なぜマーケティングはコストセンター扱いされるのか?施策の効果測定に失敗する3つの理由と解決策
現代では IT・インターネットの普及により、ユーザーの興味関心を細かく分析することが可能になりました。施策の効果を数値化し、結果に応じて方針を決める「データドリブン」なマーケティングが実現するため、結果が不透明だった従来のマーケティング手法では通用しなくなりつつあります。Web 上の行動履歴からパーソナライズされたマーケティングを実現するマーケティングオートメーション(MA)やチャットボットに代表される最新テクノロジーと融合したマーケティングへの注目度はさらに高まるでしょう。
一方でマーケティングをコストセンター扱いする風潮がいまだに残っています。Fortnight Collective の創業者でCEO も務めるアンディ・ネイサン氏は「マーケティングは経費とイコールと見なされている」と述べています。1)
競合他社が最新テクノロジーを活用したマーケティングに日々奮闘している一方、自社のマーケティング予算が削減されてしまうとどうなるでしょうか。テクノロジーを活用してより効果的・効率的にマーケティング活動を行なっている競合にリードを奪われ、機会損失を招く恐れがあります。
そんな状況を回避するために、本記事ではマーケティングがコスト削減の対象となってしまう原因と、その要因を解消するための解決策を説明します。
目次
なぜマーケティングがコストセンター扱いされるのか
マーケティングの重要性を問う声が多い一方で、経営が傾いた時に真っ先に削減されるのがマーケティング予算という事実もあります。
Aquimo の CEO である Mark Jeffery が執筆した『データドリブン・マーケティング』2)では、調査対象である企業の56%は上層部がマーケティングを「必要悪」だと考えていたことが説明されています。
この結果から、多くの経営層がマーケティングの戦略的競合優位性を理解していないことが分かります。価値を生み出す部門として認識してもらえていないため、予算削減の対象となってしまいます。
マーケティングの効果測定ができない3つの理由と解決策
経営層にマーケティングの効果を認識してもらうためには、数値化されたマーケティングの効果を共有することが重要です。ただし、以下の3つの理由で間違った効果測定を行なってしまう恐れがあります。
1. 経営に重要な指標をマーケティング担当者が測定できていない
経営層が知りたい情報は、あくまで「経営へのインパクト」です。
経営層からのこんな質問に数値を利用しながら論理的に回答できるマーケティング担当者はどれくらいいるのでしょうか。
「予算を10%増やしたらマーケティングは収益にどれだけ貢献できるの?」
自信を持って答えられるマーケティング担当者は少ないでしょう。それは、マーケティング担当者自身が収益への貢献度を表す指標を見ることができていないからです。『データドリブンマーケティング』2)で取り上げられている他の調査では、調査対象であるマーケティング担当者の47%が、ROI・NPV・CLTV をはじめとするマーケティングの財務指標に関する十分な実務知識を有していないことが分かっています。
事業全体の健全性を確保する責任がある経営層にとって、指標やデータが予算分配を最適化する際の判断材料となります。そのため収益への貢献度を数値で説明できなければ、経営層から評価を得ることはできません。
解決策:マーケティング重要指標を把握・測定する
測定した指標を闇雲に経営層に伝えても意味がありません。経営層が知りたい指標、そしてその指標を可視化するために追うべき指標を把握することが重要です。
例えば、マーケティングにおける重要指標として投資費用対効果を表す ROI が挙げられます。マーケティング ROIは収益にダイレクトに関連する重要な指標であるため、経営層にとって有益な情報です。
そして ROI を算出するためには
- リード獲得数
- 受注への CV 率
- 受注数
- 平均受注単価
- 収益
- 粗利益
- 粗利率
といった情報が必要になります。
ROI でマーケティングの成果や進捗を示せれば、経営層の関心は必然的に高まります。ROI が可視化されれば、目標設定や収益プランの作成も可能になるため、「予算が10%増えれば収益にどれだけ貢献できるのか」というはじめの質問にも答えられるようになるはずです。
『サブスクリプションビジネスに欠かせないKPI10選』をこちらに一覧でまとめています。事業における重要指標を確認したい方は、併せてご覧ください。
2. マーケティングの効果測定に必要なデータが適切に管理されていない
経営者へのレポートに必要な ROI などの重要指標を算出するためには、必要なデータが適切に管理されていなければなりません。
しかし、手動データ入力によるデータの抜け漏れや、初期データ変換のトラブルなどが原因で、不正確なデータが存在しているケースが多いです。日々データを入力・蓄積していく中で、扱うデータ量は増えていくばかり。最初は正確にデータを管理していても、時が経つにつれて無効なデータが増え、データ品質管理も手が回らなくなっていくことは想像に容易いはずです。
経営層はデータや情報に基づいて意思決定を行うため、データの品質に問題がある状態では信頼を獲得することができません。それどころか、正確性にかけた情報はデータドリブンな意思決定の障害となってしまいます。
解決策:データクレンジングを行う
データの正確性を担保するためには「データクレンジング」が有効です。データクレンジングとは、データベースから不正確なデータやエラーを発見し、正しいデータとなるように修正するプロセスです。
具体的な手順は、
- データの取得
- データセットの統合
- 不足しているデータの追加
- データの標準化・正規化
- データの検証
- データの出力
です。上記のステップを踏むことで、データの品質を保つことができます。
データの正確性は意思決定の質にダイレクトに影響するため、データクレンジングは経営層からの信頼を獲得するための有効な手段となるでしょう。何よりも1番のメリットとして、マーケティング担当者自身がデータからインサイトを抽出し、マーケティング活動における意思決定に役立てることができます。
データクレンジングを行うことのメリットや手順の概要をこちらの記事で詳しく解説しています。
3. マーケティングと営業で情報が分断されている
マーケティングが顧客の全体購買プロセスに影響する領域は広く、効果を正しく測定するためには、営業にリードを引き渡した後も顧客情報を確認する必要があります。
しかし、マーケティング部門と営業部門の連携が疎かである・部門ごとに異なるツールを利用していることが原因で、部門間で情報が分断されているケースが多いです。顧客情報が分断されていると、最終的に成約に結びついたリードの情報を取得できず、収益への貢献度を測定することができません。
マーケティング担当者が目標達成のために努力をしても、経営層の関心はあくまで収益への貢献度です。どれだけ優れたアイデアを考案しても、結果が出ていなければ意味がありません。効果測定に必要な情報を営業と共有し、マーケティングの効果を数値化することが重要です。
解決策:ツールを活用してマーケティングと営業で情報を共有する
マーケティング部門と営業部門間で顧客情報をリアルタイムに共有し、施策の効果を定点観測します。その1つの方法として、MA や CRM に代表されるツールの導入・連携が有効です。
一般的に MA はマーケティング部門で利用され、CRM は営業部門で利用されます。異なる部門で利用されることが多いため、ツールを連携させていないとマーケティングと営業の部門間で情報をリアルタイムに共有することはできません。
その問題を解決するのがネイティブ連携・API 連携です。複数のツールを簡単に連携することが可能で、分断されていた情報を統合し、リアルタイムに可視化します。CRM と簡単に連携できる MA ツールをこちらの記事でまとめています。
データが統合されるとマーケティングが顧客の購買プロセス全体に与える影響が明らかになり、セールスの目標や収益への貢献度が明示されます。経営層に加え、営業部門にもマーケティングの効果が分かりやすくなるため、マーケティングと営業の足並みが揃います。メンバーが部門を超えて共通の目標を追うようになれば、リアルタイムな施策の効果測定と予算配分の最適化が実現できるでしょう。
効果測定によってボトルネックを発見し、より効果が実証されている施策に予算を投資することができれば、期待していた以上の結果を残すことができるかもしれません。マーケティングと営業を連携させた体系的なアプローチを実現できた場合、マーケティングの収益が208%向上することが Wheelhouse Advisors の調査3)によって分かっています。
マーケティングを成功させるためには
マーケティング予算が削られてしまう理由と解決策を解説しました。マーケティングにおける競合他社との優位性を保つためには、施策の効果を定点観測し、積極的にデジタルと融合した新しいマーケティング手法に取り組むべきです。
しかし
「指標を可視化するためのプロセスを追うのが難しい」
「ツール活用に必要なスキル・ノウハウがない」
「セールスとの連携をどうやって促進すればいいのか分からない」
といった悩みを抱く方も多いのではないでしょうか。中途半端に新しい取り組みを試しても、「結果は出ないのに普段の業務に負荷はかかる」という状況に陥ってしまう恐れがあります。
その問題を解決する「Marketing Ops」という役割の存在が重要視されるようになりました。この組織は既存のマーケティング・営業チームには属さず、従来ではバラバラに行われていたチームマネジメントの役割を専門的に担います。具体的には、
- 業務プロセスの改善
- 事業の最終目標や指標の定点観測
- データ管理・分析
などに責任を持ちます。マーケティングの業務を簡素化し、マーケティングメンバーが本来の重要な業務や目標達成に集中することを支援します。
Marketing Ops が注目を浴びはじめた背景やその具体的な役割をより詳しく解説していますので、この機会に併せてご覧ください。
《引用文献》
1) Kristina Monllos. “‘Overhead’: Why marketing is still seen as a cost-center
“. DIGIDAY. 2019-08-01. https://digiday.com/marketing/marketing-equals-overhead-marketing-still-still-cost-center/,(参照 2019-08-19)
2) Mark Jeffery. 「データ・ドリブン・マーケティング―――最低限知っておくべき15の指標」. ダイヤモンド社. 2017.(参照 2019-08-19)
3) Wheelhouse Advisors. “How to Align Sales and Marketing to Boost Revenue by 208%”. Visualistan. 2015-03-20. https://www.visualistan.com/2015/03/how-to-align-sales-and-marketing-infographic.html,(参照 2019-08-19)
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