営業責任者が頭を抱える「本当にツールで現場の成果が大きく上がるのか」問題
ダッシュボードを使った指標の「見える化」、顧客管理から商談支援など、法人営業組織の生産性向上を実現する様々なソリューションが普及しつつあります。
しかし、日本の営業組織におけるツール活用の余地は極めて大きいのが実情です。マッキンゼー社が出しているレポートでも、ツール活用を含めた営業生産性の向上余地について問題提起がされています。これまでに何百名という営業組織責任者の皆様とお話をさせていただきましたが、やはり使いこなす事、既存のやり方を変えるにあたり成果創出における疑問を数多くいただきます。
この記事で、そういった不安を抱える皆様一人一人にとって、より適切な決断を支援する一つのガイドラインとなることを目指します。前提として全ての組織に適応可能な「答え」はないため、あくまで事例を用いて、考え方のアプローチとしてお役立ていただければ幸いです。
構成としては、法人営業組織におけるツール導入で実際にあった失敗例と成功例、そして双方から得られる学びの順で説明していきます。
多額の投資を無駄にする、営業ツール活用でよくある失敗「見える化の罠」
いきなりですが、まずはツール導入の失敗例です。実際にあった例ですが、とある企業がCRM導入に失敗した経緯を説明します。もちろん固有名詞は伏せますが、ぜひ「なぜ失敗したのか」考えながら読み進めていってください。
まず前提条件ですが、この企業は10〜30名規模の営業組織を持っており、法人向けにプロモーション活動を支援するソリューションを販売していました。主なターゲットは、マーケティング部門です。
責任者は、以前のスプレッドシートでの案件管理から、徐々に拡大していく組織において情報の共有が十分になされていない状況を問題に感じました。
その結果、以下のような課題が生じ始めていました。
- 重複した営業活動
- 成果のばらつき、
- 戦略が立てにくい
そこで、CRM システムに多額の投資を行い、顧客・案件・契約データなどあらゆるデータを集約することを決めました。
CRM システムの検討から導入までの実際のプロジェクトは営業推進2名・システム担当1名の3名が担当していました。また、この導入を契機に、データに基づいた営業活動を実現しようと、緻密な顧客分析を行うための入力項目をしっかりと設計し、CRMに組み込んでいました。
実際の運用が始まる手前のテスト環境では、狙った通りのデータがダッシュボード上に綺麗に可視化されていました。組織全体のパイプライン状況から個別の商談内容までリッチな情報を確認することで、有用な情報が得られるイメージが湧いていたそうです。
しかし、運用が実際に始まってからこのダッシュボードに実際の情報が意義ある形で可視化されることは一度もなかったそうです。直接的な原因は2つあると言います。
- 現場が新しいシステムに慣れることが出来ず、データの記録がされなかった
- 一部は可視化ができたが、投じた費用を回収出来るほどの成果向上を実現する「具体的な施策」に落ちなかった
結局、1年間で百万円単位に登る投資を行いましたが、結果としては運用に実らず、システムの継続活用を断念する結果になりました。
担当者の時間を相当数使った結果、元のオペレーションに一旦は戻すこととなりました。時間と費用を大幅に使い、得られたのは何もなかったということでした。
根本的な原因は何だったのでしょうか?後の章で解説します。
ツール導入の「成功」例
今度は成功例を記載します。ある企業は不動産の管理母体向けに、コスト削減と効率化を目的としたソリューションを提供していていました。営業組織の規模は比較的小さく、数名の担当者で構成されていましたが、運営方法やツール導入に至った課題は手前の企業と似ていました。
その企業は立ち上げからスプレッドシートで案件管理を行っており、拡大にあたり情報共有や知見の蓄積、抜け漏れのないフォローの徹底に課題を感じており、営業支援ツールの導入を検討しました。ここで上記の例と異なるのは、責任者が検討前に行ったのは「どのような活動が成果をもたらしているのか」を仮説として洗い出し、実際の現場の業務を注意深く観察し、ツールがその要素を阻害せず、むしろ支援出来るかを優先度高く検討していました。
責任者は感覚的に、担当者ごとに商談を創出出来る数にばらつきがある傾向があると分かっていました。そこで、商談の手前でそれぞれの担当者がどのようなコミュニケーションを行っているのかを社内ヒアリングを行い、違いがあることが分かりました。
この商材では検討側が「1年に一回検討する」という特徴があり、成果を出す担当者はきめ細やかにタスクを設定し、タイミングを捉えることを欠かさず行っていました。一方、成果が乏しい担当者の業務を観察すると、タスク管理方法が決まっておらずばらばらで、抜け漏れがいつ発生してもおかしくない状況でした。つまり、担当者の能力に依存している構造がばらつきを発生させ、成果創出の重要なポイントを欠いていたのです。
結論、フォローアップの属人化をToDoの自動化により脱却することを初期の目標として設定し、またその他の不要な数値記録などはまずは行わない選択を取りました。この初期の導入手法が功を奏し、現場担当者の業務を阻害することなく徹底したフォローがマネージャーとして支援出来るようになりました。このおかげで、運用がスムーズに回り、付随するより高度な営業支援機能を活用し、中長期的にさらなる活動を行えることができています。
何が成功と失敗を分けたのか
ツールの活用にとどまらず、あらゆる営業推進施策を行う際には「現場の行動が改善するか」が結果を左右するということを忘れてはならないと思います。どんなに良い数値が可視化され、きれいなダッシュボードが見えても、現場の日々の業務の中に何らかの形で反映されることがなければ、成果に繋がることはありません。最終的には顧客の体験が変わるかどうかだけが重要だからです。
ツール活用の落とし穴は、「仮説の無い見える化」です。
失敗例では、「見える化」の名のもとに、成果に直結しない業務が更に増えてしまいました。成功するのに必要なことは、最終目標である売上を分解し
- ボトルネックがどこにある可能性があるか
- 絶対に阻害してはいけない要素は何か
- どこがテクノロジーで代替できるのか
こういった要素を考慮することが必要不可欠です。「見える化」自体に意味はなく、いかに現場がお客様とコミュニケーションを取る中で、活かせるかが真のポイントとなります。
仮説立てに有効な、要素分解の考え方
以下はもっとも基本的な売上の要素分解の一例です。リードソースを元に、案件をフェーズで切っています。ではどこにボトルネックがあると考えられるでしょうか?
まず図からわかるのは、「問い合わせが全ての源泉になっている」ということです。つまり、どれだけ商談数や提案数への転換に注力したとしても、問い合わせが先細ると意味がなくなる、ということです。この時点で、問い合わせが極端に先細るシナリオが考えられるかどうかを意識しなければなりません。
次に重要なのが、その次に行く「33%」の転換率です。これは高いのでしょうか?ここではベンチマークが活用できます。同じ価格帯やターゲットの商材ではどれくらいの転換率が適正なのか知っていれば、どこにボトルネックがあるのかが分かります。
このように、出来る限りでも良いので要素分解をすることで、売上は何によってもたらされているか、自社の弱みはどこにあるのかが明確になります。ツールを導入する際も「絶対に落としてはいけない要素」「ボトルネックになっている要素」を明確にし、その要素に対して最も有効らしい導入方法を模索することが必要不可欠となります。
お役立ち資料
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