営業とマーケティングで相乗効果を上げるには?【ウェビナーレポート】
- 営業部門とマーケティング部門の連携がうまくいかない理由として「相互の理解不足」「目的がそろっていない」ことが挙げられる
- The Model の難しいポイントとして「CROを担える人材の不足」「KPIの共有の不足」「データ連携がない」ことが挙げられる
- LTVを高めるためにマーケティングや営業といった部門間の連携や、データ設計・共有の枠組みを構築することが不可欠
- 体制の構築は、顧客のニーズや行動を可視化することに役立つ
Magic Moment では『マーケと営業で相乗効果を上げる新規開拓』のウェビナーを開催しました。
近年 The Model と言われるような、分業制を取り入れる企業が増えてきています。これまでの日本企業では一般的に、1人の営業担当者がアポイントの獲得から受注までのプロセスを担ってきました。
ところが最近は、営業とマーケティング、インサイドセールスが役割を分担する企業も増えてきています。ただ、営業プロセスの分業が進むにつれ、マーケティング部門と営業部門がうまく連携できていない現状も浮き彫りになっています。
本記事では、マーケティング部門と営業部門が連携し、相乗効果で売上を拡大していく方法に関して、ウェビナー内容の一部を紹介いたします。
Magic Moment では、お客さまの生産性向上を後押しする AI を統合したアドオン機能である 「Playbook Copilot」の提供しています。Copilot の具体的な機能や生み出す効果については、プロダクトサイト にてご覧いただけます。
目次
マーケティングと営業の連携
マーケティングと営業の間でよく起こる対立
The Model に代表される営業改革について考える前に、日本企業の現状を分析しておきます。一般的な日本企業においては、営業部門はどこの企業にも昔からあります。他方でマーケティング部門は、近年新設されたか、古くからあった市場調査部門などが改組されてマーケティング部門として発足したかのどちらかです。
マーケティング部門は、広告宣伝やメール、オウンドメディア、展示会、セミナーなどあらゆるチャネルから顧客データや見込み客情報を収集します。そのうえで得られた情報を営業部門に活用してもらおうと、データを分析したり、情報共有をしたりしています。
マーケティング部門目線で見ると、共有された見込み客リストに対して、どれだけ営業部門がアプローチをかけたかという網羅率に目が向きがちです。
その為、マーケティング部門からは、営業の動きが鈍く、共有されたデータを営業が有効に活用していないと映る場合もあります。見込み客リストに対する営業の網羅率が、マーケティング部門が期待する比率を下回るケースが典型的です。
しかし営業には営業の論理や言い分があります。マーケティングやインサイドセールスから上がってくるリード案件にあたるよりは、営業担当はマーケティングから渡されたリードの質に不満を持っており、これまでの自分のつながりや、取引先などからの紹介にセールスをかける方が成約率が高いと考えることがあります。
こうした状況に対し、マーケティング担当も「営業は仕事をしてない、営業はマーケティングのことを理解していない」と不満を募らせます。お互いが直接対立している訳ではありませんが、相互に不信感を抱くいわば「冷戦状態」です。
なぜ連携が上手くいかないのか
マーケティングと営業で溝ができて連携がうまくいかないことには、次の理由が考えられます。
相互の理解不足
マーケティングは営業に対して、自分たちが渡したリードに対してアクションを起こすのは当然だと考えています。マーケティングは顧客と接する機会が営業に比べて圧倒的に少なく、「何件のリードに対して何件の営業をかけたのか」といったように、定量的に判断する傾向があります。
また、マーケティングは顧客の属性や検討段階に応じて、営業のかけ方を変えて欲しいと思っています。例えば、製品やサービスの契約を考えていない見込み客に対しては、顧客の抱える悩みを聞くといった課題ソリューション営業してほしいと考えます。
営業サイドから見れば、製品やサービスの購入を検討していない見込み客にアプローチするのは効率が悪いと考えます。このため、「すぐに商談が成立しそうなリードを持ってきて欲しい」「質の悪いリードはいらない」ということになります。
営業とマーケティングの間にある溝は、お互いの状況を十分に理解していないために生じているのです。
目的が揃っていない
マーケティングと営業双方の理解不足に加え、カスタマーサクセスを含め、各部門が 異なる KPI を追い求めてしまうという問題もあります。例えばマーケティングは獲得しやすいリードを集め、営業は声をかけやすい顧客にアプローチするといったように、方向性がバラバラになることを指します。
こうした認識のズレを解消するためには、顧客目線に立って最終的なゴールを全社で共有し、各部署で施策を実行していくことが求められます。
The Model の難しさとは
The Model とは
営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4つに分ける、The Model という考え方が、マーケティングの世界で注目されています。
The Model はもともと、米国のセールスフォースドットコム社が提唱した概念です。国土が広く、対面での営業が難しいアメリカで発展してきた、分業型営業プロセスのモデルの一つです。日本においては、セールスフォースドットコム日本法人元執行役員の福田康隆氏による著書「The Model」で、広く知られるようになりました。
The Model についてはこちらの記事でも詳しく説明しております。
The Model は、現在では、サブスクリプションなどの SaaS 事業を展開する企業で多く取り入れられている営業プロセスの手法です。
これまでの営業組織は、アポ取りや商談・受注などの営業プロセスをそれぞれの担当者が、自己完結型で担っていました。特にマーケティングから得られたリード情報を、営業に活用することができていませんでした。
また、営業プロセスは1人の担当者がアポ獲得から受注までのプロセスを担うため、どの段階に問題点があるのかを把握することが、難しい側面もあります。
こうした問題を解決する考え方として、営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4つに分けたうえで、各フェーズの情報を連携させる The Model が生まれたのです。
The Model の導入により役割分担が明確になり、分業による業務効率が向上し、購買プロセスの KPI 管理が可能になります。
The Model の難しいポイント
The Model の導入効果が分かったところで、実際に企業で実践していくには、以下に挙げるような難しさもあります。
CRO の不在
日本企業では2010年代から The Model を導入してきた企業もありますが、CRO (Chief Revenue Officer)を担える人材がいないということです。
CRO は、事業の収益について全責任を負うポジションです。マーケティングや営業などの各部門に横串をさして、収益を最大化する役割を担います。
日本企業では一般的に、売り上げを立てる営業の発言力が強く、新しい部門であるマーケティングの意見をすんなりとは受け入れる土壌がありません。
また、CRO には営業に対する理解も必要なことから、営業とマーケティングの両方を経験した人材がいないとうまく施策が回せません。
日本企業では、マーケティング、インサイド、営業と異なったスキルを身につけている人材が少ないため、各部署の部長などのトップが連携して CRO を担う人材を育成する必要があります。
KPI、案件定義の共有・共通化
営業プロセスに関わる各部門間で KPI や、商談などに関する要件定義ができていないと、The Model がうまく機能しません。
「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」がそれぞれ、異なる KPI や要件定義をしていれば、全体として進むべき方向性が定まらないからです。
データの連携ができない
KPI や案件定義ができていても、それらをツールに落とし込める人材が社内にいなかったり、スキルが不足していたりします。
また、部署ごとの断絶があるために、データの連係がスムーズにいかないというケースが、特に歴史のある大企業でよく見られます。
The Model を効果的に運用をするためには自社のオペレーションに主眼を置くのではなく、顧客起点のアプローチに変えることが必要です。
そのためには、まず顧客のすべての行動履歴を把握することから始め、顧客を知ることが第一です。次に顧客の興味や、顧客が置かれた状況を理解する必要があります。例えば顧客が単に調査をしている段階で、営業が自社製品やサービスをすすめても、成約する確率は低いでしょう。
反対に、顧客が購入先を自社のサービスを含めて数社に絞り込んでいる場合は、いち早く営業担当者が、直接顧客に自社の優位性を説明すべきです。
こうして顧客体験と販売プロセスのギャップを埋めていくことにより、The Model が効果を発揮します。
The Model 導入企業が直面するその他の大きな課題についてはこちらでも紹介しておりますので、ぜひご覧ください
量と質の観点から考える連携
質だけを求めることによる問題点
営業部門は、成約に結びつきやすい質の良いリードを求めるため、見込み顧客へのコンタクト数よりも、効率性を重視する傾向にあります。ただし、リードの質がいくら良くても、営業の活動量全体が落ちれば、結果的に売り上げは下がります。質だけを追い求めることには、明らかに問題があります。
営業サイドからすると、限られた時間の中で見込み顧客にコンタクトするには、優先順位をつけていわゆる”ホット”な案件から当たりたいものです。ただし、リードの中ですぐに成約にしそうな案件は限られています。
ニーズは顕在化しているものの、具体的なサービス選定にまでは至っていないような潜在顧客に対しても、アプローチすることは必要です。インサイドセールスから上がってきたリード案件に対して、できるだけ幅広くアプローチすることが求められます。
例えば、営業が「すぐには商談に至らないだろう」と判断してコンタクトしなかった顧客が、競合他社と契約してしまう例はあります。これを機会損失といいますが、まさに営業プロセスにおいて質だけを追い求める弊害として、機会損失が発生します。
また、調査段階にある顧客にサービス導入の意向がないとしても、営業担当者からヒアリングを受ける中でニーズが顕在化し、あなたの会社のサービスに興味を示すことはあり得ます。営業の活動量を増やしつつ、顧客目線の営業スタイルに変えていくことは可能です。
量だけを求めることによる問題点
有効商談率の減少
今度は逆に、営業が量だけを求めることによる問題点について説明します。
まず、自社のオウンドメディアの記事を読んでもらったり、資料をダウンロードしてくれたりした顧客の中には、単なる情報収集目的の人もいます。また、製品やサービスの導入に全く関与しない一般社員の場合、インサイドセールスがコンタクトできたとしても、成約に繋がる確率は低いでしょう。
情報収集目的の質の低いリードに対し、営業がむやみにアプローチすることは非効率です。
次に、営業のアプローチ件数の目標を機械的に決めると、件数だけを追い求めがちになります。さらに人の行動量には、就業時間などの物理的な制約があります。自動化ツールなどのシステムの力を借りずに、人力だけで営業活動の目標量だけを増やすことは、営業担当者の疲弊にもつながります。
マーケティング活動でも、目標量だけに目を向けると、今まで登録者に週1回送っていたメールマガジンを週5回に増やすようなことが起きます。顧客目線で見れば、メールマガジンが毎日送られてくることは、必ずしも嬉しくはないでしょう。
マーケティング施策でいえば、広告やメール、オウンドメディアからの資料ダウンロード、展示会など、流入チャネルごとにリードの質が異なり、商材ごとによっても受注のしやすさは変わってきます。
マーケティングで単に量だけを追い求めると、広告の掲載数やメール・記事の配信数を機械的に増やすといったように、ユーザーの反響を無視した画一的な手法に陥る危険性もあります。
営業は売り上げの立てやすい顧客にアプローチしようとし、マーケティングは機会損失を少なくするため、営業の活動量を増やそうと考えます。こうした事情をふまえたうえで、質と量のバランスをとっていくことが必要です。
まとめ
The Model 型の営業プロセスの本質は、顧客のおかれた状態や行動によりそった営業活動を実現し、LTV を高めることにあります。
そのためにはマーケティングや営業といった部門間の連携や、データ設計・共有の枠組みを構築することが不可欠です。
こうした体制の構築は、顧客のニーズや行動を可視化することに役立ちます。
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