は、営業以外の業務に66%費やしています。加えて、全体の8%、「営業データの手入力」という業務が含まれています。

図:SalesForce,「1週間のうち営業担当者が各業務に費やす時間の割合」Magic Moment作成

多くの営業組織では、SFA だけでは報告や分析に足らない、といったことが言われています。SFA では入力項目の変更ができないと思い込み、Excel やスプレッドシートに、営業メンバーに入力させる行為がこれに相当します。

また、マーケティング部門から入力指示があったと思えば、営業部門から入力指示があったりと、部門間で連携がとれていないと、似たような項目を複数回報告させられるケースもあります。

Salesforce や Dynamics365 といったツールでは、インプット項目や見せ方は変更可能であるため、営業担当者にダブル、トリプルの入力負担を強いてしまうことが多々あります。このことがかえってマネジメントの方針や、部門間連携の効率化を阻害してしまっているるケースもあるのです。

報告や集計の時間は最小限に抑え、効率化する必要があるといえるでしょう。

ツール活用の徹底

営業担当者の入力について、解消できたならば、次はデータを蓄積するためにも、ツール活用を徹底しなければなりません。

まず営業トップのコミットメントが必要です。また、ツールで入力された内容に沿ってマネジメントが行われることが重要です。そのためには管理職クラスや中心となる現場リーダーの、入力する内容の定義と、入力する意味合いの双方への理解が必要です。

2.「売れる営業方法」をモデル化し、検証する

モデル化

一定期間、正しくデータを取得でき、パフォーマンスと結び付きが強そうな活動項目や、営業活動ステージの遷移率に影響を及ぼしそうな活動項目を導き出せたら、まず、顧客のバイヤージャーニーに沿って、ステージ設計とアクティビティを整理してモデル化しましょう。

この時、管理職クラスや現場リーダーを巻き込み、研修という形でモデルについて議論すると、今後の改革の方向性をより良く理解してもらう機会となり、組織全体に広げていく時に力になってもらえます。

 SFA / CRM の準備

モデルに沿って、SFA / CRM で、データが取得できるよう、準備を行います。

営業活動のステージ定義と、ステージ遷移には、基準を設け、厳格に運用できるようにすることが理想です。またモデルに沿って、データを活用して、どのように検証を行うのかも、前もって決めておくと良いでしょう。

3.「売れる営業方法」を組織に浸透させる

 管理職や現場リーダーが主導し、モデルに基づく営業活動を現場に浸透させていきます。重要な役割を担う管理職クラスや、現場リーダーには、改めて研修という形で、モデルそのものの理解と、今後の改革の方向性の理解をしてもらうことが効果的です。

現場営業担当者のメリットとして、「ハイパフォーマーのノウハウがモデルに組み込まれている」というわかりやすいメリットを打ち出すことが必要です。しかし、モデルに沿って営業活動をしても、うまくいかない、というケースも想定されるため、モデルに基づいた実践的な研修を、営業担当者に、継続的に実施することが必要です。

日々の活動においては、常にデータをもとに報告等が行われ、マネジメントもデータをもとに指導していくオペレーションをつくる必要があります。また、モデルをもとにしたノウハウ共有や、賞賛、モデルを実践したセールスを評価できるような精度を整備することで、モデルが少しずつ浸透していきます。

まとめ

トップセールスの営業の再現のためには、どのようなアプローチが顧客に受け入れられて、成約率を上げる要因になっているのかといったことがデータとして蓄積されている環境を整えること、さらにそのデータをもとに、営業活動を分析して仮説検証することが必要になります。

その後、仮説検証で得られた結論をチーム内に浸透させるための、オペレーションを作ってチームで実践することが、営業力の底上げにつながります。

Magic Moment では、一部上場企業・スタートアップの営業組織づくりを支援してきたノウハウに基づき、「売れる営業の型」をつくりたい営業組織をサポートする資料を提供しています。組織の作り方がわからない、成果が出るか不安、と言った課題を抱えている方は、ぜひ一度ご覧ください。