月次平均成長率15%を達成した、データ・ドリブンな SaaS 経営の裏側とは
株式会社EXIDEA
株式会社EXIDEA
取締役 COO 塩口 哲平様
2018年10月に株式会社EXIDEAにジョインし、SEOライティングツール『EmmaTools™』をはじめとする新規事業を立ち上げを担当。1年弱で年商3億規模の事業成長を実現。
株式会社EXIDEAは、13年に渡る1,000サイト以上のSEOコンサルティングと数百のWebサイト運営経験に基づいて、SEOライティングツール『EmmaTools™』を開発・提供しています。
新規事業として SaaS ビジネスを立ち上げたものの、社内に事業戦略・組織づくりのノウハウが不足しており、「何から手をつけたらいいのか不明確だった」と語るのは、同社取締役 兼 COO(最高執行責任者) 塩口 哲平様。今回は、同社がそんな課題を乗り越え、月次平均成長率15%を実現できた理由に迫ります。
【課題】
・どこにリソースを投下すれば売上を最大化できるか把握したい
・どんな顧客を獲得すべきなのかを明らかにしたい
・サブスクリプションビジネス特有の考え方を組織に浸透させたい
【解決策】
・定量的に事業状態を可視化することができる基盤づくり
・マーケティング・セールス・カスタマーサクセスの組織体制づくり
・サブスクリプションビジネスに関する社内勉強会を実施
【効果】
・感覚値だった主要 SaaS 指標を定量的に把握
・ビジネスや顧客の理解が深まり、月次平均成長率15%を達成
・事業への取り組みが変わったことによりメンバーのモチベーションが高まった
誰もがグロースハックできるようになる『EmmaTools™』とは?
− まずはご自身について教えてください。
新卒でデロイトグループに入社し、中小企業に対するコンサルティング業務に従事していました。その後、動画系ベンチャーを COO として創業し、大手クライアントを中心に支援してまいりました。
そして現職では、株式会社EXIDEA の COO として、グロースハック事業の戦略立案や組織づくりを担っています。グロースハック事業は、4つの価値 ー動画マーケティング・広告・リマーケティング・SEO を通じてクライアントのグロースハックに貢献しており、中でもSEOライティングツール『EmmaTools™』の開発・提供に力を入れています。
− なぜ『EmmaTools™』に注力されているのでしょうか?
もともと EmmaTools™ は社内向けのツールだったのですが、ある時展示会に出展する機会があり、その際にEmmaTools™を紹介したら想像以上に反響があり、受注することもできました。
またビジネスモデルも魅力的でした。これまで主にSEOコンサルティングに取り組んでいましたが、よりスケーラビリティのある事業を作りたいと考えていました。サブスクリプションで提供できる EmmaTools™ であれば、より多くのお客様に価値を提供して、安定した収益をもたらすことができます。
弊社は13年に渡って1,000を超えるウェブサイトのSEOコンサルティングを実施し、数百のサイトも運用してきました。近年、SEOは非常に複雑化しており、担当者の育成も困難になっています。そこで、弊社のSEOに関する豊富なノウハウを活かして、誰もがグロースハックできるようなプロダクトになるのではないかと考えました。
これらの背景があり、社内向けツールだった EmmaTools™ を社外に展開し、事業拡大に向けて投資を増やす意思決定を行いました。今期は EmmaTools™ の PMF (プロダクト・マーケット・フィット)を達成し、ARR1億円の実現を目指しています。
狙うべき顧客がわからず、顧客獲得にどこまでコストをかけていいかもわからなかった
− Magic Moment と取り組みを始めるまで、どのような課題がありましたか?
当時、私たちは事業面・組織面の2つに課題を抱えていました。
1つ目の課題は、狙うべき顧客がわからず、顧客獲得コストをどれだけかけていいかもわからなかったことです。
当時から MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)を開発し、顧客からフィードバックをいただきながら、どの属性の顧客にサービスがマッチするのか、顧客は生涯どれだけのお金を払ってくれるのかなどは感覚的に推定することしかできていませんでした。
これが本当に不安だったんですよね。
このままでは、理想的な顧客像がわからないだけでなく、顧客獲得にかけられるコストはいくらなのか、事業の費用対効果はどの程度なのかを定量的に把握できません。そのため、どこにリソース・予算を投下すべきなのか判断することができませんでした。事業に関するデータをしっかり収集・可視化して、客観的に意思決定できる環境が必要だと感じていました。
− もう一つの課題は何でしょうか?
2つ目の課題は、サブスクリプションビジネス特有の考え方が組織に浸透していなかったことでした。立ち上げ当初、 EmmaTools™ には7名のメンバーが関わっていましたが、私も含めて BtoB SaaS の経験があるメンバーはいませんでした。
すると、こんなことが起きてしまいます。
セールスが中長期的な売上よりも短期的な売上を意識してしまい、サービスにマッチしない顧客ばかりを獲得してしまうんです。その結果、カスタマーサクセス担当者が対応に追われ、疲弊してしまうという事態が起きました。疲弊はモチベーションの低下をもたらします。大切なメンバーが辛い思いをすることは避けたいと心から思い、必死に SaaS の経営を勉強しました。
− どうやって勉強されたのでしょうか?
SaaS をテーマとした書籍やウェブコンテンツを片っ端から読んで、課題解決のヒントを探しました。でも、なかなか現場感のあるリアルなノウハウは身に付けることができなかったんです。
確かに「MRR や LTV が大切」「Unit Economics は3倍以上を目指すべき」「インサイドセールスやカスタマーサクセスを立ち上げよう」など、SaaS に関する一般論や部分論・フレームワークは知ることができました。
一方で、売上を拡大するという事業経営の観点で解説されているものは少なく、本当に重視すべき指標や施策の優先順位はいまいちピンとこなかったのです。目標達成までの道筋が見えておらず、どこに足を置けばいいかわかりませんでした。
自分たちは何からどう取り組むべきなのか、事業視点かつ経験に基づいてアドバイスできるガイドを見つける必要がありました。
たった3つの取り組みで、メンバー全員が経営視点を持ち、売上拡大を実現
− Magic Moment と取り組みを始めるきっかけは何だったのでしょうか?
新卒時代、デロイトグループでお世話になっていた恩師からの紹介がきっかけでした。
事業・組織の課題を解決するべく、「SaaS 事業コンサル」「SaaS 有名人」等で検索して、事業成長のパートナーを探していました。しかし、事業がグロースした段階の経験しか持ち合わせていないケースが多く、BtoB SaaS の立ち上げから事業拡大まで俯瞰的にアドバイスできるパートナーとはなかなか出会えませんでした。
そこで、恩師に相談したところ、サブスクリプションビジネスの専門家である「Magic Moment」 をご紹介いただきました。早速お話を伺ってみると、自分たちの悩みに対する明確な回答を持っていることに気付いたんです。まさに、やるべきことが曖昧になってた自分たちを導いてくれる存在だなと。
また、経営陣の思想がマッチしていたことも大きかったです。スケーラビリティやリピータビリティ・顧客エンゲージメントといった言葉の意味を本質的に捉えて、ビジネスのアートな要素・サイエンスな要素をうまく織り込んで物事を考えている。
お互いの思想が似ていないと、パートナーとして一緒にビジネスを成長させることはできないと思うんですよね。
− 具体的にどのような取り組みを行ったのでしょうか?
3つの取り組みを通じて、売上拡大を目指しました。
1つ目は、SaaS の主要指標の可視化に取り組みました。
感覚値で経営し続けていては、決してスケールする組織を作りあげることはできません。弊社にとって、鍵となる指標がどうなっているのかを明らかにして、改善・検証し続けられる仕組みを構築することは急務でした。
そこで、まずはユニットエコノミクス・CAC・チャーンレートをはじめ、 SaaS の経営に必要な指標を管理することからはじめました。SaaS にはさまざまな指標があり、以下のような気づきを得られます。
・ビジネスの成長率はどの程度なのか
・どこまで顧客獲得にコストをかけられるか
・マーケティングやセールスはどれだけ効率的か
・どんな顧客なら優良顧客になりやすいか
・どんな行動が解約に影響しているのか など
ただ、自社でそれらの指標を可視化するのはとても大変なんです。正しいデータを集めて、正しく計算できるよう、エンジニアリソースも必要になります。
そこで、Magic Moment が提供する「Insight Board」を導入しました。上記のような気づきを得られる指標がデフォルトで可視化できるだけでなく、指標が表示できるように実装までしっかりサポートしてくれます。
− 2つ目はどんな取り組みでしたか?
2つ目は、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスの再編成です。
何から手をつければいいかわからなかったので、「組織のレベルチェック診断」などを行って、部門の成熟度を評価することから始めました。例えばカスタマーサクセス組織のレベルチェック診断では、カスタマーサクセスの概念をどれだけ理解できているか、ビジネスに必要な指標やツールを導入・設定することができているか、指標の改善に効果的な施策を打つことができているかなど、網羅的に組織を評価できます。
それから、
・マーケティングオートメーションのシナリオ設計
・架電のタイミングやKPIの設計
・商談のスクリプトの作成
・オンボーディングフローの設計 など
に取り組みました。業界のベンチマークやベストプラクティスについてアドバイスをもらいながら、スピード感を持って組織を立ち上げることができます。
− 3つ目はどんな取り組みでしたか?
3つ目は、サブスクリプションビジネスに対する社内文化の醸成です。
各担当者が部分最適となり、「自分のKPIのためだけに仕事をする」という状態を解消するためには、経営視点でビジネスを捉える必要があると思っています。
そこで、社内のメンバー向けに
・サブスクリプションビジネスとは何か
・どのような指標があり、どんな意味を持っているか
・EmmaTools™ は、どのようなフェーズのビジネスなのか
・事業の成長性は、どれだけ優れているのか
・今後事業が直面する大きな課題は何か など
を学ぶことができる勉強会を Magic Moment に協力してもらいながら実施しました。その結果、メンバーの視点がとても高まったんですよね。
例えば、LTV観点からこれまでの経験上サービスがはまらないお客様に対して「このお客さんは今取りに行くべきではないよね」(既存事業で売上が立っているからこそ)といった議論が自然発生するようになりました。
まさに、新しい共通言語ができたイメージです。
この積み重ねによって、私自身もどんなことに取り組めばビジネスが成長するのか、高い解像度で全体像を描けるようになりました。
ターゲット顧客からの受注が増え、MRRの月次平均15%成長を実現
− チームの意識や取り組みが変わったことはありますか?
メンバーひとりひとりが事業視点を持ち、本質な取り組みに集中できるようになったことで、従来よりも大きな成果が出るようになりました。結果として、もっと高い成長を目指していますが、MRRの月次平均成長率15%を達成できております。
例えば、先ほどお話ししたカスタマーサクセス担当者。
顧客の解約防止を一任され、疲弊していました。しかし、社内勉強会などを通じて、組織全体で高い LTV を生み出す顧客(ロイヤルカスタマー)の獲得・育成にフォーカスするようになってから、これまで以上に業務にオーナーシップを持って取り組んで頂けるようになりました。
今、彼はカスタマーサクセスだけでなく、マーケティングやセールスとも積極的にコミュニケーションを取るようになり、EmmaTools™ の成長を牽引するリーダーになりました。組織の仕組みや打ち手を変えることで、担当者がいきいきと活躍できるようになるのは、私も本当に嬉しいです。
T2D3の事業成長を実現するキーワードは「データと再現性」
− 今後のチャレンジについて教えてください。
これから EmmaTools™ は、誰もがグロースハックできるようになるツールとして、今期でARR1億円、来期でARR3億円、そして再来期でARR10億円の達成を目指しています。いわゆる T2D3 の実現にチャレンジします。
決して簡単なチャレンジではないので、どんなニーズがあり、どんなプロダクトを開発し、どう売ればいいのかを高速で仮説検証することが求められます。正直、ARR1億円までは人力で頑張れば達成できますが、それでは再現性もスケーラビリティもありません。
事業や顧客の状態を正しく把握し、データ・ドリブンに仮説検証を進めていきたいと思っています。そして最終的には、EmmaTools™ を世界的なサービスに成長させたいです。
PDF 版の資料では、より詳細な事例をご覧頂けます。
より詳しい PDF 版資料のダウンロードはこちら
株式会社ヌーラボ様が導入しているサービス
・顧客獲得からカスタマーサクセスまで支援する「Revenue Ops」
・サブスクリプションビジネスの経営指標を可視化する「Insight Board」
会社の基本情報
株式会社EXIDEA
業種: 広告・マーケティング・IT
業務内容: SEOライティングツール『EmmaTools™』
導入商品: Sales Ops / Insight Board
活用用途: 売上の拡大 / 組織の再編成 / 指標の可視化 / セールスイネーブルメント