カスタマーサクセスが握るサブスクリプションの未来
SaaS をはじめとしたサブスクリプションモデルのビジネスが広まるに連れ、カスタマーサクセスの重要性が注目されるようになりました。
実際に Google トレンドを見てみると、2017年頃から急激に検索されるようになっています。
なぜ、サブスクリプションビジネスにおいて、カスタマーサクセスがここまで重要視されるようになったのでしょうか?成功事例と共に説明していきます。
目次
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサポートとカスタマーサクセスでは根本的に顧客のフォローに対しての考え方が異なります。カスタマーサポートは顧客に問題が発生したりクレームが寄せられた時に、それを解決するための役割になります。つまり、カスタマーサポートはネガティブなトリガーによってアクションが開始する、受動的なものだと言えるでしょう。
一方で、カスタマーサクセスの目的は文字通り、顧客を成功に導いていくことにあります。そのため、カスタマーサクセスのアクションは基本的にサービス提供側が発端となって能動的に行われます。製品導入フォローや、より効果的な活用方法等のお役立ち情報の提供を通じて、顧客がより成功体験を得られるように寄与します。
カスタマーサクセスはなぜ重要になったのか?
カスタマーサクセスが重要視されてきている背景には、顧客との関係が変化してきたことがあります。従来の買い切り型のビジネスでは顧客が製品を購入した時点で関係が終了していました。
しかし、サブスクリプションビジネスにおいては、むしろ顧客が製品を契約した時点から関係が始まると言えるでしょう。サブスクリプションビジネスのほとんどの収益は顧客との関係が始まった後から生まれます。したがって、契約が結ばれてから顧客と良好な関係を築き、ロイヤリティを高めることが収益を向上させるうえで必要不可欠であります。その役割を担うのがカスタマーサクセスなのです。
カスタマーサクセスの効果
カスタマーサクセスを導入すると企業の売上にどのようなインパクトを与えるのでしょうか?実際に見てみましょう。
カスタマーサクセスが継続率を上げる
上のグラフは、ビジネス別の顧客獲得コストを回収するプロセスをグラフに表したものです。買い切り型のビジネスモデルでは販売と同時にコストを回収することができます。一方で、サブスクリプションビジネスにおいては顧客獲得にかかったコストを回収する期間が長期化する傾向にあります。つまり、サブスクリプションモデルでは契約を獲得しても継続して使用してもらえなければ収益を生み出すことができないのです。カスタマーサクセスは顧客との関係強化に努めます。カスタマーサクセスを通じて顧客が製品を使いこなし、成功体験を得られれば必然的に継続率が上がります。
カスタマーサクセスでアップセルやクロスセルができるようになる
カスタマーサクセスでロイヤリティが高まった顧客はもっと上位の機能を使いたくなったり、その企業が提供する別の製品を契約しようという気運が高まります。サブスクリプションビジネスでは契約後であっても、より高価なプランにアップセルさせたり、関連したプロダクトに契約してもらうクロスセルで顧客単価をあげることができるのです。顧客単価を上げることができれば、顧客獲得コストの回収に必要な期間を短縮することができます。またそれだけでなく、顧客単価の上昇は収益を指数関数的に向上させます。
カスタマーサクセスで新規顧客を呼び込む
カスタマーサクセスの結果、ロイヤリティが高まった顧客は新規顧客を呼び込んでくれます。実際に BtoB 製品の購買プロセスの84%は口コミから始まるとされています。1)また、製品に対するロイヤリティが高い顧客が転職した場合、転職先で製品を導入する2nd Order Revenue が生まれます。ロイヤリティの高い顧客は自発的に製品を広めてくれるのです。ロイヤリティの高い顧客を多く抱えるということは、コストのかからない営業組織を持つことと同義であります。
カスタマーサクセス成功事例
カスタマーサクセスとして実際にどのような施策が行われているのでしょうか?各企業のカスタマーサクセス施策で、特に成功している事例を紹介します。
カスタマーサクセス成功事例1.「Amazonあんしんメール」
これは「顧客至上主義」を掲げる Amazon が配信したカスタマーサクセスメールです。1歳未満の乳児にはちみつを与えるとボツリヌス症を発症することから、一定期間内に乳幼児向け商品(おむつ、ミルク等)とハチミツを購入した顧客に注意喚起のメールを送信しました。このメールを受け取った顧客は事前に事故を防ぐことができ、またAmazon が顧客に寄り添っているという安心感を得るでしょう。
そして、その顧客のロイヤリティが高まるだけでなく、SNS で拡散されることでさらに多くの人に対してアマゾンのブランドを認知させることができます。実際に Twitter に投稿されたこのメールのスクリーンショットは約9000のリツイートと、13000件のいいねを獲得しロイヤリティの構築に成功しています。
カスタマーサクセス成功事例2.「Salesforece Success Comunity」
クラウドベースの業務支援ソフトを提供する Salesforce 社ではカスタマーサクセスの一環として独自のコミュニティを運営しています。コミュニティ内では「アンサー」「ヘルプ&トレーニング」「イベント」「イベントに参加する」といった項目が設けられており、顧客同士が成功のための知識を共有しあえるようになっています。
また、もう1つ特徴的なものとして「アイデアズ」とう項目があります。「アイデアズ」では Salesforce のユーザーの方が直接、「製品をもっとこうしてほしい」というアイデアを投稿できます。実際に顧客の改善要望に基づいて製品のアップデートが行われております。
顧客の声を汲み取り、彼らが求めている機能を実装していくことで、顧客を成功へと導いています。
まとめ
サブスクリプションビジネスにおいて顧客を成功に導くことは必須課題となっています。なぜならば、成功体験を通じて顧客のロイヤリティが高まれば、チャーンによる収益の減衰を防げるだけでなく、アップセルやクロスセル、そして新規顧客の呼び込みで事業を加速度的に成長させることができるからです。顧客の成功なくしてサブスクリプションビジネスの成功は成し得ないのです。
カスタマーサクセスを測るうえで特に重要な指標をこちらの記事で解説しています。この機会に是非併せてご覧ください。
《引用文献》
1)Laurense Minsky and Keith A. Qesenberry. “How B2B Sales Can Benefit from Social Selling”.Harvard Business Review. 2016-11-08.
https://hbr.org/2016/11/84-of-b2b-sales-start-with-a-referral-not-a-salesperson, (参照 2018-12-17)
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