CRMの導入失敗で後悔しないための5つのステップ
CRMツールの導入を検討している企業の中には、導入してうまく運用できるのか、本当に費用対効果が出せるのか等、不安要素を感じている担当者も少なくないでしょう。
CRM を導入した企業には、費用に見合った効果を生み出すことができずに後悔されている事例も多くあります。しかし導入前に、実際に CRM の導入に失敗する要因を知っておけば、導入を成功させ、継続的に効果を出すことができるのではないでしょうか。
この記事では、CRM 導入に失敗した担当者らが後悔している理由を探るとともに、そうならないための解決策を紹介していきます。この記事で紹介する手順で導入していけば、貴社ビジネスの売上改善に繋がるツールとして活用できるでしょう。
目次
CRM 導入に失敗した企業の例
最初に、実際に CRM を導入した企業の一例を見ていきましょう。
とある BtoB 企業では、複数のツールを比較し、経営陣の承認を経て、晴れて CRM 導入となりました。しかしここですぐに利用が開始できるわけではありません。運用を開始する前に、まず顧客情報の反映と営業フローの登録が必要です。
運用開始前
まず、顧客情報の反映をどのように行ったのか見ていきましょう。
情報源:
- Excel
- 基幹システム
- 営業担当者の頭の中など
CRM への情報反映手段:
- Excel→データで連携
- 基幹システム→コピー&ペースト ※導入決定後にデータ出力できないことが発覚
- 営業担当者の頭の中等→担当者が個別に入力
コピペ作業と営業担当者の個別管理の情報登録作業を、通常業務と並行して行ったため、この作業だけで数ヶ月かかってしまいました。
では、営業フローの登録についてはどうだったのでしょうか。
CRM は理想とする営業フローを登録し、そのフローに沿って全員が活動することで効果を上げる仕組みです。しかし、売上の上位を占める営業マンは感覚的に営業活動を行っている傾向が高く、アウトプットすることがあまり得意ではありませんでした。
また、普段ほとんど顧客を訪問しているので、なかなか上位の営業が集まれる機会を作ることが難しく、土日に集まって、議論を重ねることになりました。こうしてやっと営業フローが固まり、何とか登録が完了したようです。
結果、稼働開始予定から約半年後にずれ込んでの稼働開始となりました。
運用開始後
導入から数ヶ月経ち、社内で説明会を開いた後に、運用を開始。しかし、実際に運用を開始してみて、CRM に営業活動を登録するメンバーもいれば、なかなか活用しないメンバーもいるという状態が続いていました。
理由は、CRM の活用に前向きなマネージャーと、従来の営業活動を支持するマネージャーとに分かれていたからです。
結果、CRM 支持派のマネージャーのグループはマネージャー主導で活用を促すので、所属メンバーも積極的に活用。見込み客や育成客がWebページにアクセスした状況や各種アクションの状況までリアルタイムで把握できるので、ホットなうちにタイミングを逃さず商談ができています。
週次のグループミーティングを失くすことができ、営業活動のスピードや質も上がりました。
一方、CRM 不支持派のマネージャーのグループでは、以前と同様の自己流営業が蔓延しているので、数字は上がってきません。経営層も全社的な予実管理などは CRM 上でできず、マネージャーミーティングのタイミングでしか把握できないという状況が現在も続いています。
導入担当者が後悔している点
以上を踏まえて、導入担当者が後悔している点は以上のようなものがありました。
- 既存システムからのデータ連携の可否など、システム部門にも確認が必要だった
- 検討中から顧客企業のキーマン情報なども、営業担当者から収集しておけばよかった
- 顧客情報等の登録レベルが営業担当者によってまちまちでレベルを合わせるのが大変
- どのような作業が必要になるかの洗い出しが甘かった
- 営業フローは前もって固めておけばよかった
- CRM は作業量が多くて大変・ややこしいという印象が先行してしまった
- CRM のメリットなどの情報を全社的に認識させることができなかった
このような後悔をしないように、これらの失敗する要因を潰し、CRM導入を成功させていきましょう。
CRM 導入失敗で後悔しないための5つのステップ
ここで、CRM 導入に際して、踏むべき5つのステップを整理しておきます。
営業フローを固める
まず最も重要かつ時間のかかる営業フローを固めることを優先して行いましょう。
ここでモデルとなる営業フローは、売上を効率よく上げることのできるフローであるべきです。そのため、上位の売上を占める営業担当者複数人の営業フローから、理想の営業フローを固めていく方法がベストでしょう。
しかし、営業担当者は自身の活動を整理して、何をキーにどう動いているのか言語化できるでしょうか。おそらくすぐには言語化できない場合が多いのではないかと思います。
検討を始める段階で確認し、言語化できない場合は言語化を助ける手段を考え、営業フローを前もって固めておけるようにしましょう。
CRM を積極的に活用できる土壌を作っておく
次に重要なことは、CRM 導入検討プロジェクトには、現在の営業マネージャーや今後近いうちに営業マネージャーに就任すると予想されるメンバーを含めておくことです。
よく失敗する例にあるのが、今回の例にあったようにマーケティング部と経営陣だけで検討を進め、導入してしまうパターンです。
導入を主導するキーマンとなるのは、営業担当者を束ねる営業マネージャーです。彼らがプロジェクトのメンバーなら、CRM の活用を支持しないはずがありません。
ただしこれには注意点があります。検討には時間を要することを考慮し、現行のマネージャーだけでなく、今後近いうちに営業マネージャーに就任すると予想できる営業担当者をメンバーに含めておくことがポイントです。
そうすれば、実際に運用を開始した際に、彼らが積極的に活用を促すので、スムーズに運用を定着させることができますね。
CRM のメリットを周知させておく
営業マネージャーが積極的に活用を促しても、中には思ったように活用してくれないメンバーも出てくるでしょう。
では、彼らはどうして活用してくれないのでしょうか?
もしかすると、メリットを理解せず、今までの業務に加えて余計な作業が増えただけだと感じているのではないでしょうか。
先に一方的に作業だけを依頼されると、マイナスイメージだけが先行してしまいます。こうならないためには、少なくとも導入に付随する作業を依頼する前に、CRM の導入によるメリットを全社に周知させておく必要があります。
全社的に説明する機会を設けるほか、日常から、プロジェクトメンバーから周囲に、メリットを伝えるようにしておくといいでしょう。
データの収集と精度の改善
まず、現状の顧客情報はデータ化されているか確認しましょう。もし営業担当者が個別に持っている場合は、検討と並行し、情報をまとめて収集しておくといいですね。
情報がしっかりと登録されている既存システムがあるなら、そこからのAPI連携が可能か。できない場合は、連携する手段の選択肢を検討し、時間・コストを見積もっておくようにしましょう。
また、登録する情報はどこまで必要かを明確にしておき、顧客によって精度のバラつきが出ないようにしておくことが重要です。
実際に使う営業担当者からの意見を収集する
運用を本格的に始動する前に、営業チームを1チームピックアップして、そのチームだけでテスト運用をしてみるのも活用ハードルを下げるステップとして有効です。
メリットを理解し、CRM を支持しているマネージャーの元で活用するとしても、入力量がメリットを上回る負担になるようであれば定着しません。
テストチームで活用し、
- 本当にここまでの情報を入力しなければいけないのか?
- 最低限ここまでの情報があれば活用に問題がない
などを検証。
また、文章だけで入力する画面ではなく、
「ステータスのチェックなどで入力を簡素化できないか?」
といった意見を出してもらうようにしましょう。
テスト運用で出てきた意見を反映した活動報告画面で、全社的にリリースすれば、自社にカスタマイズされた使いやすさとともに CRM の活用が積極的になされるようになるでしょう。
まとめ
CRM は継続的に活用していくことに意味があります。ツールの採用を決めてゴールではなく、そこからがスタートです。実際に運用を開始し、運用の改善を続けていくことで、効果を高めていきましょう。
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